会計入門 リース債務と退職給付引当金
記事最終更新日:2020年3月4日
記事公開日:2012年5月1日
前回、「会計入門その15~未払法人税等と預り金」では、流動負債のうち、未払法人税等と預り金について説明しました。
今回はリース債務と退職給付引当金について説明します。
リース債務
リース債務(りーすさいむ)とは、簡単に説明すると、リース会社からコピー機や車などリース資産を借りた時に負債に計上する、将来、支払うお金の残高です(ただし、原則として利息分は除きます)。
これまでに負債を次の通り説明しました。
・負債:将来、支払いとして出金がありそうなお金や提供するモノやサービスがどれだけあるのか。
リース債務は将来、支払うお金であり、負債の説明に当てはまるため、負債になります。
リース会社とリース契約を締結した時に、賃借したリース資産を固定資産に計上するとともにリース債務を同額、負債に計上します。
1年以内に支払期限が到来する金額は流動負債に計上し、1年を超えて支払期限が到来する金額を固定負債に計上します。
例外的な会計処理
リース資産およびリース債務を計上しなくてもいい場合があります。
具体的にはリース契約の内容によって、実質的には売買契約と同様の内容だと判断された場合にはリース資産およびリース債務を計上します。
なぜならばリース契約と契約書に記載があっても、実質的には売買契約と同じであれば、銀行からお金を借りて自分でモノを購入したのと同じことだからです。
従って、リース契約の内容から実質的に売買契約ではないと判断されれば、リース資産およびリース債務に計上しません。リース料として費用(または原価)処理するだけです。
実質的に売買契約と同様と考えられるリース取引を「ファイナンス・リース取引」といいます。
通常のリース取引として賃貸借取引と同じと考えられるリース取引を「オペレーティング・リース取引」といいます。
退職給付引当金
退職給付引当金(たいしょくきゅうふひきあてきん)とは、従業員に対して将来、退職した時に支払うお金の残高をいいます。
将来に支払うお金であるため、負債の説明に当てはまることから負債です。
ただし、将来支払うお金といっても将来退職金として支払う全額を計上する、というわけではありません。
将来、支払う退職金のうち、決算時までに発生していると考えられる部分について計上する、ということです。
話を単純化すると、10年後に100万円の退職金を支払う場合には1年後の決算時には100万円÷10年=10万円を退職給付引当金に計上することになります(厳密ではなく、あくまでもイメージです)。
全額を計上しないのは、「退職給付は労働対価の後払い」と考えられるため、会社が従業員から受けた労働サービスの対価として貸借対照表に表示する退職給付引当金は、決算期までに受け取ったサービス部分の金額まで、ということです。
受け取っていない労働サービス部分まで退職給付引当金として計上はしない、ということです。
当サイトは入門用であるため説明はここまでとしますが、実際の退職給付引当金の算定では、金利や外部に積み立てられている年金資産等、様々なデータを用いて算定することになるため、手続きが煩雑であり、算定には非常に時間がかかります。実務者の立場からはあまりうれしくない制度ではありますが、会社の実体を決算書に反映させるためには必要な手続きです。