会計入門 特別損益と当期純利益その他
記事最終更新日:2020年3月7日
記事公開日:2012年5月30日
前回、「会計入門その27~営業外収益・費用と経常利益」では、営業外収益・費用と経常利益について説明しました。
今回は、特別損益や当期純利益等について説明します。
特別損益とは
特別損益(とくべつそんえき)とは、特別利益(とくべつりえき)と特別損失(とくべつそんしつ)を総称した言葉です。
利益や損失という言葉が付いていますが、特別利益は収益の区分、特別損失は費用の区分です。
利益(損失)の区分ではありません。
特別利益も特別損失も、経常利益の次に表示されます(最初に特別利益、その次に特別損失を表示)。
特別損益の性質
経常利益は、「通常」の会社の活動の成果を表すということを前回説明しました。
それに対して特別利益や特別損失は、その名称の通り、「特別」、つまり会社の通常の活動ではない取引を扱う区分です。
特別損益に含まれる科目
特別損益に含まれる科目としては次の科目があります。
- 特別利益:固定資産売却益、その他
- 特別損失:固定資産売却損、災害損失、減損損失、その他
減損損失(げんそんそんしつ)については、これまでの回で解説しました。
災害損失(さいがいそんしつ)は名称の通り、災害があった場合に発生した損失です。
「その他」の代表的な取引には、有価証券の売却損益や貸倒引当金戻入(かしだおれひきあてきんもどしいれ)があります。
しかし、必ずしも特別損益に計上するわけではなく、下記の特別損益の判断基準に当てはめて考えます。
特別損益の判断
特別損益の科目としては上記のようなものがあります。しかし、特別損益の区分は「特別」であり、会社特有の様々な「特別」なケースがあるため、上記科目には当てはまらない場合もあります。
従って、特別損益の区分とするのか、経常損益より上の区分(営業外収益・費用や販管費等)にするのか、判断するための基準が次の2点です。
- ・臨時(りんじ)かどうか
- ・巨額(きょがく)かどうか
この2点を満たした場合には特別損益の区分、そうでなければ経常損益より上の区分で表示します。
資産の評価損について
これまでの回にて資産科目の決算時の評価について説明しました。
減損会計や時価主義による検討の結果、評価損が生じた場合には、損益計算書上の決められた区分にて評価損を計上する必要があります。
特別損失に関連した取引について具体的に説明すると次の通りです。
1.受取手形や売掛金、貸付金等(金銭債権)
将来、得意先や貸付先の倒産等により債権を回収できないと予想される場合には貸倒引当金を計上。
決算時に貸倒引当金を見積った結果、前期に計上した貸倒引当金よりも金額が増加する場合にはその増加分だけ「貸倒引当金繰り入れ(繰入額)」として販管費(受取手形や売掛金)又は営業外費用(貸付金)に計上する(臨時・巨額の場合は特別損失)。
2.棚卸資産
棚卸資産に係る会計基準を適用し検討した結果、評価損を計上する場合には、棚卸資産評価損等、適当な科目により、売上原価・製造原価として計上する(臨時・巨額の場合は特別損失)。
3.固定資産
減損損失に係る会計基準を適用し検討した結果、評価損を計上する場合には、「減損損失」として特別損失に計上する。
4.投資有価証券・子会社株式
投資有価証券や子会社株式について時価を検討した結果、評価損を計上する場合には、「投資有価証券評価損」「子会社株式評価損」として特別損失に計上する。
評価損の計上に関する問題
これらの評価損は金額が非常に大きくなる場合もあり、その結果、経常利益の区分ではプラスであったにも関わらず、最終利益(当期純利益)の区分ではマイナス(つまり当期純損失)となってしまうケースがみられます。
従って会社側の判断により、評価損を計上しないケースも存在します。
また、本来は売上原価、販管費、営業外費用の区分で計上すべき金額を特別損失で計上しようとするケースもあります(そうすれば売上総利益、営業利益、経常利益では数字が良くなるため)。
このように資産の評価損については、計上するかしないか、どの区分で計上するのか、といった点で、会社側と監査法人側とで議論になりやすい論点と言えます。
将来、経理や会計分野で活躍したいとお考えの方はこの点を覚えておくと後々役に立つかもしれません。
当期純利益
特別損益の区分の下に「税引前当期純利益(ぜいびきまえとうきじゅんりえき)」を表示します。
マイナスの場合は「税引前当期純損失(ぜいびきまえとうきじゅんそんしつ)」です。
計算式は次の通りです。
税引前当期純利益=経常利益+特別利益-特別損失
次に「法人税、住民税及び事業税」を表示させ、最後に「当期純利益(とうきじゅんりえき)」を表示させます。
マイナスの場合は「当期純損失(とうきじゅんそんしつ)」です。
まとめると次の通りです。
当期純利益=税引前当期純利益-法人税、住民税及び事業税
【補足】その他の科目として、「法人税等調整額(ほうじんぜいとうちょうせいがく)」や連結決算に関する科目があります。
当期純利益から分かること
経常利益は「会社の通常の活動から得られた成果」を表す、とこれまでに説明しました。
当期純利益は経常利益に特別損益項目や税金も含めた金額です。
従って、当期純利益は「その決算期における会社の全ての活動の成果」を表すと言えます。
損益計算書上の指標としては営業利益や経常利益が重要視されますが、最終利益である当期純利益に基づいて株主へ配当し、当期純利益の金額が、貸借対照表上の「繰越利益剰余金」が増減する元になるため、当期純利益ももちろん重要な数字です。
日本の会計基準として古くから存在し現在も実務においてお世話になる会計基準。「真実性の原則」「実現主義」「取得原価主義」など、会計学を学ぶならば欠かせません。試験勉強でも各会計基準を学ぶ前の「土台」としての役割を担う論点のため、専門スクールのテキストでも最初に解説されています。