約定日基準・修正受渡日基準とは|仕訳を解説(上級論点)
記事公開日:2023年12月22日
※本記事は、2023年12月22日現在に公表・適用されている会計基準等に基づいています。
※対象:上級者・実務家
有価証券の売買時の会計処理には、原則的な方法である「約定日基準」と継続適用を条件に容認される「修正受渡日基準」とがあります。
本記事では、「約定日基準」及び「修正受渡日基準」の仕訳方法を解説します。
仕訳例
<仕訳例>
・甲社は乙社から有価証券の売買契約を締結した。
<取引例>
- ・甲社(買手)と乙社(売手)との間で有価証券の売買契約を締結した。
- ・約定日:x1年3月30日
- ・受渡日:x1年4月2日
- ・売買価格:100
- ・決算日(x1年3月31日)時価:105
- ・甲社は売買目的で取得
- ・乙社は当該有価証券を「その他有価証券」として保有(帳簿価額90)
「約定日基準」の仕訳
<買手>
取引日 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
3月30日 | 売買目的有価証券 | 100 | 未払金 | 100 |
3月31日 | 売買目的有価証券 | 5 | 有価証券評価益 | 5 |
4月1日 | 有価証券評価益 | 5 | 売買目的有価証券 | 5 |
4月2日 | 未払金 | 100 | 現金預金 | 100 |
<売手>
取引日 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
3月30日 | 未収入金 | 100 | その他有価証券 | 90 |
投資有価証券売却益 | 10 | |||
4月2日 | 現金預金 | 100 | 未収入金 | 100 |
「修正受渡日基準」の仕訳
<買手>
取引日 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
3月30日 | 仕訳なし | |||
3月31日 | 売買目的有価証券 | 10 | 有価証券評価益 | 10 |
4月1日 | 有価証券評価益 | 10 | 売買目的有価証券 | 10 |
4月2日 | 売買目的有価証券 | 100 | 現金預金 | 100 |
<売手>
取引日 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 | |
---|---|---|---|---|---|
3月30日 | 仕訳なし | ||||
3月31日 | その他有価証券 | 10 | 投資有価証券売却益 | 10 | |
4月2日 | 現金預金 | 100 | その他有価証券 | 100 |
「約定日基準」とは
「約定日基準」とは、有価証券の約定日(売買が成立した日)に、有価証券の売買に関する会計処理を行う方法をいいます。有価証券の売買契約の認識に関する原則的な方法です。
「約定日基準」によれば、約定日に、買手は「有価証券の発生」を認識し、売手は「有価証券の消滅」の認識を行います。
つまり、「約定日基準」は、一般的な有価証券の売買に関する仕訳といえます。
「修正受渡日基準」とは
「修正受渡日基準」とは、有価証券の売買の認識は受渡日(売買代金の決済日)に行い、約定日から受渡日までの期間においては、「売買目的有価証券」「満期保有目的債券」といった保有目的区分ごとに、買手は「約定日から受渡日までの時価の変動」のみを認識し、また、売手は「売却損益」のみを約定日(決算日)に認識する会計処理をいいます。
原則的な会計処理である「約定日基準」に対して、継続適用を条件「修正受渡日基準」も採用が認められます。
売手の仕訳の場合、約定日(又は決算日)に売却損益を計上する点に特徴があります。上記の取引例では、売手は決算日に「投資有価証券売却益 10」を計上し、「その他有価証券評価差額金」の計上は行いません。
<補足>「修正受渡日基準」の実務上の仕訳処理
- ・有価証券の売買取引のうち、決算日をまたいで約定日と受渡日とが存在する取引のみ、上記の「修正受渡日基準」の方法で仕訳し、その他の取引(約定日と受渡日の間に決算日を挟まない場合)については、受渡日に有価証券の一般的な売買に関する仕訳(つまり売手の売却損益も含む仕訳)を記帳すれば足ります。
会計処理適用上の留意点
「約定日基準」及び「修正受渡日基準」は、「約定日から受渡日までの期間が市場の規則又は慣行に従った通常の期間である場合」を前提として採用できます。
「約定日から受渡日までの期間」が通常の期間よりも長い場合には、「約定日基準」又は「修正受渡日基準」ではなく、「先渡契約」として、約定日から受渡日までの売買対象となる有価証券の時価の変動を「デリバティブ取引」として、その期の損益として会計処理します。
会計基準等
※2023年12月22日現在。リンク先の会計基準等は最新版でない場合があります。
・金融商品に関する会計基準(企業会計基準第10号)
・金融商品会計に関する実務指針(日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第14号)
・金融商品会計に関するQ&A(日本公認会計士協会)