会計入門 負債の区分 支払手形と買掛金、短期借入金
記事最終更新日:2020年3月4日
記事公開日:2012年4月27日
前回、「会計入門その12~貸倒引当金」までで資産科目は一通り解説することができました。
今回から負債について説明していきます。
最初に負債の定義と区分を解説します。
流動負債の解説に進み、代表的な表示科目について解説していきます。
負債の定義と区分
これまでの解説では負債を次の通り説明しました。
負債(ふさい):将来、支払いとして出金がありそうなお金や提供するサービス(義務)がどれだけあるのか。
資産とは反対の定義になります。
次に区分についてですが、資産の解説では、資産を「流動資産(りゅうどうしさん)」と「固定資産(こていしさん)」に区分すると解説しました。
負債についても、同様に流動負債と固定負債とに区分します。
区分の基準ですが、流動資産と固定資産との区分は、正常営業循環基準と一年基準という2つの判定基準によって流動資産か固定資産かの判定を行いました。
負債でも同様に、正常営業循環基準と一年基準で流動負債か固定負債かを判定します。
正常営業循環基準(せいじょうえいぎょうじゅんかんきじゅん):会社の主目的たる営業取引によって発生する科目かどうか。
一年基準(いちねんきじゅん):貸借対照表日の翌日から数えて1年以内に支払の返済期限が到来するかどうか。
正常営業循環基準の説明にある、「営業取引」とは、会社の主たる事業、例えば、ズボンを製造して販売する会社であれば、ズボンの製造や販売に関連する取引をいいます。
次に一年基準ですが、例えば、2019年12月31日時点の貸借対照表であれば、貸借対照表日(2019年12月31日)の翌日(2020年1月1日)から数えて1年以内、すなわち、2020年12月31日までに返済期限が到来する場合には流動負債、2021年1月1日以降であれば固定負債の区分に表示します。
流動負債なのか、それとも固定負債なのか、という区分を判断する場合には、まずは正常営業循環基準で判断します。この結果、Yesであれば、その取引(科目)は流動負債に該当します。
次に1年基準で判断し、Yesであれば、同様に流動負債となります。
従って、どちらの基準にも該当しない場合に固定負債に区分される、ということです。
流動負債の科目
代表的な流動負債の科目として、支払手形と買掛金、および短期借入金について解説します。
支払手形と買掛金
支払手形(しはらいてがた)は、受取手形の、買掛金(かいかけきん)は売掛金と対になる負債科目です。
すなわち、受取手形と売掛金は会社の営業取引としてモノやサービスを販売した時に計上する科目でしたが、支払手形と買掛金は会社の営業取引でモノやサービスを購入または提供してもらった場合に計上する科目です。
支払手形と買掛金は、正常営業循環基準で判定した結果、流動負債となります。
例えば、ズボンを製造して販売している会社であれば、ズボンを作る材料となる生地や糸を購入する場合に、現金で購入するのではなく手形を発行したり、購入先との契約で数ヵ月後に支払うという約束を取り交わした場合に、支払手形や買掛金を計上します。
従って、営業取引によって発生する科目であるため、正常営業循環基準から流動負債と判定されることになります。
短期借入金
短期借入金(たんきかりいれきん)とは、借入れ、すなわち銀行などの金融機関やその他の機関から資金を調達した場合に使用する科目です。
借入れのうち、返済期限が1年以内に到来する場合に短期借入金を使用します。
1年を超えて返済期限が到来する場合には「長期借入金」という科目を使用します。
例えば、金融機関から1千万円を借入れた場合、毎年2百万円を返済し、5年で全て返済するような契約を締結したとします。
借入れを行った決算期に貸借対照表を作成したとすると、1年以内に返済が到来する2百万円を短期借入金に表示させ、残りの8百万円は1年を超えて返済期限が到来するため、固定負債に「長期借入金」として表示します。
従って、単位が千円の貸借対照表には「短期借入金 2,000」「長期借入金 8,000」と表示します。
借入金は財務活動で使用する科目であるため、営業取引ではありません。
従って正常営業循環基準で判定すれば、流動負債には該当しません。
次に一年基準で判定しますと、返済期限が1年以内かどうかで流動負債と固定負債を区分します。
従って、上の例ではこのような科目と金額の表示になります。
【補足】今回のケースのように一つの契約で流動負債と固定負債とに金額を分けて計上するような場合、流動負債の科目として、短期借入金の代わりに「1年以内に返済予定の長期借入金」といった科目を使用している会社もあります。