未着品とは|仕訳方法と使い方を解説(上級向け)

倉庫の商品在庫

執筆日:2023年8月21日

「未着品」は、特殊商品売買の1つです。「三分法(都度法・期末一括法)」だけでなく、「分記法」「総記法」による仕訳方法も存在します。

本記事では、「未着品」の仕訳方法について、使い方(一般商品売買との違い)や財務諸表上の取り扱いにも言及しながら解説します。

未着品の仕訳一覧(まとめ)

はじめに仕訳の一覧を示します。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
貨物代表証券の受取り未着品xxx買掛金などxxx
商品の引取り仕入xxx未着品xxx
現金などxxx
未着品販売売掛金などxxx未着品売上xxx
仕入xxx未着品xxx
決算整理仕訳仕入xxx未着品xxx
未着品xxx仕入xxx
※「xxx」は、2行とも「期末未着品残高」の金額

未着品とは

未着品」とは、商品の権利を章表する貨物代表証券をいいます。

貨物代表証券」とは、商品売買の際に、商品輸送に日数を要する場合や、商品自体は輸送せずに倉庫に保管したままの状態にしておく場合に、発行する証券をいい、「貨物引換証」「船荷証券」「倉荷証券」といった種類があります。

未着品売買の特徴(一般商品との違い)

貨物代表証券を所有する者は商品の権利も有することになることから、商品自体は手許に届いていない状態(つまり未着)であったとしても、貨物代表証券を受け取った時点で、会計上は「商品」と同様に取り扱います。

ただし、一般商品とは異なり、手許にあるのは「商品自体」ではなく「貨物代表証券」であることから、会計記帳上は、「商品」ではなく、「未着品」という独自の勘定科目で仕訳します。

活動別の仕訳方法(三分法-都度法)

未着品の仕訳方法には、「三分法(都度法)」「三分法(期末一括法)」「分記法」「総記法」があります。

本記事では、「三分法(都度法)」を中心に、一般商品の「三分法」との違いにも言及しながら「未着品」の仕訳方法を解説し、「三分法(期末一括法)」「分記法」「総記法」については、「三分法(都度法)」との違いや、ポイントに絞って解説します。

貨物代表証券の受取りと仕訳

貨物代表証券を受け取った場合には、商品仕入ではなく未着品として記帳するため、「未着品(資産に属する勘定科目)」を借方に記入し、貸方には「買掛金」など支払手段を表す勘定科目を記入します。

(一般商品の「三分法」との比較1)「仕入」勘定の使用有無

一般商品の「三分法」では、商品の受取り時には「仕入」で仕訳し、期末商品帳簿額については決算時に「繰越商品」に振り替えますが、未着品の「三分法」の場合には、「未着品仕入」といった勘定科目は使用せず、「未着品」で仕訳します(一般商品の「三分法」との違い)。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
貨物代表証券の受取り未着品xxx買掛金などxxx

商品の引取りと仕訳

貨物代表証券が章表する商品自体を引き取った場合には、この時点で「未着品」から「一般商品」になります。

従って、仕訳も一般商品の三分法で記帳するために、「未着品」を貸方に記入して減少させるとともに、「仕入」を借方に記入します。

「運賃」「手数料」といった「引取費用(外部付随費用の一部)」が発生した場合には、「仕入」に含めて仕訳します(貸方は「現金」などの支払手段を記入)。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
商品の引取り仕入xxx未着品xxx
現金などxxx

未着品販売と仕訳

商品を引き取らず、貨物代表証券を得意先に渡すことで、未着品を販売することもできます。

未着品の売上として「未着品売上(収益に属する勘定科目)」を貸方に記入するとともに、「売掛金」などの回収手段を借方に記入します。

三分法(都度法)の特徴(売上原価の計上)

「三分法(都度法)」の仕訳では、未着品販売の都度、売上原価の仕訳も記帳します。

貨物代表証券を引き渡した後の取引は、得意先からの売掛金等の代金回収であり、一般商品と変わらないことから、売上原価の仕訳も一般商品の仕訳と同じになるように記帳します。

具体的には、借方に「仕入」を記入して一般商品の仕入の発生を記録するとともに、未着品の減少として、貸方に「未着品」を記入します。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
未着品販売売掛金などxxx未着品売上xxx
仕入xxx未着品xxx

(補足)上記仕訳が売上原価の計上になる理由

上記仕訳の結果、仕入(つまり当期商品仕入高)が増加する一方で、「未着品」は減少することから、当該未着品は期末未着品(期末商品)にはなることがありません(つまり未着品の期末商品棚卸高はゼロ)。

「一般商品の売上原価」は、「売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 - 期末商品棚卸高」で計算することから、上記の仕訳を記帳することで売上原価の計上になります。

(一般商品の「三分法」との比較2)売上原価計上のタイミング

未着品(三分法-都度法)によれば、未着品販売の都度、売上原価を記帳します。

これに対して、一般商品の三分法では、期末時に一括して「仕入 xxx/繰越商品 xxx」「繰越商品 xxx/仕入 xxx」の決算整理仕訳を記帳することで売上原価を集計します。

決算整理仕訳

上述の通り、「三分法(都度法)」では、売上原価を販売時に記帳していることから、期末時点において一般商品のような仕訳は本来必要としません。

しかし、期末商品残高を備忘録的に記録するため、次の仕訳を記帳します。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
決算整理仕訳仕入xxx未着品xxx
未着品xxx仕入xxx
※「xxx」は、2行とも「期末未着品残高」の金額

三分法(期末一括法)の場合

都度法との違いは、「未着品の売上原価の記帳タイミング」であり、その他の仕訳方法は都度法と同じです。

「都度法」では未着品販売の都度、売上原価を記帳しますが、「期末一括法」においては、決算整理仕訳で売上原価を記帳します。

仕訳は次の通り。仕訳の型は、都度法の決算整理仕訳と同じですが、1行目の仕訳の金額は、「前T/B未着品残高(未着品期首残高 + 貨物代表証券受取り額 - 商品引取り額)」です(一般商品の「期首商品 + 当期商品仕入高」に該当する金額)。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
決算整理仕訳仕入xxx(※1)未着品xxx(※1)
未着品xxx(※2)仕入xxx(※2)
※1「前T/B未着品残高(未着品期首残高 + 貨物代表証券受取り額 - 商品引取り額)」。一般商品の「期首商品 + 当期商品仕入高」に該当する金額
※2「期末未着品残高」の金額

分記法・総記法の場合

一般商品の分記法で使用する勘定科目のうち、「商品」は「未着品」、「商品販売益」は「未着品販売益」に替えて仕訳します。

※分記法と総記法の仕訳方法は、下記の記事で解説。

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著者情報

須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。1人で「PDCA会計」を企画・開発・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

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