16-1 会計と税務
税効果会計を解説する前に、税務について会計と比較しながら解説します。
<簿記2級対策>税効果会計の学習前に伝えたいこと
税効果会計は、日商簿記2級の試験範囲の中では、最も難しい論点といえます。
本書では、税効果会計の理論的な解説も行いますが、本来であれば、会計理論や税務をしっかりと学んでから、取り組む論点です。
日商簿記2級では、大問で出題される連結会計(高配点)と異なり、小問のみで出題されます。
出題されたとしても配点が低いことから、日商簿記2級対策としては、
「仕訳を覚える」を優先して取り組む
ことをお勧めします。理論的な解説部分は概要を把握する位で構いません。
仕訳を覚え、そして時間にも脳にも余裕ができた場合には、税効果会計を理解するように取り組みましょう。
会計とは
簿記2級では、上場企業を対象とした財務諸表(貸借対照表、損益計算書など)を中心に学習します。
税効果会計を解説する場合には、この財務諸表に関することを「会計」といい、税務と比較する場合によく使います。
例えば、「会計上の利益」「会計上の資産負債」といった使い方をします。
税務とは
税金の計算に関することを「税務」といいます。
税務の用語
税務に関する用語を解説します。
税金の種類
税効果会計の対象となる税金は、「法人税、住民税及び事業税(以下、法人税等)」です。
確定申告書
税金計算を報告するための書類を、「確定申告書」といいます。
税率
税金計算に適用します。最近の問題では30%で出題されることが一般的です。
税効果会計の問題では、「(法定)実効税率(ほうていじっこうぜいりつ)」と記載してあることが一般的です。
課税所得
確定申告書では、会計上の利益に様々な税金上の項目を加算・減算して、税金計算の基になる「課税所得(かぜいしょとく)」を計算し、課税所得に税率を掛け算して法人税等を計算します。
課税所得は、「税務上の利益」といえます。
<課税所得と法人税等の計算>
- 課税所得 = 会計上の利益 + 加算項目 - 減算項目
- 法人税等 = 課税所得 × 税率
益金と損金
税務上の収益を「益金」といいます。
税務上の費用を「損金」といいます。
加算項目と減算項目
加算項目や減算項目は、法人税法をはじめとする税金のルールに基づいて、確定申告書上に集計します。
加算項目とは、会計上の収益以外で、課税所得を増加させる要因となるものをいいます。
減算項目とは、会計上の費用以外で、課税所得を減少させる要因となるものをいいます。
加算項目は課税所得を増やすので、法人税等を増やし、減算項目は法人税等を減らします。
加算項目と減算項目の例
例えば、日商簿記で学習した減価償却費の計算方法は、法人税法に基づいています。
この金額を超えて、減価償却費を会計上、計上できますが、超過した金額については、税務上は加算項目になります。
損金算入限度超過額
税務上で、損金として認められる金額(損金算入限度額)を超えて、会計上の費用として計上した金額を、「損金算入限度超過額(そんきんさんにゅうげんどちょうかがく)」といいます。
<損金算入限度超過額と加算項目の関係>
- ・損金算入限度超過額は、加算項目になります。
- ・簿記2級では、「減価償却費」と「貸倒引当金繰入」の損金算入限度超過額(つまり加算項目)が出題されます。
<応用>利益積立金額
将来の加算項目や減算項目となる項目をいいます。
「税務上の資産負債」ともいいます。
会計と税務の比較
次の通り。
項目 | 会計 | 税務 |
---|---|---|
報告書類 | 財務諸表 | 確定申告書 |
成果 | 収益 | 益金 |
努力・貢献 | 費用 | 損金 |
稼得 | 利益 | 課税所得 |
残高 | 資産負債 | 利益積立金額 |