勤務費用とは|計算方法と仕訳をわかりやすく解説(上級)
執筆日:2024年2月27日
※本記事は、2024年2月27日現在に公表・適用されている会計基準等に基づいています。
※対象:上級者・実務家
「勤務費用」は「退職給付費用」の計算要素の1つですが、資格試験では所与として問題に登場することが多いため、計算方法を知らない人も多いと思います。
本記事では、「勤務費用」について計算方法や仕訳を中心に問題例を設定して具体的に分かりやすく解説します。
<略称と会計基準等>
略称 | 会計基準等 |
---|---|
退職給付会計基準 | 退職給付に関する会計基準(企業会計基準第26号) |
退職給付会計適用指針 | 退職給付に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第25号) |
勤務費用とは|計算方法と仕訳をわかりやすく解説(上級)
目次
「勤務費用」とは
「勤務費用」とは、1期間の労働の対価として発生したと認められる退職給付をいいます(退職給付会計基準 第8項)。
「利息費用」や「期待運用収益」とともに「退職給付費用」の計算要素になります。
計算方法
退職給付見込額のうち当期に発生したと認められる額を割り引いて計算します(退職給付会計基準 第17項)。
段階的な計算方法は次の通り。
<勤務費用の計算方法>
- (1)退職給付見込額の見積り
- (2)退職給付見込額のうち当期において発生すると認められる額の計算
- = 退職給付見込額 × 当期1年/(入社時から退職時までの勤務年数)
- (3)勤務費用の計算
- = (2)の結果/(割引率)^a
- a = (入社時から退職時までの年数) - (入社時から当期末までの年数)
- ※「退職給付会計適用指針 第15項」より一部引用
仕訳
「勤務費用」は「退職給付費用」の増額要因となるため、仕訳は次の通り。
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
勤務費用の発生 | 退職給付費用 | ××× | 退職給付引当金 | ××× |
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問題例
<勤務費用の計算例>
・当期末時点の勤務年数:35年
・退職時の勤務年数:40年
・退職給付見込額:1,000
・割引率:年4%
※定年時の退職率を100%と仮定する
※円未満は切り捨てる
(1)退職給付見込額の見積り
本問では所与として「退職給付見込額1,000」が与えられているため、見積り計算は必要ありません。
(参考)実務における見積り
本問では「退職時に100%の確率で退職一時金1,000を受け取る」という設定ですが、実務では定年前に退職することもあれば死亡する可能性もあるため、「退職給付見込額」の計算は非常に複雑になり、時間も要します。
(2)当期発生額の計算
「退職給付見込額1,000」は入社から退職までの40年の労働に対して発生していることから、次の通り計算します。
当期発生額 = 退職給付見込額1,000 × (当期1年/40年) = 25
(参考)期間定額基準
退職給付見込額を各期の発生額として配分する方法として「期間定額基準」と「給付算定式基準」があります。本問では前者の方法で計算しています。
(3)勤務費用の計算
当期発生額25(40年経過時)を割引率4%で割り引き、「現在価値(35年経過時)」を計算します。
勤務費用 = 当期発生額25/(割引率4%^5) = 20.548・・・・・ →20(円未満切り捨て) (答え)
仕訳
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
退職給付費用 | 20 | 退職給付引当金 | 20 |
(参考)従業員拠出がある場合
従業員からの拠出がある場合には、従業員からの拠出額を勤務費用から差し引きます(退職給付会計基準 注4)。
会計基準等・参考文献
会計基準等
※2024年2月27日現在。リンク先の会計基準等は最新版でない場合があります。
・退職給付に関する会計基準(企業会計基準第26号)
・退職給付に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第25号)
参考文献
・PwCあらた監査法人 退職給付会計の実務マニュアル 基本・応用・IFRS対応 中央経済社 2016年