会計入門 未払金と経過勘定

山積みの硬貨

記事最終更新日:2020年3月4日
記事公開日:2012年4月28日

前回、「会計入門会計入門その13~負債の区分 支払手形と買掛金、短期借入金」では、負債の区分や流動負債の科目のうち、支払手形、買掛金、短期借入金について説明しました。

今回は未払金と経過勘定について説明します。

特に、経過勘定の一つである未払費用について、未払金との違いに言及しながら例を使って解説していきます。

未払金

未払金(みばらいきん)は、流動資産である未収入金と対をなす流動負債の表示科目です。

すなわち、モノの購入や、サービスの提供は受けたにも関わらず、後でお金を支払う場合に使用する科目です。

代表的な取引としては、固定資産、例えば土地や車、有価証券などの購入があります。

同じくモノやサービスを購入した時に使用する科目として支払手形や買掛金がありますが、その違いも未収入金と受取手形・売掛金との違いと同様です。

会社の営業取引である場合には支払手形や買掛金を使用し、営業取引以外であれば未払金を使用します。

経過勘定

経過勘定(けいかかんじょう)については、これまでに前払費用の回にて説明しました。

今回は経過勘定のうち、未払費用について説明します。

未払費用

未払費用も前払費用と同様、「企業会計原則(きぎょうかいけいげんそく)」に、次の定義が記載されています。

「未払費用とは、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、すでに提供を受けた役務に対していまだその対価の支払いが終わらないものをいう。」

前払費用では代表的な取引が少ないのですが、未払費用にはどの会社でもよく使われる代表的な取引が多いです。

サービス提供を受けたにも関わらず、未払いである取引に使用します。代表的な取引は次の通りです。

  • ・水道・電気・ガスなどの公共サービスの利用
  • ・労働の対価としての給与や法定福利費(社会保険料)
  • ・借入利息の発生

後払いする取引に使用されます。

これらの取引について上の定義にあてはめて説明します。

「一定の契約に従い」⇒会社が上記のサービスを受ける代わりにお金を支払うという約束(契約)を交わします。

給与ならば雇用契約が該当します。雇用契約を締結した結果、社会保険料を会社が約半分、負担することになり、法定福利費が発生します。

「継続して役務の提供を受ける場合」⇒モノの購入やサービスの提供を継続的に受けます(1回限りではない)。

継続した取引であるため、月毎とか2ヶ月毎とか区切りのいい時に、それまでに購入・提供を受けたモノ・サービスについて請求書が届きます。

「すでに提供を受けた役務に対していまだその対価の支払いが終わらないもの」⇒後払いということです。

未払金と未払費用との違い

未払費用と同様、未払金も営業取引以外の取引で、かつ後払いの時に使用する科目です。

未払金と未払費用の違いのポイントは次の3点です。

1.継続した取引かどうか

一時的な取引の場合⇒未払金
継続して役務の提供を受ける場合⇒未払費用

2.債務として確定しているかどうか

債務として確定している場合⇒未払金
債務として確定していない場合⇒未払費用

ここでの、「債務として確定している」とは、契約などに金額やサービス提供期間、支払期日が記載している場合や、モノの受け渡しやサービス享受は完了し、請求書が届いた場合など、金額とサービス提供期間(またはモノの引き渡し)、支払期日が確定していることをいいます。

3.支払期限が到来しているかどうか

すでに支払い期限が到来しているにも関わらず、支払っていない場合⇒未払金
支払期限が到来していない場合⇒未払費用

この3つのポイントから、どちらの科目で処理した方がいいのか検討します。いくつか例を使って解説します。

ケース1:水道光熱費、通信費といった経費について3月にサービスを受けた場合(4月末支払の請求書が届いている)

  • 1.継続して役務の提供を受ける取引のため未払費用
  • 2.サービスを受け、請求書も届いている。従って債務は確定しているので、未払金
  • 3.4月末日までは支払期限が到来していないので未払費用、5月1日以降、いまだ支払っていない場合には未払金

となります。

以上から、未払費用でも未払金でもどちらも考えられる取引です。

実務上はどうかというと、私の経験では未払費用で処理している会社が多いです(従って、未払費用の例として上述に説明しています)。

5月1日以降の場合でも、未払費用のままにしている会社も少なくありません(金額が大きな場合には未払金で処理するなど金額にもよります)。

ケース2 末日締め、翌月10日払いの給与(3月末日時点で考えた場合)

  • 1.継続して労働という役務の提供を受けるので未払費用
  • 2.労働契約に基づき、3月末日まで働いた。従って債務は確定しているので、未払金
  • 3.3月末日では支払期限は到来していないので未払費用(支払期限は4月10日)

未払費用でも未払金でもどちらも考えられそうですが、私の経験では未払費用として処理しているケースが多いです。

4月10日に支払っていない場合には、給与の未払いという特別な事象が発生したことに鑑みて、未払金に振り替えて処理している会社もあります。

ケース3 PCや事務用品の購入

例えば、〇〇ネットやアス〇〇といった会社を利用する場合には、初めに法人契約(登録)をして、その後、継続してその会社から購入します。

そこで、1.に照らして未払費用で処理し、一方で、事務用品やPCが必要になった都度、購入する場合だと未払金で処理する、と考えることができます。

ただし、このケースでも未払費用、未払金でも、どちらも考えられる取引ですので、会社によって使用する科目は異なります。

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著者情報

須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。1人で「PDCA会計」を企画・開発・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

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