後発事象とは(修正と開示の違い)|会計監査用語も解説

稟議決裁

記事公開日:2022年7月15日

後発事象は会計基準・監査基準どちらにも登場する重要な用語です。

本記事では、2つの意味(修正・開示)及び監査用語などにも言及して後発事象を解説します。

後発事象とは|2つの意味(修正・開示)及び会計監査用語にも言及して解説

目次

後発事象とは

後発事象とは、決算日後に発生した会社の財政状態、経営成績及びキャッシュフローの状況に影響を及ぼす会計事象をいい、このうち、監査対象となる後発事象は、監査報告書日までに発生した後発事象のことをいいます(「後発事象に関する監査上の取扱い」より)。

※監査報告書日:監査報告書に記載された日付のこと。

後発事象は「修正後発事象」と「開示後発事象」とに分類できます(後述)。

具体例

実務指針(後発事象に関する監査上の取扱い)に記載されている「開示後発事象」の具体例のうち、一部を掲載します。

重要な後発事象の具体例は「企業会計原則」の注解にも記載があります。

意義

企業の将来の財政状態・経営成績及びキャッシュフローの状況に関する、利害関係者の投資の意思決定に関する有用な情報を開示することです。

これは「明瞭性の原則」からの要請といえます。

修正後発事象と開示後発事象

冒頭の定義に記載した通り、後発事象は2種類あります。

修正後発事象

修正後発事象(第一の事象)とは、決算日後に発生した会計事象ではあるが、その実質的な原因が決算日現在において既に存在しており、決算日現在の状況に関連する会計上の判断ないし見積りをする上で、追加的ないしより客観的な証拠を提供するものとして考慮しなければならない会計事象をいいます。

修正後発事象は当期の財務諸表に影響を与える事象であることから、重要な修正後発事象について財務諸表の修正を行います。

開示後発事象

開示後発事象(第ニの事象)とは、決算日後において発生し、当該事業年度の財務諸表には影響を及ぼさないが、翌事業年度以降の財務諸表に影響を及ぼす会計事象をいいます。

修正後発事象のように当期の財務諸表数値の修正とはなりませんが、次期以降の財務諸表に影響を及ぼすため、利害関係者の投資の意思決定に関する重要な判断材料となります。

従って、上記「具体例」で示したような重要な開示後発事象は、財務諸表に注記します。

「発生」の解釈

「決算日後に発生した」の「発生」がどの時点なのかについては、例えば次の通り解釈します。

事後判明事実

「事後判明事実」とは、監査報告書日後に監査人が知ることころとなったが、もし監査報告書日現在に気付いていたとしたら、監査報告書を修正する原因となった可能性のある事実をいいます。

監査人は、監査報告書日後に、財務諸表に関していかなる監査手続を実施する義務も負いません。しかし、事後判明事実を知った場合には、監査人は、経営者と協議するなど、「後発事象(監査基準委員会報告書500)」に定められた手続を実施しなければなりません。

時系列による比較

各事象を決算手続の時系列との関係で比較すると次の通り。

事象の発生日名称対応
決算日まで決算事項当期F/Sに反映
決算日翌日から監査報告書日後発事象
※監査対象
修正後発事象当期F/S修正(重要な場合)
開示後発事象当期F/Sに注記(重要な場合)
監査報告書日の翌日以降事後判明事実経営者と監査人の協議など

経営者確認書

経営者は、「経営者確認書(特定の事項を確認するため又は他の監査証拠を裏付けるため、経営者が監査人に提出する書面又は電磁的記録による陳述)」に、全ての重要な後発事象が財務諸表上、適切に修正又は開示されていることを記載します。記載がない場合、監査人は記載するよう求めなければなりません。

会計基準

※2022年7月15日現在。リンク先の会計基準等は最新版でない場合があります。

後発事象に関する監査上の取扱い(監査・保証実務委員会報告第76号)
・後発事象(監査基準委員会報告書560)
・企業会計原則(昭和57年4月20日 大蔵省企業会計審議会)
・後発事象の監査に関する解釈指針(昭和58年2月14日 大蔵省企業会計審議会)
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則

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著者情報

須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。1人で「PDCA会計」を企画・開発・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

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