16-2 税効果会計の仕組み
次に、税効果会計の仕組みを、会計上の利益と比較して解説します。
税効果会計の定義
次の通り。
<税効果会計>
- 税務上の所得計算によって、計上された税金について、会計上の利益と対応するように、会計上の資産・負債と税務上の資産・負債の一時差異を、調整するための手続き
税効果会計の仕組みとは
この定義中の「会計上の利益と対応するように、調整するための手続き」について、図を掲載しながら解説することで、税効果会計の仕組みを解説します。
図の左側が、損益計算書(会計上のP/L)、右側が確定申告書(税務上のP/L)です。
法人税等の計算は、確定申告書で行います。
法人税、住民税及び事業税の計算
次の通り、計算します。
(手順1)当期純利益(損失)の記入
まず、損益計算書の利益(税引前当期純利益)の金額を、確定申告書の一番上に記入します(厳密には当期純利益ですが、税効果会計の説明に焦点を当てるため、 税引前当期純利益にしています)。
(手順2)加算と減算の記入
次に、「加算項目」と「減算項目」を記載し、それぞれ金額を記入します。
簿記2級の出題範囲である減価償却費と引当金を加算項目として、例にしています。
(手順3)課税所得の計算
課税所得は「利益 450 + 加算合計 350 - 減算合計 0 = 800」と計算します。
(手順4)法人税等の計算
課税所得と実効税率から、「課税所得 800 × 実効税率30% = 240」と法人税等が計算できます。
この240を、損益計算書の「法人税、住民税及び事業税」に記入します。
「会計上の利益に対応するように調整するための手続き」とは
損益計算書を見ると「法人税、住民税及び事業税 240 ÷ 税引前当期純利益 450 = 53.3...%」となり、損益計算書上(会計上)で税率を計算すると、税務上の税率30%を大きく上回ってしまいます。
最初に掲載した図表を再掲します。
この「53.3%という会計上の税率を、税務上の税率である30%に一致させるように、調整すること」が、上述の税効果会計の説明文にある「会計上の利益と対応するように調整するための手続き」であり、税効果会計の手続きを行う目的の1つです。
法人税等調整額のP/L表示
具体的には、損益計算書にて「法人税、住民税及び事業税」の下に、「法人税等調整額(ほうじんぜいとうちょうせいがく)」という科目を設定して、今回の例では、△105の金額を記入することで、会計上の税金額を「240 - 105 = 135」に調整しました。
この△105という数字は、「確定申告書の加算合計350 × 税率30% = 105」と計算し、マイナス表示しています。
税効果会計の結果
この調整の結果、会計上の税率は「調整後の法人税、住民税及び事業税 135 ÷ 税引前当期純利益 450 = 30%」となり、税務上の税率と一致します。
以上が、損益計算書から見た税効果会計の仕組みです。