会計入門 未払法人税等と預り金
記事最終更新日:2020年3月4日
記事公開日:2012年4月30日
前回、「会計入門その14~未払金と経過勘定」では、流動負債のうち、未払金と未払費用(経過勘定)について説明しました。
今回は未払法人税等と預り金について説明します。
預り金については、社会保険料についても併せて解説していきます。
未払法人税等
未払法人税等(みばらいほうじんぜいとう)とは、未だ納付していない法人税等をいいます。
税金の種類と科目の関係
会社が納める税金をまとめてみました。次の表をご覧下さい。
他にも印紙税や登録免許税など、様々な税金が存在します。
上記税金のうち、法人税、事業税、住民税(会社)は、未だ払っていないものを未払法人税等で処理します。
消費税と固定資産税は未払金で処理します(未払消費税などの科目で処理している会社もあります)。
従業員が負担する源泉所得税と住民税(従業員)は預り金で処理します(後ほど解説します)。
【補足】補助科目の利用
複数の税金を未払金など、まとめて1つの科目で処理すると、後々支払う時にどの税金を払っていないのか分からなくなってしまいます。
そこで会社の経理では科目の1つ下の層で「補助科目」というものを〇〇奉行や〇〇会計といった会計ソフトに設定して項目別に把握するようにします。
今回の例では例えば、「法人税」「事業税」「住民税」といったように補助科目を設定します。
そうすれば、例えば、貸借対照表上では100の未払法人税等として一括して計上しますが、会計システムを見れば、例えば法人税70、事業税20、住民税10といったように税金ごとの内訳が分かるので便利です。
補助科目は他の科目でも使用します。例えば、売掛金であれば得意先を、買掛金や未払金、未払費用であれば支払先を補助科目に設定します。
会社規模が大きくなるにつれ、会計システムではなく販売管理システムや仕入在庫管理システムで取引先との取引を管理する傾向が高くなります。
預り金
預り金(あずかりきん)とは他の会社や個人などから預っているお金をいいます。
預っているお金ということは、会社のお金ではないため将来、会社から出て行くお金、ということです。
これまでに負債を次の通り、説明してきました。
・負債:将来、支払いとして出金がありそうなお金や提供するモノやサービスがどれだけあるのか。
将来に出金するお金であることから、預り金は負債になります。
未払法人税等の説明の中で、源泉所得税と住民税(従業員)は預り金で処理する、と説明したのは会社のお金ではなく、従業員から預っているお金だからということです。
社会保険料について
その他、預り金で処理する科目としては社会保険料(しゃかいほけんりょう)があります。
社会保険料も種類が多く、健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険などがあります。
社会保険料は従業員が負担しますが、実は会社が半額程、負担してくれます。
従って、毎月の給与明細から控除されている社会保険料は全額の50%程にすぎません。
会社が負担する部分は従業員から預っていないため、前回解説した未払費用で処理します。
まとめますと、社会保険料については、「会社負担分=未払費用、従業員負担分=預り金」となります。
未払費用と預り金の計上額(社会保険料)
当月分の給与に対する社会保険料(雇用保険を除く)は、翌月末に納付します(例えば、3月分の給与に関する社会保険料は4月末に納付)。
従って、会社負担分の社会保険料は、1ヶ月分、後払いとなるため、未払費用を計上します。
従業員負担分は当月分の給与ではなく、翌月分の給与から差し引いて、会社が預かり、その月の末日までに納付します。
以上から、社会保険料の当月の残高について、次の傾向が分かります。
- 社会保険料の預り金::月末時点では残高がゼロとなる。
- 社会保険料の未払費用:月末時点の残高は1カ月分。
- ※給与締め日と支払が上記説明と異なる場合には、この残高にはなりません。
- ※雇用保険は他の社会保険料と異なる納付スケジュールです。その他、例外的な取引も存在するため「全体的な傾向」を説明しています。
- ※月末が休日の場合には、社会保険料の預り金は、翌月の1日や2日など平日に支払うため1か月分の残高になります。
預り金の計上額(源泉所得税と住民税)
源泉所得税と住民税は翌月の10日に納付します。
月末には、従業員から預っている源泉所得税と住民税1ヶ月分が計上されていることになります(例えば10月末であれば、11月10日に支払う分が預り金の残高になる)。
社会保険料と異なり、従業員が負担する分は全て従業員が負担します。
上の税金の表にて、住民税(会社)とあるのは従業員が負担する分を会社が負担しているわけではなく、会社自体が負担する住民税を指します。
税金や社会保険料は種類が多く、従業員負担と会社負担が存在するなど、分かりにくい論点です。少しずつ理解して分からなくなったら再度調べる、を繰り返して反復して定着させていきましょう。