16-3 税効果会計の仕訳
税効果会計で使用する勘定科目
税効果会計による法人税等の調整額について、「繰延税金資産(資産に属する勘定科目)」「繰延税金負債(負債に属する勘定科目)」「法人税等調整額」で仕訳します。
繰延税金資産とは
繰延税金資産とは、会計上の利益を基準とした場合の法人税等の前払いを、貸借対照表に反映させる場合の資産科目をいいます。
前払費用をイメージすると、理解しやすくなります。
繰延税金負債とは
繰延税金負債とは、会計上の利益を基準とした場合の法人税等の未払いを、貸借対照表に反映させる場合の負債科目をいいます。
未払費用をイメージすると、理解しやすくなります。
簿記2級で出題される取引
「減価償却費」「貸倒引当金」「その他有価証券評価差額金」の問題が出題されます。
ここでは、減価償却費と貸倒引当金を解説します(その他有価証券評価差額金は次回解説)。
どちらも、繰延税金資産(法人税等の前払い)を計上する取引です。
仕訳1-減価償却費
最初に、会計上の減価償却費を仕訳します。
次に、減価償却費の損金算入限度超過額に法人税等の実効税率を掛け算した金額にて、借方に「繰延税金資産」、貸方に「法人税等調整額」を記入して仕訳します。
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
会計上の減価償却費 | 減価償却費 | ××× | 減価償却累計額 | ××× |
損金算入限度超過額 | 繰延税金資産 | ××× | 法人税等調整額 | ××× |
仕訳2-貸倒引当金
最初に、会計上の貸方引当金を仕訳します。
次は、減価償却費の償却超過額と同じです。貸倒引当金の損金算入限度超過額に法人税等の実効税率を乗じた金額で、借方に「繰延税金資産」、貸方に「法人税等調整額」を記入して仕訳します。
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
会計上の貸倒引当金 | 貸倒引当金繰入 | ××× | 貸倒引当金 | ××× |
損金算入限度超過額 | 繰延税金資産 | ××× | 法人税等調整額 | ××× |
<補足>繰延税金負債の仕訳
簿記2級の試験範囲では、繰延税金負債を使用するのは、「その他有価証券評価差額金」だけです。
仕訳の形式が例外的なため、次回に解説します。
仕訳問題
- 1.A社は決算を迎えた。当期の建物の減価償却費として50万円を計上した。損金算入限度額は30万円である。
- 実効税率は30%として計算すること。
No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
1 | 減価償却費 | 500,000 | 建物減価償却累計額 | 500,000 |
繰延税金資産 | 60,000 | 法人税等調整額 | 60,000 |
<解説>
No1 繰延税金資産(法人税等調整額)= 損金算入限度超過額200,000円(減価償却費500,000円 - 損金算入限度額300,000円)× 実効税率30% = 60,000円
損金算入限度額は税務上の費用(損金)のため、減価償却費自体は会計上の費用(つまり、これまでに学習した減価償却費)50万円で仕訳します。
「繰延税金資産(法人税等調整額)」は、会計上の費用と税務上の費用との差額から計算するため、上記の仕訳になります。