新株予約権付社債の仕訳方法|区分法と一括法
記事最終更新日:2022年10月5日
記事公開日:2022年7月7日
新株予約権付社債の仕訳方法は難しいと思われがちですが、知っていればそうでもありません。出題可能性が低く実務でも登場しないイメージが強いため、学習が後回しになることから難しい印象につながっています(記事やテキストで見かけないことも一因)。
本記事では、新株予約権付社債の仕訳方法について区分法と一括法の違いも含めて解説します。
新株予約権付社債の仕訳方法|区分法と一括法の違いも併せて解説
目次
新株予約権付社債とは
新株予約権付社債とは、新株予約権を付した社債をいいます(会社法2条22号)。「金融商品に関する会計基準」では、複合商品の1つとして定められています。
複合金融商品
「複合金融商品」とは、複数種類の金融資産又は金融負債が組み合わされているものをいいます。
新株予約権付社債は、「新株予約権」と「社債」が組み合わさっているので複合金融商品です。
種類(転換社債型とそれ以外)
会計処理の違いから、「転換社債型新株予約権付社債(以下、転換型)」と「それ以外の新株予約権付社債(以下、それ以外)」とに分類します。
「転換型」とは、社債の消滅と引き換えに(社債を払込額として充当して)新株の交付を受けるタイプのものをいいます。
区分法と一括法
会計処理の方法には「区分法」と「一括法」があります。
区分法
新株予約権付社債の発行に伴う払込金額を、「社債の対価部分」と「新株予約権の対価部分」に区分します。そして社債の対価部分は普通社債の発行に準じて処理し、新株予約権の対価部分は新株予約権の発行者側の会計処理に準じて処理する方法をいいます。
新株予約権の行使時には、「転換型」では社債及び新株予約権の対価部分(帳簿価額)のそれぞれを、資本金(及び資本準備金)に振り替えます。
「それ以外」では新株予約権の対価部分及び払込金を資本金(及び資本準備金)に振り替えて処理します。ただし「代用払込(社債を出資に代用)」の場合には、「転換型」と同様に社債部分を払い込みに充当して処理します。
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一括法
新株予約権付社債の発行に伴う払込金額を、社債の対価部分と新株予約権の対価部分に区分せず、普通社債の発行に準じて処理する方法をいいます。
新株予約権の行使時には、当該帳簿価額を、資本金(及び資本準備金)に振り替えます。
会計処理
「発行者側」と「取得者側」とに分けて解説します。
新株予約権の会計処理は下記の記事も併せて参照。
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発行者側の会計処理
「転換型」は社債と新株予約権が単独で存在し得ず、かつ、新株予約権の権利行使時には社債がそのまま出資になることから、「一括法」によって処理します。ただし、「区分法」による処理も認められています。
これに対して「それ以外」の場合には、払込資本を増加させる可能性のある部分(新株予約権)と、それ以外の部分(社債)とが同時に存在し得ることから、「区分法」によって処理します。
<発行者側の会計処理>
- ・転換型:「一括法」又は「区分法」
- ・それ以外:「区分法」
取得者側の会計処理
「転換型」の場合には、一括法によって社債に準じて処理します。区分法は認められません。
「それ以外」の場合には、区分法によって、社債の対価部分は普通社債の取得に準じて、新株予約権の対価部分は有価証券の取得として、それぞれ処理します。
<取得者側の会計処理>
- ・転換型:「一括法」
- ・それ以外:「区分法」
会計基準
※2022年10月5日現在。リンク先の会計基準等は最新版でない場合があります。
・金融商品に関する会計処理(企業会計基準第10号)
・払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理(企業会計基準適用指針第17号)
・会社法(平成十七年法律第八十六号)
転換型新株予約権付社債の仕訳処理
<発行者側-「一括法」>
「新株予約権付社債勘定(負債に属する勘定科目)」を使用した場合を示します。
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
発行 | 現金預金 | ××× | 新株予約権付社債 | ××× |
権利行使 | 新株予約権付社債 | ××× | 資本金 | ××× |
資本準備金 | ××× |
※権利行使しない場合は一般の社債に準じて処理
<発行者側-区分法>
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
発行 | 現金預金 | ××× | 社債 | ××× |
新株予約権 | ××× | |||
権利行使 | 社債 | ××× | 資本金 | ××× |
新株予約権 | ××× | 資本準備金 | ××× |
<取得者側-「一括法」>
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
取得 | その他有価証券 ※ | ××× | 現金預金 | ××× |
※保有目的に応じて処理
それ以外の新株予約権付社債の仕訳処理
<発行者側-「区分法」>
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
発行 | 現金預金 | ××× | 社債 | ××× |
新株予約権 | ××× | |||
権利行使 | 現金預金 | ××× | 資本金 | ××× |
新株予約権 | ××× | 資本準備金 | ××× | |
権利行使(代用払込) | 社債 | ××× | 資本金 | ××× |
新株予約権 | ××× | 資本準備金 | ××× |
※社債部分は一般の社債に準じて処理
<取得者側-「区分法」>
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
取得 | 満期保有目的債券 ※ | ××× | 現金預金 | ××× |
その他有価証券 ※ | ××× |
※保有目的に応じて処理
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仕訳例
- 転換型新株予約権付社債100を発行し当座預金に全額払い込みがあった。一括法で処理する。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
当座預金 | 100 | 新株予約権付社債 | 100 |