固定資産を資産計上する理由について分かりやすく解説(入門)

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記事最終更新日:2023年12月17日
記事公開日:2012年4月22日

前回、「会計入門その8~固定資産の区分」では、固定資産の区分について解説しました。

今回は、固定資産が資産として計上される理由やその評価額、および減価償却について解説します。

※本記事では「会計の考え方(会計学)」を解説しています。固定資産の仕訳については、下記の記事で解説しています。

固定資産の資産計上とは

固定資産の資産計上とは、建物や備品、ソフトウェア、のれんなど固定資産に分類されるモノ・サービスを資産として貸借対照表上に掲載(表示)することをいいます。

資産計上のポイントとして、「資産かどうか」「どの区分に計上(表示)するか」「いくら(金額)で表示するか」を挙げることができます。

固定資産が資産である理由とは

これまでの解説では、資産について次の通り説明してきました。

お金がどれだけあり、また、将来、現金として入金されそうなお金や提供を受けるモノやサービスがどれだけあるのか。

この説明に当てはめて固定資産が資産である理由を次の通り、より具体的に説明します。

1つの考え方として、「固定資産自体を売却できるので、将来現金として入金される可能性が高い」という考え方ができます。

①換金価値があるから」といった言い方をします。

すなわち、固定資産が資産である理由を「換金価値があるので、将来、現金として入金される可能性が高いから」とする考え方です。

もう1つの考え方として、会社は固定資産を利用することで、モノやサービスを製造・販売しています。その結果、利益を出してお金を儲けています。

従って、「将来、売上として入金されるキャッシュの獲得に貢献しているから資産である」という考え方があります。

こちらは「②売上利益の稼得(かとく。獲得という意味)に貢献するから」といいます。

すなわち、固定資産が資産である理由を「売上利益の稼得に貢献する形で、将来、現金として入金される可能性が高いから」とする考え方です。

固定資産の計上(評価)と減価償却

次に固定資産の評価(ひょうか)、すなわち「いくらで貸借対照表上の資産として表示するのか?」を考えていきます。

例えば、受取手形や売掛金はモノ・サービスの販売額がそのまま資産として計上する金額になるので分かりやすいと思います。

将来現金として入金される可能性が高い金額であり、資産の説明をそのまま当てはめて考えることができます。

厳密には貸倒引当金の存在も考えなければなりませんが、イメージはしやすいでしょう。

固定資産の評価についてですが、上述した2つの固定資産となる理由で分類して説明していきます。

【補足】固定資産を資産計上する理由について、考え方を紹介しています。

現状の我が国の会計制度(会計基準)に関する固定資産の基準を解説しているわけではありません。

②売上利益の稼得に貢献の視点で固定資産の評価を考えた場合

最初に「②売上利益の稼得に貢献」の視点から、固定資産の評価について説明します。

例えば会社の本社ビルがあります。会社はこの本社ビルを1億円で購入したとします。

その後、会社はこの本社ビルでモノやサービスを開発・製造・販売、管理といったように事業活動のために使用してきました。その結果、売上・利益を継続的に稼得することができています。

このような場合、本社ビル(表示科目では建物)は貸借対照表にいくらで計上すればいいと思いますか?

上述の通り、確かに本社ビルは会社の売上・利益に貢献しており、使用価値はあるといえそうです。

すなわち、資産=将来に向けて使用価値がある、となります。

それでは、この「使用価値」とはいくらになるでしょう。100万円?1,000万円?1億円?それとも10億円?

人によって様々な回答が予想できます。従って、会社によって資産に計上する建物の金額に対する考え方にバラツキが出てしまうことになり、例えば、同じ1億円で購入したとしてもA社とB社とで貸借対照表に計上する建物の金額が違ってしまうことになります。

しかし、当初の決算書を作る目的から考えてみると非常によくないことになります。

なぜならば、投資家が会社に投資するかどうかの判断資料として決算書を利用するからです。

その投資判断の際に、同じルールで決算書が作成されていなければ、A社とB社、どちらに投資したらいいのかが分かりません。

減価償却

そこで次の考えに至ります。

「人によって評価にバラツキがあるならばルール化しましょう。」

具体的には建物は次のように資産計上します。

  • (1)固定資産を取得した時:購入した金額で計上
  • (2)固定資産の使用開始以降:「毎期、ある一定のルールに基づいて算定した金額」を、(1)の金額から差し引いて計上

2.の「一定のルールに基づいて1.の金額から差し引く金額を算定すること」を減価償却(げんかしょうきゃく)といいます。

減価償却:長期間にわたって使用される固定資産の取得(設備投資)に要した支出を、その資産が使用できる期間にわたって費用配分する手続き

さて、上記のルールで本社ビルの資産計上額を算定してみましょう。

まずは「(1)本社ビルを購入した時」です。

1億円で購入したので、この時点で貸借対照表を作成した場合には、「建物 1億円」になります。千円単位で計上する場合には、「建物 100,000(千円)」です。

【補足】購入額で評価(計上)する考えを「取得原価主義(しゅとくげんかしゅぎ)」といいます。

一方で時価など、その時点での市場価格で評価する考え方を「時価主義(じかしゅぎ)」といいます。

次に(2)です。

本社ビルの使用を開始して決算を迎えた時に、(1)で計上した金額(1億円)から差し引く金額を減価償却で算定した結果、2百万円だったとします。

(2)のルールに従えば、決算時に貸借対照表に計上する金額は、「1億円-2百万円=9,800万円」となります。

従って、貸借対照表には「建物 9,800万円」。千円単位であれば「建物 98,000(千円)」と表示します。

すなわち、本社ビルを使用した分、時の経過に応じて将来の使用価値も目減りしたということを、減価償却という一定の計算方法に基づいて計算して、購入した金額から差し引く、ということです。

【補足】具体的な減価償却の方法には定額法、定率法など様々な方法があります。

我が国の会計慣行では、通常は法人税法に基づいて減価償却を計算します。

減価償却資産

このように固定資産の計上額には、減価償却を行います。減価償却の対象となる資産を「減価償却資産(げんかしょうきゃくしさん)」といいます。

減価償却資産となる表示科目は次の通りです。

  • 有形固定資産:建物、構築物、機械装置、車両運搬具、工具、器具備品など
  • 無形固定資産:ソフトウェア、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、のれんなど

有形固定資産である土地や、投資その他の資産に区分される科目は減価償却資産には該当しません。

なぜならば、これらの資産は時の経過に応じて使用した部分を減少させるという減価償却の考え方にはそぐわないからです。

この点については、冒頭に説明しました固定資産が資産である理由のうち、①換金価値があるから、という理由に基づいて、次ページ「その10~固定資産と時価主義」にて解説します。

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著者情報

須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。1人で「PDCA会計」を企画・開発・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

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