持株基準・支配力基準・影響力基準(連結)とは|用語解説
記事公開日:2022年6月26日
連結の範囲を決める基準として「持株基準」「支配力基準」「影響力基準」がありますが、日本の会計の過去の変遷において、どの基準も採用されたことがあります。
本記事では、これらの用語の違いや過去の経緯及び現在の制度について会計基準や関係文書を基に解説します。
持株基準とは
持株基準とは、子会社の判定基準の1つであり、親会社が直接・間接に議決権の過半数を所有しているかどうかによって判定する方法をいいます。「持分基準」ともいいます。
支配力基準、影響力基準とは
支配力基準とは、子会社の判定基準の1つであり、議決権の所有割合以外の要因も加味することで、親会社が他の会社の意思決定機関を実質的に支配しているかどうかにより判定を行う方法をいいます。
影響力基準とは、関連会社の判定基準の1つであり、、議決権の所有割合以外の要因も加味することで、親会社(又は子会社)が、他の会社の財務及び営業の方針決定に対して重要な影響を与えることができるかどうかにより判定する方法をいいます。
違い
本質的な違いは、持株基準が「議決権の所有割合」によって連結の範囲を決定する「形式基準」であるのに対して、支配力基準又は影響力基準は、議決権以外の要因を加味して実質的な支配又は影響力を判定する「実質基準」であることです。
持株基準では判定が容易である一方、粉飾決算の手法である「連結外し」といった、議決権の意図的な操作に対応できない欠点があります。これに対して、支配力基準・影響力基準では、意図的な連結範囲の操作を防止できる一方、諸要因を加味して連結の範囲を検討するため、子会社・関連会社の判定が困難になります。
親会社説・経済的単一体説との関係
専門書籍等によれば、持株基準は親会社説と整合し、支配力基準・影響力基準は経済的単一体説と整合しているとされます。
過去の経緯と現在の制度
平成9年(1997年)以前「連結財務諸表原則」においては、連結の範囲の決定方法として持株基準が採用されてきました(関連会社においては、持株基準と同質である議決権割合が20%以上の会社かつ、財務及び営業方針に重要な影響を与える場合を関連会社としていた)。
しかし、平成9年6月公表の「連結財務諸表の見直しに関する意見書」において、当時のディスクロージャーの問題を指摘し、さらに日本企業の多角化・国際化、及び海外投資家の国内市場参入といった外部環境が著しく変化していることが報告されました。
さらに、当時、国際会計基準(IFRS)では支配力基準を採用しているなど、世界的には支配力基準が有力とされているという国際的動向がありました。持株基準では、会社を事実上支配しているケースであっても連結の範囲に含まれず、そのような被支配会社を連結の範囲に含めない連結財務諸表は企業集団に係る情報としての有用性に欠けることについても同意見書において併せて公表されています。
このような見地から、同報告書は日本での支配力基準及び影響力基準の導入を公表し、「連結財務諸表原則」を改訂。さらに「連結財務諸表制度における子会社及び関連会社の範囲の見直しに係る具体的な取り扱い」において具体的な適用指針を公表。平成11年(1999年)4月1日以後開始する事業年度に係る連結財務諸表について適用開始になりました。
現在では、これらの基準に代わり、企業会計基準委員会が平成20年(2008年)に公表した「連結財務諸表に関する会計基準」「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」が会計基準として機能しています。
※重要性の原則の適用については「連結の範囲及び持分法の適用範囲に関する重要性の原則の適用等に係る監査上の取扱い」が存在します。
会計基準・参考文献
※2022年6月17日現在。リンク先の会計基準等は最新版でない場合があります。
・連結財務諸表に関する会計基準(企業会計基準第22号)
・連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針(企業会計基準適用指針第22号)
・連結の範囲及び持分法の適用範囲に関する重要性の原則の適用等に係る監査上の取扱い(監査・保証実務委員会実務指針第52号)
・連結財務諸表の見直しに関する意見書(企業会計審議会)
・連結財務諸表制度における子会社及び関連会社の範囲の見直しに係る具体的な取り扱い(企業会計審議会)