9-1 有形固定資産の基本
有形固定資産とは
有形固定資産(ゆうけいこていしさん)とは、長期間保有して使用するような資産(= 「固定資産」といいます)のうち、有形、すなわち形が目に見える固定資産のことをいいます。
具体的には、「建物」「備品」「車両運搬具」「土地」などが有形固定資産に該当します。
有形固定資産の取得
モノやサービスを購入する(= 「取得する」と置き換えて差し支えありません)ためにかかるお金を「取得原価(しゅとくげんか)」といいます。
有形固定資産を取得した場合には、まずは取得原価を計算します。
取得原価の計算
有形固定資産の取得原価には、有形固定資産自体の買入価額(かいいれかがく。購入代価。こうにゅうだいか、とも)以外にも運賃(= 「送料」と考えて差し支えありません)や仲介手数料など、有形固定資産を取得してから、使用するまでにかかったお金も含めます。
この運賃や仲介手数料のことを「付随費用(ふずいひよう)」といいます。
例えば、インターネットショッピングで棚(備品)を3万円で購入した場合には、自宅に届くまでの運賃2千円がかかるとします。
すると、棚自体の買入価額は3万円ですが実際に棚を使用するには自宅まで棚が届かないといけません。
従って、「買入価額30,000円 + 付随費用(運賃)2,000円 = 32,000円」がこの棚の取得原価です。
資本的支出と修繕
有形固定資産を取得した後に、その有形固定資産について追加の支出を行った場合について、2つのケースに分けて考えます。
(1)資本的支出
1つ目のケースは、建物の改築や増築といったように、その有形固定資産の価値を増加させたり、または使用年数( = 「耐用年数(たいようねんすう)」といいます)が延びるなどの効果があるケースです。
これを「資本的支出(しほんてきししゅつ)」といい、支出額をその有形固定資産の取得原価に加えます。
(2)修繕
2つ目のケースは、建物の修理など、その有形固定資産の価値や耐用年数を維持する効果があるケースです。
資本的支出のように、価値の増加や耐用年数の延長といった効果はありません。
これを「修繕(しゅうぜん)」または「収益的支出(しゅうえきてきししゅつ)」といい、支出額は修繕費(費用)として処理します。
有形固定資産の取得と修繕費・資本的支出の仕訳
有形固定資産を取得した場合や資本的支出の場合には、借方に「建物」「備品」「車両運搬具」「土地」など(全て資産に属する勘定科目)、その有形固定資産を表す勘定科目を記入するとともに、貸方には現金預金や未払金など、支出を表す勘定科目を記入します。
上述の通り、取得した場合には取得原価で金額を記入します。取得原価には、運賃などの付随費用を含めます。
次に修繕(収益的支出)の場合には、借方に「修繕費(費用に属する勘定科目)」で仕訳します。貸方には支出を表す勘定科目を記入します。
| 取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 取得 | 建物、備品など | ××× | 現金預金、未払金など | ××× |
| 資本的支出 | 建物、備品など | ××× | 現金預金、未払金など | ××× |
| 修繕 | 修繕費 | ××× | 現金預金、未払金など | ××× |

仕訳問題
- 1.A社はB社より建物1千万円を購入した。仲介手数料50万円と合わせて当座預金より代金を支払った。
- 2.A社はC社より机30万円を購入した。代金は来月末に支払うこととし、運賃5,000円は現金で支払った。
- 3.A社はD社より自動車200万円を購入した。登録手数料5万円とともに、小切手を振り出してD社に渡した。
- 4.A社が保有する建物について改築を行い、その支出額3百万円は普通預金より支払った。この改装は建物の価値を高めることが確認された。
- 5.A社が保有するPCが破損し、修理代金2万円を現金で支払った。このPCは備品に計上されている。
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 建物 | 10,500,000 | 当座預金 | 10,500,000 |
| 2 | 備品 | 305,000 | 未払金 | 300,000 |
| 現金 | 5,000 | |||
| 3 | 車両運搬具 | 2,050,000 | 当座預金 | 2,050,000 |
| 4 | 建物 | 3,000,000 | 普通預金 | 3,000,000 |
| 5 | 修繕費 | 20,000 | 現金 | 20,000 |
