3-3 操業度

<出題可能性・重要度>★★★★★

次に、配賦と関連した用語として、「操業度」「変動費と固定費」「変動予算と固定予算」を解説します。ここでは、操業度とは何かについて解説します。

操業度とは

操業度(そうぎょうど)とは、年や月といった一定の期間に製品を製造するための、生産設備の利用度をいいます。

代表的な操業度は、「生産量」や「直接作業時間」、「機械稼働時間」です。

例えば、製品の製造が人中心であれば「直接作業時間」、オートメーション化していて機械が中心であれば「機械稼働時間」を操業度として設定します。

「配賦基準と同じではないの?」と思う方もいるかもしれませんが、異なる用語です。意味も異なります。この点、解説します。

<用語>操業度

  • ・操業度 = 年や月といった一定の期間に製品を製造するための生産設備の利用度

配賦基準との関係

操業度として設定するデータには、生産量や直接作業時間、機械稼働時間などが存在し、各製品や製造指図書(「第5章 個別原価計算」で解説)に配賦するための配賦基準となります。

2つの用語の関係を例示すると、直接作業時間や機械稼働時間を操業度として設定した時に、「何時間で設定するか」を決めるのが操業度です。操業度には、考え方によっていくつかの種類が存在し、設定した操業度の種類によって、直接作業時間や機械稼働時間の大きさが変わります。

これに対して、配賦は、操業度によって設定された直接作業時間や機械稼働時間を使って、製造間接費を部門や製品などに原価配分することをいいます。

次に、直接作業時間や機械稼働時間などの大きさを決める、「操業度の種類」を解説します。

操業度の種類

例で見た方が分かりやすいので、最初に例題を掲載し、次に用語を解説します。

「技術的に達成可能な最大操業度」とは、技術的に可能な範囲でフル稼働した場合の操業度をいいます。

予定操業度とは、1年間など短期的な一定の期間に予想される操業度をいいます。技術的に達成可能な最大操業度とは異なり、その期間における生産や販売事情を考慮して定めます。

正常操業度とは、比較的長期間の操業度の平均に将来の趨勢を加味して定めた操業度をいいます。

同じ年の同じ直接作業時間であっても、操業度の種類によって大きさが全然異なるので、原価配分である配賦計算にも大きく影響し、結果として、各製品の原価に影響します。

本試験では、操業度の種類や大きさを計算する問題は出題されません。問題文に予定操業度や正常操業度といった用語が出てきても、問題を理解できるようにしておきましょう。

<用語>操業度の種類

  • ・技術的に達成可能な最大操業度 = 技術的に可能な範囲でフル稼働した場合の操業度
  • ・予定操業度 = 1年間など短期的な一定の期間に予想される操業度。技術的に達成可能な最大操業度とは異なり、その期間における生産や販売事情を考慮して定る。
  • ・正常操業度 = 比較的長期間の操業度の平均に将来の趨勢を加味して定めた操業度

基準操業度

基準操業度とは、シュラッター図を用いた公式法によって変動費と固定費を分類する場合などにおいて、配賦の基準となる、予め設定した操業度をいいます。

通常は、予定操業度や正常操業度を基準操業度として設定します。技術的に達成可能な最大操業度は現実的ではないので、通常は設定しません。

<用語>基準操業度

  • ・基準操業度 = シュラッター図を用いた公式法によって変動費と固定費を分類する場合などにおいて、配賦の基準となる、予め設定した操業度

実際操業度

実際操業度とは、当月など一定の期間に稼働した実際の操業度をいいます。

<用語>実際操業度

  • ・実際操業度 = 当月など一定の期間に稼働した実際の操業度

基準操業度と合わせた本試験での問題掲載例は次の通り。

この例では、「実際操業度 = 4,300時間」です。なぜならば操業度は機械稼働時間であり、当月の機械稼働時間が4,300時間だからです。このように、「実際操業度」という用語が問題には掲載されなくても、実際操業度を問題文から探す必要があります(中には基準操業度の説明文と離れた場所に、実際操業度が掲載されているような問題もあります)。

基準操業度は年間予定機械稼働時間48,000時間ですが、月当たりに換算すると「48,000時間÷12ヶ月=4,000時間」です。実際操業度は4,300時間ですが、基準操業度はあくまでも予め設定した操業度であるため、実際稼働した結果である実際操業度とは差が生じます。

操業度とシュラッター図

操業度を学習しましたので、シュラッター図を描いていきます。ここでは、シュラッター図に予算の製造間接費(基準操業度)と実際の製造間接費(実際操業度)を追加します。

操業度について、問題文を一部追加修正します(太字部分)。

シュラッター図は、当月ベースで記載します。基準操業度である予定直接作業時間は年間のため、「48,000時間 ÷ 12ヶ月 = 4,000時間」にします。

シュラッター図

操業度

操業度を解説したため、問題と計算に「基準操業度」「実際操業度」の言葉を使用しています。

横軸(操業度)の位置関係

基準操業度=4,000時間、実際操業度=4,300時間であり、「実際操業度 > 基準操業度」ですが、必ず、実際操業度を左側、基準操業度を右側に描きます。グラフ上間違った描き方ですが、シュラッター図の目的である予算差異と操業度差異を求めるには、この方が都合がよいのです。

縦軸(製造間接費)の位置関係

実際操業度の線は「実際製造間接費」の金額、基準操業度の線は「基準操業度の製造間接費予算」の金額を表します。

シュラッター図の目的を果たすためには、「実際製造間接費の金額 > 基準操業度(予算)の製造間接費の金額」となるように、左側に位置する実際の方の線が長くなるように描きます。

そして、実際製造間接費の線の頂点から縦軸へ点線を描き、縦軸と点線の交点に「実際製造間接費1,720,000円」と書きます。

基準操業度(予算)の製造間接費の金額について

右側の基準操業度の線は、基準操業度(予算)の製造間接費の金額(1,440,000円)を表します。これは、年間製造間接費予算を1ヶ月当たりに換算した金額です。

年間製造間接費予算17,280,000円 ÷ 12ヶ月 = 1,440,000円

「予定配賦額1,548,000円ではないのですか?」という質問には、「違います」と回答します。

なぜならば、予定配賦額は実際操業度を使って計算したものだからです。

シュラッター図に、予定配賦額1,548,000円も書きますが、現時点では解説不足のため、ここでは書きません(ちなみに1,440,000円の方は一般的には書きません。もちろん理解のために書いても構いません)。

操業度の解説は以上です。次に「変動費」と「固定費」を解説します。

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