追加情報とは|具体例と注記事項など会計基準を解説
記事公開日:2022年7月16日
財務諸表の注記事項の1つに「追加情報」があります。
本記事では、追加情報とは何かについて、事例や注記事項の内容を含め会計基準・実務指針のポイントを解説します。
追加情報とは
追加情報とは、財務諸表等規則、連結財務諸表規則、中間連結財務諸表規則及び中間財務諸表等規則において特に定める注記のほか、利害関係人が会社の財政状態、経営成績及びキャッシュフローの状況に関する適正な判断を行うために必要と認められる事項をいいます。
追加情報は財務諸表に注記しなければなりません。
意義
会社の業種・業態によって様々な取引が存在し、さらに予期し得ぬ事態が発生するが、追加情報として注記できるように定めておくことで、規則で特に定めていない事項についても、利害関係者の投資の意思決定に関する有用な情報を開示できます。
分類と具体例
実務指針「追加情報の注記について」に基づいて、追加情報の分類と具体例を示すと次の通り。
1.会計方針の記載に併せて注記すべき事項
例えば、新たな事実の発生に伴う新たな会計処理の原則及び手続を採用する場合が考えられます。
<追加情報の具体例>
- (注記例)
新規事業として計画していました倉庫業に使用する建物が完成し、令和〇年〇月〇日より営業を開始しました。当社は従来建物の減価償却は定率法によっていましたが、倉庫業に係る建物については定額法を採用することとしました。
このような事項は会計方針には該当しないため、追加情報として注記します。
2.財務諸表等の特定の科目との関連を明らかにして注記すべき事項
次のような場合が考えられます。
<追加情報の具体例>
- (1)資産の使用・運用状況の説明
- (2)特殊な勘定科目の説明
- (3)会計基準等で注記を求めている事項(規則等で規定しているものを除く)
<(1)資産の使用・運用状況の説明>
- ・重要な遊休又は一時休止の固定資産がある場合
- (注記例)
土地には、未利用用地〇〇百万円が含まれています。
<(2)特殊な勘定科目の説明>
- ・一般的には使用頻度の少ない特殊な勘定科目を使用する場合など
- →追加情報で当該内容を説明
<(3)会計基準等で注記を求めている事項(規則等で規定しているものを除く)>
- ・企業会計基準委員会や日本公認会計士協会の各種委員会が公表した会計基準等に基づいて追加情報として注記する場合
- (会計基準等の例)
- ・債務保証及び保証類似行為の会計処理及び表示に関する監査上の取扱い(監査・保証実務委員会報告第61号)
- ・金融商品会計に関する実務指針(会計制度委員会報告第14号)
- ・販売用不動産等の評価に関する監査上の取扱い(監査・保証実務委員会報告第69号)
- ・圧縮記帳に関する監査上の取扱い(監査第一委員会報告第43号)
3.連結・中間固有の事項
次のような場合が考えられます。
<追加情報の具体例>
- ・連結決算手続上、親子会社間の会計処理の統一を図るために、親会社の個別財務諸表の会計処理を連結財務諸表上修正している場合
- ・中間会計期間において諸準備金等の積み立て又は取り崩しを行わず、諸準備金等を積み立てたもの又は取り崩したものとみなして税務費用を計算している場合
4.その他
次のような場合が考えられます。
<追加情報の具体例>
- ・期間比較上、説明を要する場合
- →期末日が休日のため、財政状態が通常の期末日の状況と異なる場合
- ・後発事象に該当しないが説明を要する場合
- →事業年度中に行われた意思決定又は発生した一連の取引に係る事象について、決算日後、監査報告書日までの間に当該意思決定に基づく行為又は取引が終結していない場合など。
会計基準
※2022年7月16日現在。リンク先の会計基準等は最新版でない場合があります。
・追加情報の注記について(監査・保証実務委員会実務指針第77号)
・財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
・連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則
・中間連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則
・中間財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
簿記1級の穴埋め問題や公認会計士試験(短答式)を中心に出題されます。経理実務では開示担当者として活躍したい人が押さえておくべき論点です。