5-5 仮払金と仮受金
仮払金とは
仮払金(かりばらいきん)とは、支払いの段階では確定した金額や使用目的が分からず、後にこれらが確定するような性質の支払いをいいます。
例えば従業員が出張する際の旅費交通費の概算払いが仮払金に該当します。
概算払いと精算
出張に要する交通費や宿泊費などが、出張前には確定していない場合、会社はこの従業員に対して「概算(がいさん。「大体」という意味)」の金額を渡します。
その後、出張から帰ってきた従業員は交通費や宿泊の明細を書類にして会計・経理に提出します。
この時に金額が確定するので、概算で支払った金額との差額を従業員から返還を受けます(確定金額の方が概算で支払った金額より大きい場合には、差額を従業員に支払う)。
これを「精算(せいさん)」といいます。
仮払金の仕訳
仮払金が増減する取引は、「仮払金(資産に属する勘定科目)」で仕訳します。
確定した金額や取引先が分からないような金銭の支払いを行った時には、「仮払金」を借方に記入します。 そして、後に金額や取引先が確定した時に、「仮払金」を貸方に記入して、精算の仕訳を記帳します。
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
仮払いの発生 | 仮払金 | ××× | 現金預金など | ××× |
金額・取引先の確定 (仮払金 > 確定額) | 旅費交通費など適切な勘定科目 | ××× | 仮払金 | ××× |
現金預金など | ××× | |||
金額・取引先の確定 (仮払金 < 確定額) | 旅費交通費など適切な勘定科目 | ××× | 仮払金 | ××× |
現金預金など | ××× |
仮受金とは
仮受金(かりうけきん)とは、金額が確定していない場合や取引先が分からない金銭の受け取りをいいます。
仮受金の仕訳
仮受金が増減する取引には、「仮受金(負債に属する勘定科目)」で仕訳します。
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
仮受金の受け取り | 現金預金など | ××× | 仮受金 | ××× |
金額・取引先の確定 | 仮受金 | ××× | 取引に応じた 勘定科目 | ××× |
仕訳問題
- 1.A社は備品を購入し、概算額20万円を普通預金から支払った。
- 2.上記1.の備品の金額が確定し、概算払いの20万円と一致したため、仮払金から備品に振り替えた。
- 3.A社は従業員甲の出張に際して、概算額10万円を現金で渡した。
- 4.上記3.の甲が出張から戻ってきた。精算の結果、旅費交通費の確定額は8万5千であった。残額は甲より現金で受け取った。
- 5.A社は取引が不明の金額5万円が普通預金に振り込まれていることを発見した。
- 6.上記5.の金額はB社からの売掛金の回収額であることが判明した。
No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
1 | 仮払金 | 200,000 | 普通預金 | 200,000 |
2 | 備品 | 200,000 | 仮払金 | 200,000 |
3 | 仮払金 | 100,000 | 現金 | 100,000 |
4 | 旅費交通費 | 85,000 | 仮払金 | 100,000 |
現金 | 15,000 | |||
5 | 普通預金 | 50,000 | 仮受金 | 50,000 |
6 | 仮受金 | 50,000 | 売掛金 | 50,000 |
(解説)
1と2.備品を購入しましたが1.の時点では金額が確定していないため、仮払金で仕訳します。
その後、2.で金額が確定しましたため、仮払金を備品に振り替えます。本問では確定金額は概算金額と同じ20万円のため、差額の仕訳は必要ありません。