5-5 退職給付引当金
退職給付引当金とは
退職給付引当金とは、従業員の退職時に支払う退職一時金や退職後の退職年金支払い(以下、これらを「退職金」といいます)に備えて、事前に費用(損失)として、見積計上した金額(引当金)をいいます。
退職金の性質と引当金の計上
退職金は、従業員が会社で働いてきた結果として与えられる労働対価であり、賞与引当金と同様に「労働対価の後払い」としての性質を持っているとされています。
雇用契約や給与規程などでは、「退職金は退職時または退職後に支払われる」というように規定しています。従って、毎月の給与支払いでは、退職金は債務(会社側から見て)としては計上していません。従って、未払金や未払費用として毎月の給与と同じようには仕訳できません。
しかし、引当金としての計上要件(ようけん)は満たしているため、毎決算時に退職給付引当金を計上して費用計上します。
<補足>引当金の計上要件について
※引当金の計上要件は簿記2級の範囲外の論点。
会計基準には、「引当金を計上するための要件」が存在します。これらの要件を全てを満たした場合には、引当金を計上しないといけません。
年金基金とは
年金基金とは、会社の退職年金を運用し管理する団体をいいます。
会社が、年金基金に退職金として預ける(「掛け金(かけきん)を拠出(きょしゅつ)する」といいます)資金は年金基金で運用し、従業員が退職した後に退職年金として、年金基金が従業員に支払います。
この年金基金に拠出した掛け金を、「年金資産」といいます。
退職給付引当金の仕訳
退職給付引当金の増減に関する取引は、「退職給付引当金(負債に属する勘定科目)」「退職給付費用(費用に属する勘定科目)」で仕訳します。
引当金の計上と仕訳
毎決算時に、将来発生する退職金の算定を行い、そのうち当期の労働対価に含まれる部分を当期の費用として見積って、退職給付引当金として計上します。
掛金の拠出と仕訳
年金基金に掛け金を拠出した場合には、その分だけ、会社が運用管理する退職金が年金基金に移動したことになります。すなわち、会社が運用管理する退職金の額が、掛け金の拠出額だけ減少する、ということです。
退職給付引当金とは、会社が運用管理する退職金であるため、年金基金に掛け金を拠出した場合には、退職給付引当金を減少させる仕訳を記帳します。
仕訳(まとめ)
まとめると次の通り。
| 取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 引当金の計上 | 退職給付費用 | ××× | 退職給付引当金 | ××× |
| 年金基金への掛け金拠出 | 退職給付引当金 | ××× | 現金預金など | ××× |
| 退職金の支払い | 退職給付引当金 | ××× | 現金預金など | ××× |
<応用>前払年金費用
通常は、退職給付引当金は貸方残高になるため、貸借対照表には、退職給付引当金を負債に表示します。
しかし、掛け金拠出額が多額になった場合、退職給付引当金の貸方残高はマイナスになることがあります。
この場合には、「退職給付引当金」から「前払年金費用(資産に属する勘定科目)」へ振り替え仕訳を行い、貸借対照表には前払年金費用を資産に表示させるように処理します。
<応用>「退職給付に係る負債」と「退職給付に係る資産」
後の章で学習する連結財務諸表(連結F/S)の連結貸借対照表(連結B/S)では、退職給付引当金と前払年金費用はそれぞれ「退職給付に係る負債」「退職給付に係る資産」という名称で表示します。
従って、連結会計上では、これらの科目を表示科目だけでなく勘定科目として使用し、仕訳に使用する場合があります。
仕訳問題
- 1.A社は第1期の決算(×1年4月1日~×2年3月31日)において、退職給付引当金を見積もり計上する。
- 退職給付を見積もった結果、当期の従業員の労働に対する退職給付は¥5,000,000となった。
- 退職給付引当金の計上に関する仕訳を示しなさい。
- 第2期(×2年4月1日~×3年3月31日)になった。次の取引について仕訳しなさい。
- 2.×2年7月にA社は、年金基金へ掛け金¥2,000,000を当座預金から拠出した。
- 3.×2年11月にA社は、従業員甲の退職に伴い、退職金¥1,000,000を普通預金から支払った。
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 退職給付費用 | 5,000,000 | 退職給付引当金 | 5,000,000 |
| 2 | 退職給付引当金 | 2,000,000 | 当座預金 | 2,000,000 |
| 3 | 退職給付引当金 | 1,000,000 | 普通預金 | 1,000,000 |
