試用品とは|仕訳方法と販売基準(買取の意思表示)を解説
執筆日:2023年8月30日
「試用品」は特殊商品売買の1つです。テキストでは「未着品」「積送品」が先に解説してあることが多く、仕訳方法の多さや、各論点の微妙な違いも相まって、覚えるのに苦労する人が少なくありません。
本記事では、「試用品」について、「対照勘定法」と「三分法(都度法)」の仕訳方法を中心に、販売基準などの周辺知識も併せて解説します。
試用品とは|仕訳方法と販売基準(買取の意思表示)を解説
目次
試用品の仕訳一覧(まとめ)
対照勘定法の仕訳を示すと次の通り。
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
商品の購入 | 仕入 | xxx | 買掛金など | xxx |
試用品の送付 | 試用未収金 | xxx ※ | 試用仮売上 | xxx ※ |
※売価 | ||||
試用品の販売 | 売掛金など | xxx | 試用品売上 | xxx |
試用仮売上 | xxx ※ | 試用未収金 | xxx ※ | |
※売価 | ||||
商品の返品 | 試用仮売上 | xxx ※ | 試用未収金 | xxx ※ |
※売価 | ||||
決算整理仕訳 | 仕入 | xxx ※1 | 試用品 | xxx ※1 |
試用品 | xxx ※2 | 仕入 | xxx ※2 | |
※1 試用品期首残高 | ||||
※2 試用品期末残高 |
試用品とは
「試用品」とは、試用を目的として顧客に送付される商品をいいます。
顧客は商品を使用後、購入するかどうかの意思を表示します。購入の意思を表示した場合には、試用品の販売となり、会社の売上になります。また、購入しない意思を表示した場合には、試用品は会社に返品されることになります。
仕訳の特徴
「試用品」の状態では、顧客が商品を購入するかどうかは分かりません。また、商品も会社には存在せず、顧客の手許にあります。
そこで、一般商品と会計帳簿上も区別するために、「試用品」などの勘定科目で記帳します。
また、対照勘定法では、試用中の状態が会計上でも把握できるように、「試用未収金」「試用仮売上」といった勘定科目で備忘録として記帳する点も特徴的です。
販売基準(買取の意思表示)
試用品は、顧客に送付しただけでは売上計上できず、「顧客が買取の意思表示をした場合」に販売基準を満たすことから売上計上します。
ただし、契約内容によっては、定めた試用期限内に購入しない旨を伝えなければ「買取の意思表示」とみなして、販売基準を満たす場合もあります。
活動別の仕訳方法(対照勘定法)
ここでは、対照勘定法について解説し、後に「三分法(都度法)」などについてもポイントに絞って解説します。
商品の購入と仕訳
試用品の送付前であるため、一般商品の仕入の仕訳と同じです。
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
商品の購入 | 仕入 | xxx | 買掛金など | xxx |
試用品の送付と仕訳
この段階で「試用品」となることから、一般商品と区別できるように、記帳します。
「対照勘定法」では備忘録として記録するために、借方に「試用未収金」、貸方に「試用仮売上」を記入して「売価(販売価額)」で仕訳します。
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
試用品の送付 | 試用未収金 | xxx ※ | 試用仮売上 | xxx ※ |
※売価 |
買取の意思表示と仕訳
試用品の売上を計上するとともに、販売額だけ備忘録を相殺する仕訳(貸借反対の仕訳)を記帳します。
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
試用品の販売 | 売掛金など | xxx | 試用品売上 | xxx |
試用仮売上 | xxx ※ | 試用未収金 | xxx ※ | |
※売価 |
返品と仕訳
試用品が戻ってくることから、返品額に対応する売価だけ、備忘録について試用品の送付時とは貸借反対の仕訳を記帳します。
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
商品の返品 | 試用仮売上 | xxx ※ | 試用未収金 | xxx ※ |
※売価 |
決算整理仕訳
一般商品の「三分法」の仕訳のうち、期首商品と期末商品の仕訳に相当する仕訳を記帳します。
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
決算整理仕訳 | 仕入 | xxx ※1 | 試用品 | xxx ※1 |
試用品 | xxx ※2 | 仕入 | xxx ※2 | |
※1 試用品期首残高 | ||||
※2 試用品期末残高 |
「三分法(都度法)」について
対照勘定法との主な違いは、「試用品の送付時に、備忘録を記帳せず、仕入から試用品への振り替える。」「試用品販売の都度、売上原価を計上する。」の2点です。
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
商品の購入 | 仕入 | xxx | 買掛金など | xxx |
試用品の送付 | 試用品 | xxx | 仕入 | xxx |
試用品の販売 | 売掛金など | xxx | 試用品売上 | xxx |
仕入 | xxx | 試用品 | xxx | |
商品の返品 | 仕入 | xxx | 試用品 | xxx |
決算整理仕訳 | 仕入 | xxx | 試用品 | xxx |
試用品 | xxx | 仕入 | xxx | |
※「xxx」は、2行とも「期末試用品残高」の金額 |
その他の仕訳方法について
試用品のその他の仕訳方法として、「三分法(期末一括法)」「分記法」「総記法」があります。
※分記法と総記法の仕訳方法は、下記の記事で解説。