全面時価評価法と部分時価評価法とは|違いと現行の連結会計基準

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記事公開日:2022年6月10日

連結会計を考える際の理論用語として、「全面時価評価法」と「部分時価評価法」があります。

本記事では、これらの用語の概要、両者の違いと現行の会計基準上の取り扱いについて解説します。

全面時価評価法と部分時価評価法とは|概要、両者の違いと現行の連結会計基準上の取り扱いについて解説

目次

全面時価評価法とは

全面時価評価法とは、連結財務諸表の作成にあたって、支配獲得日において、資産及び負債の全てを支配獲得日の時価により評価する方法をいいます。

部分時価評価法とは

部分時価評価法とは、連結財務諸表の作成にあたって、株式の取得日ごとに、資産及び負債を当該日の時価により評価し、個別貸借対照表上の金額との差額のうち、投資会社の持分に対応する部分の金額のみを計上する方法をいいます。

連結会計

どちらの用語も連結財務諸表の作成上の評価差額の計上に関する理論(考え方)になります。

両者の違い

次の通り。

1.「連結」の考え方

全面時価評価法では、連結を、「親会社による非支配株主からの支配権の取得の結果」と考えます。そして、一旦取得した支配権については、時価の変動による再評価は必要ない、という見方に基づいています。

これに対して、部分時価評価法では、連結を、「親会社による非支配株主からの株式の取得の結果」と考えます。そして、株式の取得価額は、その時点における子会社の資産及び負債の時価を反映して決定されているはずである、という見方に基づきます。

2.どの時点の時価で評価するか

以上の考え方・見方から、全面時価評価法では、資産及び負債を「支配獲得日の時価」で評価しますが、部分時価評価法では、「取得日ごとに当該日の時価」で評価します。

3.計上範囲

全面時価評価法では、非支配株主持分も時価評価を行い、評価差額として計上します。これに対して、部分時価評価法では、投資会社(親会社)の持分のみを計上し、非支配株主持分については評価差額を計上しません。

この計上範囲の違いから「全面」「部分」という言葉が用語に含まれます。

これまでの変遷と現行の会計基準上の取り扱い

平成9年「連結財務諸表原則」以前は、部分時価評価法と同様の方法が採用されていました。

しかし、日本企業の多角化・国際化、海外投資家の日本証券市場への参入といった環境変化に伴い、連結情報のニーズが高まるとともに、日本の連結情報に係るディスクロージャーの現状について問題点が指摘されてきました。

このような国際的な動向を考慮した結果、平成9年に「連結財務諸表制度の見直しに関する意見書」を公表。部分時価評価法と全面時価評価法が併せて認められることになりました。

その後、部分時価評価法を採用する会社が少ないこと、及び「企業結合会計基準(平成15年公表)」にて、現金以外の対価による取得が、全面時価評価法を前提としていることと整合性を図る、という観点から、現在の連結会計の会計基準である「連結財務諸表に関する会計基準」では、全面時価評価法のみを採用しています。

ただし、持分法を適用する関連会社については、原則として部分時価評価法によることとしています。

会計基準

※2022年6月10日現在。リンク先の会計基準等は最新版でない場合があります。

連結財務諸表に関する会計基準(企業会計基準第22号)
連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針(会計制度委員会報告第7号)
・連結財務諸表原則(企業会計審議会)
・連結財務諸表制度の見直しに関する意見書(企業会計審議会)
持分法に関する会計基準(企業会計基準第16号)
持分法会計に係る実務指針(会計制度委員会報告第9号)

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著者情報

須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。1人で「PDCA会計」を企画・開発・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

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