会計方針とは|注記・変更・遡及適用の取り扱いを解説
記事最終更新日:2022年7月15日
記事公開日:2022年7月10日
会計処理と関連する用語に「会計方針」があります。
本記事では、会計方針とは何か、注記内容や変更、遡及適用の取り扱いなども含めて、会計基準上のポイントを解説します。
会計方針とは
会計方針とは、財務諸表の作成にあたって採用した会計処理の原則及び手続をいいます。
「企業会計原則」に定める会計方針には「表示の方法」も含まれますが、現在の会計基準(「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」)では、表示方法は会計方針には含めずに別の用語として定義しています。
注記例
重要な会計方針は財務諸表に注記しなければなりません。重要性の乏しいものは注記を省略できます。
<注記する会計方針の例>
- (1)有価証券の評価基準及び評価方法
- (2)棚卸資産の評価基準及び評価方法
- (3)固定資産の減価償却の方法
- (4)繰延資産の処理方法
- (5)外貨建て資産及び負債の本邦通貨への換算基準
- (6)引当金の計上基準
- (7)収益及び費用の計上基準
他の用語との違い
会計基準上、会計方針以外にも、「表示方法」及び「会計上の見積もり」を別の用語として定め区別しています。
また、「会計上の変更」には、会計方針だけでなく表示方法や会計上の見積もりの変更も含まれます。
会計方針の変更
会計方針の変更とは、従来採用していた一般に公正妥当と認められた会計方針から、他の一般に公正妥当と認められた会計方針に変更することをいいます。
正当な理由がある場合を除き、毎期継続して適用します(継続性の原則)。
<正当な理由の分類>
- (1)会計基準等の改正に伴い変更する場合
- 改正又は廃止だけでなく新たな会計基準等の設定も含む
- (2)それ以外の正当な理由により変更する場合
- 次の要件を満たすこと
- ・企業の事業内容又は企業内外の経営環境の変化に対応して行われる
- ・会計事象等を財務諸表に、より適切に反映するために行われる
遡及適用
会計方針を変更した場合には、過去の期間のすべてに遡及適用します。ただし、会計基準等の改正に伴う変更であって、経過的な取扱い(遡及適用を行わないなど)が存在する場合には、当該経過的な取扱いに従います。
<遡及適用の方法>
- (1)表示期間より前の期間に関する遡及適用による累積的影響額は、表示する財務諸表のうち、最も古い期間の期首の資産、負債及び純資産の額に反映する。
- (2)表示する過去の各期間の財務諸表には、当該各期間の影響額を反映する。
会計方針の変更に関する留意事項
会計方針の変更について、その他の留意事項を示します。
具体的な範囲
「会計処理の変更に伴う表示方法の変更」及び「キャッシュフロー計算書の資金の範囲の変更」は、会計方針の変更とします。
「会計方針の変更」と「会計上の見積もりの変更」との区別が困難な場合には、会計上の見積もりの変更と同様に扱い、遡及適用を行いません。
また、次の場合は会計方針の変更には該当しません。
<該当しない場合>
- ・会計事象等の重要性が増したことに伴う変更
- ・新たな事実の発生に伴う会計方針の採用
- ・連結又は持分法の適用の範囲に関する変動
遡及適用が実務上不可能な場合
次のような状況をいいます。
<遡及適用が実務上不可能な場合>
- (1)過去の情報が収集・保存されていない
- (2)過去における経営者の意図を仮定しなければならない
- (3)会計上の見積もりの会計事象等の状況に関する情報について、いつ時点のものか、時が経過したため客観的な区別が不可能
この場合には、次のとおり取り扱います。
<取扱い>
- (1)過去の累積的影響額は算定できるが、影響額を算定できない表示期間が存在する場合
- 表示期間遡及適用が実行可能な最も古い期間の期首時点で累積的影響額を算定し、当該期首残高から新たな会計方針を適用
- (2)過去の累積的影響額が算定できない場合
- 当期首以前実行可能な最も古い日から将来にわたり新たな会計方針を適用
注記事項
会計方針の変更について、原則的な注記内容の例をいくつか示します。
<注記-会計基準等の改正に伴う変更の場合の例>
- (1)会計基準の名称
- (2)会計方針の変更の内容
- (3)経過的な取扱いに従って会計方針を行った場合、その旨及び当該経過的な取扱いの概要
- (4)経過的な取扱いが将来に影響を及ぼす可能性がある場合、その旨及び将来への影響
- (5)その他
<注記-その他の理由による変更の場合の例>
- (1)会計方針の変更の内容
- (2)会計方針の変更を行った正当な理由
- (3)過去の期間について、影響を受ける主な表示科目及び1株当たり情報に対する影響額
- (4)その他
会計基準
※2022年7月15日現在。リンク先の会計基準等は最新版でない場合があります。
・会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(企業会計基準第24号)
・会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第24号)
・財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
・企業会計原則(昭和57年4月20日 大蔵省企業会計審議会)