14-5 剰余金の配当と仕訳

配当(はいとう)とは、株式会社の純資産の部より計算された剰余金(じょうよきん)から株主に対して主に金銭による支払いを行うことをいいます。

例えば、3月決算の上場企業の株式を購入し、その会社の業績が好調のため6月の定時株主総会で配当が決議され、1株当たり〇〇円、といったお金が株主に支払われる、ということが配当になります。配当金ともいいます。

この配当金は社外流出になり、あまりにも多額の配当が行われると倒産の危険性が高まり、金融機関など会社の債権者がお金を回収できない危険性も高まります。

そこで、債権者を保護するために制定された会社法によって、配当できる範囲や計算方法をルール化しています。

この配当できる範囲が剰余金です。

剰余金の範囲

日商簿記3級では、剰余金とは「繰越利益剰余金」のこと、と覚えておけば差し支えありません。

剰余金の配当には利益準備金への積み立てを伴います。

繰越利益剰余金(くりこしりえきじょうよきん)とは、毎年の損益計算書の損益の累積から、配当などによって社外流出した金額などを加減した金額をいいます。

利益準備金(りえきじゅんびきん)とは、会社債権者を保護するために、その他利益剰余金から配当を行う度に都度、会社法で定められた一定の金額まで、一定額を積み立てるために設定された科目をいいます。

配当の手続き

剰余金から配当する場合には、その都度、利益準備金に債権者を保護するために会社法で定められたルールで計算された金額を積み立てます。

項目手続き
剰余金の配当会社法で定められた金額を利益準備金に積み立てる。

剰余金の配当の仕訳

剰余金の配当は、「繰越利益剰余金(純資産に属する勘定科目)」「未払配当金(負債に属する勘定科目)」「利益準備金(純資産に属する勘定科目)」で仕訳します。

配当のために剰余金を取り崩す(純資産の減少)ので、借方に「繰越利益剰余金」を記入します。

次に貸方ですが、「未払配当金」を配当金額で記入します(将来に配当を支払うため、「未払」配当金です。未払金の配当専用の勘定科目)。

同時に、会社法のルールに基づいて計算された金額(問題文で計算されています)について、「利益準備金」を記入します。この金額も繰越利益剰余金から減少するため、借方金額は未払配当金と利益準備金の合計額になります。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
剰余金の配当と処分繰越利益剰余金×××未払配当金×××
利益準備金×××

取引の8要素

仕訳問題

No借方科目借方金額貸方科目貸方金額
1繰越利益剰余金1,650,000未払配当金1,500,000
利益準備金150,000

まとめ

以上で本書の解説を終了します。

本書が日商簿記3級の合格に役立ち、さらなる会計簿記の知識獲得へのきっかけになれば幸いです。

最後までお読み頂きましてありがとうございました。

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著者情報

須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。1人で「PDCA会計」を企画・開発・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

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