5-4 立替金と預り金
立替金とは
立替金(たてかえきん)とは、取引先や従業員の代わりに会社が一時的に支払いを立て替えた場合に発生する、取引先や従業員に対する債権をいいます。
取引先や従業員に代わって支払いを立て替えているので、将来的には取引先や従業員から同額の金銭を受け取ります。
従業員に対する立替金は通常の立替金とは区別して、「従業員立替金」といいます。
立替金の仕訳
立替金が増減する取引には、「立替金(資産に属する勘定科目)」で仕訳します。
また、従業員に対する立替金の増減取引の場合には、「従業員立替金(資産に属する勘定科目)」で仕訳します。
| 出来事 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 取引先の場合 | 立替払いの発生 | 立替金 | ××× | 現金預金など | ××× |
| 立替金の受け取り | 現金預金など | ××× | 立替金 | ××× | |
| 従業員の場合 | 立替払いの発生 | 従業員立替金 | ××× | 現金預金など | ××× |
| 立替金の受け取り | 現金預金など | ××× | 従業員立替金 | ××× | |

預り金とは
預り金(あずかりきん)とは、取引先や従業員の金銭を会社が一時的に金銭を預かった場合に発生する、取引先や従業員に対する債務をいいます。
預り金は、例えば取引先や従業員から預かった(源泉)所得税や社会保険料などが挙げられます。
従業員からの預り金は、通常の預り金とは区別して、「従業員預り金」といいます。
特に従業員から預かった(源泉)所得税や社会保険料は、それぞれ「所得税預り金」「社会保険料預り金」といいます。
※(源泉)所得税と社会保険料は「10-2 給料・社会保険料・源泉所得税・法定福利費」で解説します。
預り金の仕訳
預り金が増減する取引には、「預り金(負債に属する勘定科目)」で仕訳します。
| 取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 金銭の預かり | 現金預金など | ××× | 預り金 | ××× |
| 預り金の支払い | 預り金 | ××× | 現金預金など | ××× |
従業員からの預り金は、「従業員預り金(負債に属する勘定科目)」で仕訳します。
従業員からの預り金が(源泉)所得税や社会保険料である場合には、それぞれ「所得税預り金(負債に属する勘定科目)」「社会保険料預り金(負債に属する勘定科目)」で仕訳します。
| 取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 通常の預かり | 金銭の預かり | 現金預金など | ××× | 従業員預り金 | ××× |
| 預り金の支払い | 従業員預り金 | ××× | 現金預金など | ××× | |
| 所得税の預かり | 金銭の預かり | 現金預金など | ××× | 所得税預り金 | ××× |
| 預り金の支払い | 所得税預り金 | ××× | 現金預金など | ××× | |
| 社会保険料の預かり | 金銭の預かり | 現金預金など | ××× | 社会保険料預り金 | ××× |
| 預り金の支払い | 社会保険料預り金 | ××× | 現金預金など | ××× | |

仕訳問題
- 1.A社はB社から商品30万円を仕入れ、代金は掛として来月支払うこととした。その際に要した運賃(B社負担)15,000円はA社が現金で立替払いした。
- 2.A社は従業員甲の食事代3,000円を現金で立て替え払いをした。
- 3.A社は上記1.と2.の立替払いした金銭をそれぞれB社と甲より現金で受け取った。
- 4.A社は従業員乙への給料25万円について、所得税1万円と社会保険料3万円を差し引いた金額を当座預金より支払った。
- 5.A社は上記4.の預り金をそれぞれ税務署などに当座預金より納付した。
| No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 仕入 | 300,000 | 買掛金 | 300,000 |
| 立替金 | 15,000 | 現金 | 15,000 | |
| 2 | 従業員立替金 | 3,000 | 現金 | 3,000 |
| 3 | 現金 | 18,000 | 立替金 | 15,000 |
| 従業員立替金 | 3,000 | |||
| 4 | 給料 | 250,000 | 当座預金 | 210,000 |
| 所得税預り金 | 10,000 | |||
| 社会保険料預り金 | 30,000 | |||
| 5 | 所得税預り金 | 10,000 | 当座預金 | 40,000 |
| 社会保険料預り金 | 30,000 |
(解説)
1.商品仕入の際の運賃などを「仕入諸掛り(しいれしょがかり)」といいます。本問では、仕入先のB社が負担する運賃を、立替払いしたため、「立替金」で仕訳しています(仕入諸掛りは「8-2 仕入諸掛りと発送費」
で解説します)。
4.給料は「10-2 給料・社会保険料・源泉所得税・法定福利費」で解説します。
