16-5 税効果会計と財務諸表の表示
最後に、税効果会計の適用をした場合の、B/SとP/Lの科目表示を解説します。
法人税等調整額のP/L表示
「法人税等調整額」は、損益計算書上、「法人税、住民税及び事業税」のすぐ下に表示します。
「法人税等調整額」の下には、「当期純利益(または当期純損失)」を表示します。
プラス・マイナスの表示
「法人税等調整額」は、法人税等と同じく、増加は借方に記入、減少は貸方記入です(費用と同様)。
次に、P/L上のプラス、マイナスの表示は、法人税等への影響で考えます。
「法人税等調整額」が、法人税等を増やす影響を与える場合にはプラス表示(符号なし)、法人税等を減らす影響を与える場合にはマイナス表示(△)します。
仕訳の貸借と一緒にまとめると次の通り。
<法人税等調整額の貸借とP/L表示>
- ・借方残高→増加
- →法人税等を増やす調整
- →プラス表示
- ・貸方残高→減少
- →法人税等を減らす調整
- →マイナス表示(△)
繰延税金資産・負債のB/S表示
「繰延税金資産」は、貸借対照表上の固定資産(投資その他の資産)、「繰延税金負債」は、固定負債にそれぞれ表示します。
ポイントは次の2点です。
<ポイント-繰延税金資産・負債のB/S表示>
- (1)固定資産(「繰延税金資産」)と固定負債(「繰延税金負債」)の残高を確認
- (2)「繰延税金資産」と「繰延税金負債」の残高を相殺する
それぞれ解説します。
(1)繰延税金資産と繰延税金負債の残高を確認
決算整理仕訳後の「繰延税金資産」と「繰延税金負債」について、それぞれ残高を確認します。
(2)繰延税金資産と繰延税金負債の相殺
(1)の「繰延税金資産」と「繰延税金負債」とを相殺します。
相殺した結果、「繰延税金資産」に残高があれば、B/S上、固定資産(投資その他の資産)に表示し、「繰延税金負債」に残高があれば、固定負債に表示します。
問題例
- A社は当期の決算整理仕訳を終え、決算整理仕訳後残高試算表を作成した。税効果会計に関する科目の残高は次の通り。カッコ内は関係する科目
- (1)法人税等調整額 貸方250万円
- (2)繰延税金資産(建物減価償却費)200万円
- (3)繰延税金資産(売掛金の貸倒引当金)50万円
- (4)繰延税金負債(その他有価証券)120万円
- (問題)(1)から(4)の税効果会計の科目について、P/LとB/Sの表示科目と金額を答えましょう。
<解答>
- ・P/L表示
- 法人税等調整額 △2,500,000
- ・B/S表示
- (固定資産 投資その他の資産)繰延税金資産 1,300,000
解説
P/L表示について
「(1)法人税等調整額 貸方250万円」とあります。法人税等も法人税等調整額も費用と同様に考えて、借方は増加、貸方は減少です。
貸方250万円であるため、当期の法人税等調整額は、法人税等を減少させる効果を有することになります。
以上から、法人税等をマイナスするため、P/L上では、「法人税等調整額 △2,500,000」とマイナス表示します。
B/S表示について
「繰延税金資産」は(2)と(3)の合計250万円、「繰延税金負債」は(4)から120万円です。
相殺すると、「繰延税金資産 130万円」が残高になります。従って、固定資産(投資その他の資産)に「繰延税金資産 130万円」を表示します。
まとめ
以上で、本書の解説を終了します。
本書が日商簿記2級の合格に役立ち、日商簿記1級をはじめ公認会計士・税理士の資格取得や、会計理論・経理実務など、さらなる会計簿記の知識獲得へのきっかけになれば幸いです。
最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。