持分法と連結仕訳|概要、会計処理、表示を併せて解説
記事最終更新日:2022年10月5日
記事公開日:2022年6月19日
連結子会社の会計処理を知っていても、持分法を苦手としている人はたくさんいます。
本記事では、持分法について連結財務諸表上の仕訳を、概要や会計処理・基準、表示と併せて解説します。
持分法とは
持分法とは、投資会社が被投資会社の資本及び損益のうち、投資会社に帰属する部分の変動に応じて、その投資の額を連結決算日ごとに修正する方法をいいます。
適用範囲と判定
連結財務諸表を作成する場合において、非連結子会社及び関連会社に対して持分法を適用します。
ただし、連結財務諸表を作成していないが関連会社がある場合には、個別財務諸表において持分法を適用し、関連会社に対する注記を行います(財務諸表等規則)。
基本事項
次の通り。
1.関連会社の判定
「出資、人事、資金、技術、取引等の関係を通じて、子会社以外の他の企業の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができるかどうか」という考え(影響力基準)によって、関連会社かどうかを判定します。
具体的には、「議決権の20%以上を有する会社」、又は「15%以上20%未満の議決権を有する場合で、かつ経営、融資、技術提供などにおいて重要な影響を与えるような要件を満たしている場合」など、会計基準に具体的な定めがあります。
2.決算日
持分法適用会社の決算日が連結決算日と異なる場合、持分法適用会社の直近の財務諸表を使用します。
ただし、投資会社と持分法適用会社の決算日に差異があり、その差異の期間内に重要な取引又は事業が発生しているときには、必要な修正又は注記を行います。
3.会計方針
同一環境下で行われた同一の性質の取引について、投資会社及び持分法を適用する被投資会社が採用する会計方針は、原則として統一します。
連結子会社と比較した場合の特徴
持分法の特徴は次の通り。
1.関連会社への投資成果
連結子会社の個別財務諸表は勘定科目ごとに合算して反映されます。
これに対して持分法では、投資の成果を「投資勘定(投資有価証券)」「持分法による投資損益」の2科目に集約して連結財務諸表に反映します。
2.反映する対象範囲
連結子会社では、親会社持分だけでなく、非支配株主持分が連結財務諸表に反映されるため、個別財務諸表上の資産・負債・純資産・収益・費用が全額反映されます(ただし資本連結、成果連結で連結上の修正を行います)。
これに対して持分法では、被投資会社の資本及び損益のうち、投資会社に帰属する部分のみが連結財務諸表に反映されます。
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3.評価差額の計上
連結子会社は全面時価評価法によって評価差額を計上しますが、持分法では部分時価評価法によって評価差額を計上します。
ただし持分法適用の非連結子会社は、連結子会社と同じく全面時価評価法によります。
4.のれん
連結子会社と同様、持分法においても、のれんを算定し20年以内に定額法その他合理的な方法によって償却します。
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5.持分法による投資損益
持分法における投資の成果は「持分法による投資損益」に集約して連結損益計算書上に表します。
6.未実現損益の消去
持分法においても、連結子会社と同じく、未実現損益を消去するための修正を行います。
ただし、関連会社の場合には、未実現損益の金額のうち投資会社の持分相当額のみを消去します(非連結子会社は連結子会社と同様、全額を消去)。
7.取得関連費用
連結子会社の場合には、取得関連費用は発生時の費用として計上しましたが、持分法では、個別財務諸表と同じく取得原価に含めます。
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会計処理
基本事項を解説します。
1.投資日
持分法適用会社の株式を取得した場合には、のれんを計算します。
のれんの計算や、当期純利益など、投資成果を把握するため、連結子会社と同様、タイムテーブルを作成すると正確に情報把握できます。
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2.当期純利益の計上
投資後に発生した持分法適用会社の当期純利益のうち、投資会社の持分相当額を「持分法による投資損益」として連結損益計算書に計上します。
3.受取配当金
受取配当金の額を投資勘定から減額します。
4.追加取得・一部売却
資本のうち、追加取得に対応した持分と、追加投資額との差額は、のれんとして処理します。この点、連結子会社では資本剰余金として処理していた場合と対照的です。
一部売却の場合には、資本のうち売却した株式に対応する持分の減少額と、投資の減少額との差額は、持分法適用会社の株式の売却損益の修正として処理します。
5.関連会社に該当しなくなった場合
株式の売却によって関連会社に該当しなくなった場合には、残存する当該会社の株式は、個別貸借対照表上の帳簿価額で評価します。
会計基準
※2022年10月5日現在。リンク先の会計基準等は最新版でない場合があります。
・持分法に関する会計基準(企業会計基準第16号)
・持分法に関する実務指針(会計制度委員会報告第9号)
・連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針(企業会計基準適用指針第22号)
・連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則
・財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
連結仕訳
基本取引の仕訳を示します。
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
投資日 | 仕訳なし ※ | |||
当期純利益の計上 | 投資勘定 | ××× | 持分法による投資損益 | ××× |
のれん償却 | 持分法による投資損益 | ××× | 投資勘定 | ××× |
配当の受取 | 受取配当金 | ××× | 投資勘定 | ××× |
※のれんの金額を算定
表示
関連会社株式、非連結子会社の株式は、連結貸借対照表上、「投資有価証券」として表示します。ただし、それぞれの内訳金額を注記しなければなりません。
「持分法による投資損益」は、連結損益計算書上、営業外費用又は営業外損益の区分に表示します。
仕訳例
- 前年度にA社株式の20%を取得して持分法適用会社(関連会社)とした。A社の当期純利益は100である。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
A社株式 | 20 | 持分法による投資損益 | 20 |