固定資産の換金価値について分かりやすく解説(入門)
記事最終更新日:2023年12月17日
記事公開日:2012年4月23日
前回、「会計入門その9~固定資産の資産計上と減価償却」では、「使用価値」の視点から考えた固定資産の資産計上について解説しました。
今回は、前回の続きである固定資産の評価と換金価値について解説します。
固定資産が資産である理由と評価
前回は固定資産が資産である理由について、次の2つの考え方を説明しました。
- ①換金価値があるから:固定資産自体を売却することができるので、将来現金として入金される可能性が高い。
- ②使用価値があるから:売上・利益の稼得に貢献し、結果として、将来、入金されるであろうキャッシュの獲得に貢献している。
前回は、「②使用価値があるから」の視点から固定資産の評価(貸借対照表に表示する金額)について解説しました。
今回はもう1つの視点、「①換金価値があるから」の考え方から、固定資産の評価について説明します。
【補足】固定資産を資産計上する理由について、考え方を解説しています。
現状の我が国の会計制度(会計基準)に関する固定資産の基準を解説しているわけではありません。
固定資産の換金価値
それでは、減価償却資産の対象とならない有価証券の貸借対照表上の表示額について解説します。
これは、上述の「①固定資産は換金価値があるので資産である」という視点で固定資産の評価を考えることで理解できます。
例えば、上場企業の株式(投資有価証券)を1億円で購入したとします。
その後、決算を迎えた時点で、貸借対照表に計上する投資有価証券の金額がいくらになるか(有価証券の評価)について考えます。
上場企業の株式には株式市場があり、毎日の時価が分かります。
例えば決算日の株価が9,000万円だとします。
すなわち、会社が保有している株式が決算日には9,000万円で売却できる、ということです。
これまでの解説で、資産を次の通り説明してきました。
・資産:お金がどれだけあり、また、将来、現金として入金されそうなお金や提供を受けるモノやサービスがどれだけあるのか。
資産に計上する際の金額(評価額)は、「将来に」入ってくる現金です。
この言葉をそのまま当てはめれば、会社が将来、株式をお金に換金しようと考えている時の株価で資産計上することになります。
例えば、会社が「当社は2年後に株価を売却する」と考えているならば、2年後の時価を予測して資産計上する、ということです。
しかし、そのようなことは未来である限り不可能です。
従って、このまま資産計上の説明をそのまま有価証券に当てはめてしまうと「なんでもアリ」になってしまいます。
将来は誰にも分からないのだから100億円と言ってもいいし1兆円といってもいい。
これでは、会社外部の投資家や債権者などの判断に役に立つ決算書には程遠いものになることは明らかです。
そこで減価償却資産の減価償却と同じようにルール化します。具体的には次の通りです。
- 1.固定資産を取得した時:購入時の金額で計上(取得原価主義。前回説明しました)
- 2.決算時:決算日の時価で計上
以上から今回の例では、決算日に貸借対照表を作成した場合に固定資産に区分される有価証券(投資有価証券)の評価額は、「投資有価証券 9,000万円」、千円単位ならば「投資有価証券 90,000」が答えです。