会計入門 費用収益対応の原則とは|売上原価計上との関係など分かりやすく解説

更新日:2020年3月7日
作成日:2012年5月20日

前回、「会計入門その22~売上高と実現主義(出荷、納品、検収基準)」では、売上高と実現主義について解説しました。

今回は、費用収益対応の原則とは何かについて、売上原価計上との関係や発生主義などの関連ワードも含めて解説します。

費用収益対応の原則とは

費用収益対応の原則(ひようしゅうえきたいおうのげんそく)とは、損益計算書には収益(ここでは売上高)に対応する費用(ここでは売上原価)を計上する、という会計上の一般ルールのことをいいます。

費用収益対応の原則は、日本の根本的な会計基準である「企業会計原則(きぎょうかいけいげんそく)」に次の通り、記載されています。

(引用)企業会計原則 第二 損益計算書原則 一 損益計算書の本質
(本文)
 「損益計算書は、企業の経営成績を明らかにするため、一会計期間に属するすべての収益とこれに対応するすべての費用とを記載して経常利益を表示し、これに特別損益に属する項目を加減して当期純利益を表示しなければならない。」

(C 費用収益対応の原則)
 「費用及び収益は、その発生源泉に従って明瞭に分類し、各収益項目とそれに関連する費用項目とを損益計算書に対応表示しなければならない。」

例えば、ズボンを1本3,000円で、合計10本販売したとします。

ズボンを作るのにかかった原価は1本あたり2,000円とします。

すると、販売した時に売上高を3,000円×10本=30,000円、計上すると同時に、売上原価を2,000円×10本=20,000円、計上します。

このように「収益(ここでは売上高)に対応(貢献)する費用(ここでは売上原価)を計上する」というルールが費用収益対応の原則です。

以下、費用収益対応の原則の詳細解説です。

費用収益対応の原則を理解するには、他に発生主義や売上原価について知っておく必要がありますので、説明します。

次に発生主義と費用収益対応の原則との関係について解説します。

発生主義とは

発生主義(はっせいしゅぎ)とは、モノやサービスの受け取りや消費した時に収益や費用を計上する認識の考え方をいいます。

会計を考える際には、売上の認識基準は実現主義、費用の認識基準は発生主義が基本的な考えとして学習します。

発生主義の具体例として、例えば、パソコンや文房具といったモノは購入しただけでは費用になりません。使用しはじめた時点で費用になります。

また水道光熱費や家賃といったサービスは、未払い前払いの状態であっても、水道や電気を使用したり、アパートやマンションを借りて使用開始した時点で費用になります。

売上原価とは

売上原価(うりあげげんか)とは費用の表示科目の1つであり、モノやサービスを作るのにかかったお金や、販売するモノやサービスを仕入れたときにかかったお金をいいます。

前者はメーカー、後者はデパートや商社などが代表的な業種です。

例として、衣服メーカーの売上原価を具体的に説明します。

材料費

まずズボンを作るのに材料が必要です。布地や糸などが必要です。

従って、ズボンの製造にかかった布地や糸などは売上原価になります。

人件費

ズボンを作るためには製造工場で、布地を糸で縫う人が必要です。

この人たちに支払う給料(賃金)はズボンを作るために必要なお金であるため、売上原価になります。

製造間接費

工場や機械装置を借りているとすれば、これらの家賃(賃借料)が売上原価になります。

工場や機械装置を購入している場合には減価償却費が売上原価です。

減価償却費とは、これまでに説明した減価償却によって算定された金額をいいます。

他にも、工場で使用された電気料金や水道料金、ガス代、生地を裁断するハサミ、生地を糸で縫うときの針やミシンといったものも売上原価に含まれます。

売上原価の認識と計上

資産が売上原価として費用に計上されるタイミング、すなわち売上原価の認識(にんしき)と計上について説明します。

売上原価も費用であるため、発生主義に基づいて計上しますが、若干異なる部分があります。

上の例で説明したような製品を作るためにかかるモノ・サービスは、製品の製造開発から完成に至る過程で「原材料及び貯蔵品⇒仕掛品⇒商品及び製品」と加工されます。

これらを総称して「棚卸資産」ということを、棚卸資産の回で解説しました。

そして、これまでに資産とは何かについて次の通り、説明してきました。

資産(しさん):お金がどれだけあり、また、将来、現金として入金されそうなお金や提供を受けるモノやサービス(権利)がどれだけあるのか。

資産の説明に照らし合わせると、棚卸資産が資産として計上されるのは、「将来、モノやサービスとして販売される結果、お金が入ってくるから」ということになります。

「将来、モノやサービスとして販売される結果、お金が入ってくるから資産である」ということは、言い換えれば、販売された時点で、棚卸資産は資産には該当しなくなるということを意味します。

従って、販売した時点で、棚卸資産は販売したズボンの本数だけ減少して売上原価になり、損益計算書上に計上します。

発生主義と費用収益対応の原則との関係

発生主義について記載しましたが、次のように考えた方もいるかもしれません。

「モノやサービスを消費した時に費用計上するという発生主義に基づいて考えれば、販売まで待たなくても、ズボンを作るのに生地や糸を消費したり、工場で作業員が糸で生地を縫ったり、電気や水道を使用した時に、そのお金は費用になるのではないでしょうか?」

確かにその通りです。

ただし、売上原価は、発生主義だけではなく「費用収益対応の原則」も考える必要があり、両方を満たして初めて売上原価は費用(売上原価)に計上します。

「棚卸資産が費用収益対応の原則を満たすのはどの時点か」は、売上・利益に貢献する時点、すなわち「販売して現金や現金同等物を入手した時点」です。

すなわち、ズボンを作るという製造段階で消費した上記の棚卸資産は、未だ売上・利益に貢献するまでは「原材料及び貯蔵品⇒仕掛品⇒商品及び製品」と資産の名称が変わるだけであり、資産のままなのです。

この点は、資産の定義に当てはめてみると理解できるかと思います。

以上から、費用収益対応の原則は、モノやサービスが販売される時点まで費用計上を後ろに遅らせるという効果があると言われることがあります(従来から存在する会計学の考え)。

売上原価と比較して、販売費及び一般管理費営業外費用といった売上原価以外の区分に計上する科目の場合は、売上と1対1で費用を把握することは困難であるため、当期に発生した費用を当期の売上と対応させて損益計算書に計上します。

以上から、売上原価の費用収益対応の原則を適用した対応を「個別的対応(こべつてきたいおう。直接的対応とも)」、販売費及び一般管理費など売上原価以外の費用の対応を「期間的対応(きかんてきたいおう。間接的対応とも)」といいます。

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