16-4 その他有価証券評価差額金と税効果会計
その他有価証券評価差額金の仕訳(再確認)
税効果会計を適用しない場合の、その他有価証券の期末評価の仕訳は次の通り。
<税効果会計を適用しない場合>
| ケース | 取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 時価 > 取得原価 | 決算日の評価 | その他有価証券 | ××× | その他有価証券評価差額金 | ××× |
| 翌期首 | その他有価証券評価差額金 | ××× | その他有価証券 | ××× | |
| 時価 < 取得原価 | 決算日の評価 | その他有価証券評価差額金 | ××× | その他有価証券 | ××× |
| 翌期首 | その他有価証券 | ××× | その他有価証券評価差額金 | ××× |
このように、「その他有価証券評価差額金」を使用して仕訳しました。
税効果会計を適用した場合
税効果会計を適用する場合には、次の通り仕訳します。
<税効果会計を適用した場合>
| ケース | 取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 時価 > 取得原価 | 決算日の評価 | その他有価証券 | ××× | その他有価証券評価差額金 | ××× |
| 繰延税金負債 | ××× | ||||
| 翌期首 | その他有価証券評価差額金 | ××× | その他有価証券 | ××× | |
| 繰延税金負債 | ××× | ||||
| 時価 < 取得原価 | 決算日の評価 | その他有価証券評価差額金 | ××× | その他有価証券 | ××× |
| 繰延税金資産 | ××× | ||||
| 翌期首 | その他有価証券 | ××× | その他有価証券評価差額金 | ××× | |
| 繰延税金資産 | ××× |
※その他有価証券評価差額金は、「時価と取得原価の差額 × 実効税率」で計算
この仕訳の考え方について、解説していきます。
その他有価証券評価差額金の特徴
それは、純資産に属する勘定科目であることです。
通常であれば、費用または収益の勘定科目に属して、P/Lに計上してから純資産に影響します。
しかし、その他有価証券評価差額金はP/Lを経由せずに直接、B/Sの純資産に計上します。
税効果会計への影響-P/L面
ということは、その他有価証券評価差額金は、会計上も税務上も、どちらでも費用や収益にならないということです。
すなわち、税金の計算に影響しません。
従って、税効果会計のP/Lへの影響を示す「法人税等調整額」は計上しません。
以上の理由から、上の仕訳の通り、「その他有価証券」の期末評価の仕訳には、「法人税等調整額」が登場しません。
この点が、一般的な税効果会計の仕訳との違いです。
税効果会計への影響-B/S面
次に、B/Sの影響を考えます。
会計上の資産負債(その他有価証券)は、期末評価によって増減します。
これに対して、法人税法では、「その他有価証券」の期末評価は認識しません。
従って、税務上の「その他有価証券」は、取得原価のままです。
この会計上の「その他有価証券」の金額と税務上の「その他有価証券」の金額との差異については、次の通り考えます。
例えば、繰延税金負債の場合(期末時価 > 取得原価)には次の通り。
<その他有価証券評価差額金と税効果会計>
- 期末時価 > 取得原価
- →会計上のその他有価証券が増加
- →仮に売却した場合には、売却益が増加
- →収益(益金)の発生は法人税等を増加させる
- →会計上の法人税等の未払として繰延税金負債を計上する
「その他有価証券」を売却した場合の売却益は、会計上だけでなく、税務上も収益(益金)になることが法人税法上、定められています。従って、「その他有価証券」を売却した場合には、法人税等は増加します。
「その他有価証券評価差額金」はP/L科目ではないため、決算時点では法人税等に影響は与えません。しかし、会計上では、将来の売却益の増加を見込んで、会計上の法人税等の未払いを認識するために、「繰延税金負債」を計上します。
仕訳問題
- A社は決算日を迎えた。B社株式(その他有価証券として保有)の取得原価は100万円、期末時価は150万円である。
- ※実効税率は30%とする。
- (問題)決算日の仕訳と翌期首の仕訳を示しなさい
| 取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 決算 | その他有価証券 | 500,000 | その他有価証券評価差額金 | 350,000 |
| 繰延税金負債 | 150,000 | |||
| 翌期首 | その他有価証券評価差額金 | 350,000 | その他有価証券 | 500,000 |
| 繰延税金負債 | 150,000 |
