連結除外と仕訳|持分法など会計処理も含めて解説
記事最終更新日:2024年5月9日
記事公開日:2022年6月17日
資本連結の難しい論点として連結の除外手続きがあります。
本記事では、連結除外の仕訳について、持分法適用会社となった場合の処理や表示、会計基準にも言及して解説します。
連結除外とは
連結除外とは、子会社株式の売却による親会社の持分比率の減少などによって、当該子会社の支配が解消し、連結範囲の対象から外れることをいいます。
取引内容
例えば、80%保有の子会社株式を50%売却した結果、持分法適用会社(関連会社)になった場合が該当します。
70%売却した場合には、保有比率が10%になり持分法適用会社にも該当しなくなりますが、勿論、この場合も連結除外に該当します。
会計処理
留意事項を記載します。
0.開始仕訳の振り戻し
連結除外によって連結子会社から外れることから、支配獲得時を含む開始仕訳(投資と資本の相殺消去)を振り戻します。
1.子会社財務諸表項目の連結財務諸表からの消去
連結範囲から除外するため、連結決算の作成手続きで連結財務諸表項目として合算していた当該子会社の個別財務諸表のうち、除外対象となる項目を連結財務諸表から消去します。
「いつ連結除外したか」によって、消去する対象が異なります。例えば期首に連結除外した場合には全ての財務諸表項目が消去対象となります。一方で期末に連結除外した場合には、損益計算書は当期の成果として連結財務諸表に含める必要があるため除外の対象となりませんが、期末時点の財政状態を表す貸借対照表は連結貸借対照表から消去する必要があるため、当該子会社の貸借対照表は消去対象となります。
2.支配獲得後に増加した子会社の利益剰余金
当該利益剰余金は、連結財務諸表上、親会社の持分は「利益剰余金」、子会社の持分は「非支配株主持分」として表示していましたが、連結除外した時から連結財務諸表の対象にはなりません。
例えば期末に子会社株式を売却した結果、連結除外となった場合、子会社の当期純利益は連結損益計算書に反映します。また、連結株主資本等変動計算書においては、期首利益剰余金、及び当期変動額(当期純利益)に子会社の金額が含まれます。しかし、連結貸借対照表には、子会社から持分法適用会社になった場合には、投資成果として取得後の子会社利益剰余金のうち売却に対応しない部分(売却後持分)が利益剰余金に含まれて表示されますが、持分法適用会社にも該当しない場合には、当該利益剰余金は表示しません。
3.子会社売却損益
支配獲得後に増加した子会社の利益剰余金について、親会社持分として連結貸借対照表に計上された「利益剰余金」のうち、売却に対応した部分は、連結上の売却持分に含まれるため、個別財務諸表上の子会社売却損益の修正として連結修正仕訳を行います。
4.持分法適用会社(関連会社)になった場合
当該株式は「関連会社株式」として持分法を適用して資産評価します。すなわち、支配獲得後に増加した子会社利益剰余金について、投資会社持分の金額のうち、売却に対応しない部分は、投資成果として「関連会社株式」に加減して連結貸借対照表上、表示します。
5.持分法適用会社に該当しない場合(一般株式になった場合)
当該株式は「その他有価証券」など一般株式として原価法を適用して資産評価します。原価法で評価ということは、支配獲得後に増加した子会社利益剰余金について、投資会社持分の金額のうち、売却に対応しない部分を一般株式に含めて計上することはできません。
そこで、当該金額を連結株主資本等変動計算書上「連結除外による利益剰余金の減少」として処理します。この処理の結果、連結貸借対照表上、子会社の利益剰余金はオフバランスになります。
6.追加取得又は一部売却によって増減した資本剰余金
子会社が連結の範囲から除外された場合でも、当該資本剰余金は取り崩さず、これまで通り、連結貸借対照表に計上したままとします。
なぜならば、支配継続中の追加取得や一部売却の取引は、親会社と子会社の「非支配株主」との間の取引であり、当該取引から発生した資本剰余金は子会社に帰属する性質のものではないからです。
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7.その他
取得関連費用については、下記の記事を参照。
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連結仕訳
期末時にS社を連結の範囲から除外した場合を示します。
<連結除外-共通の仕訳>
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
開始仕訳 | 資本金 | ××× | S社株式 | ××× |
資本剰余金 | ××× | 非支配株主持分 | ××× | |
利益剰余金 | ××× | |||
評価差額 | ××× | |||
のれん | ××× | |||
当期純利益 | 非支配株主に帰属する当期純利益 | ××× | 非支配株主持分 | ××× |
のれん | のれん償却額 | ××× | のれん | ××× |
開始仕訳の振り戻し | S社株式 | ××× | 資本金 | ××× |
非支配株主持分 | ××× | 資本剰余金 | ××× | |
利益剰余金 | ××× | |||
評価差額 | ××× | |||
のれん | ××× |
<持分法適用会社になった場合>
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
B/S消去 | 負債 | ××× | 資産 | ××× |
資本金 | ××× | |||
資本剰余金 | ××× | |||
利益剰余金 | ××× | |||
持分法評価 | S社株式 | ××× | 利益剰余金 | ××× |
非支配株主持分 | ××× | |||
売却取引 | 子会社株式売却益 | ××× | S社株式 | ××× |
<一般株式になった場合>
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
B/S消去 | 負債 | ××× | 資産 | ××× |
資本金 | ××× | |||
資本剰余金 | ××× | |||
利益剰余金 | ××× | |||
持分法評価 ※1 | S社株式 | ××× | 利益剰余金 | ××× |
非支配株主持分 | ××× | |||
売却取引 | 子会社株式売却損益 | ××× | S社株式 | ××× |
除外-利益剰余金 ※2 | 利益剰余金-連結除外による減少 | ××× | S社株式 | ××× |
※1:一旦、持分法で評価する
※2:持分法でないため、投資成果を利益剰余金から減少させる
仕訳例
- 過年度に80%保有のS社株式を当期末に70%売却した。当期末のS社B/S 資本金1,000 資本剰余金300 利益剰余金500(うち、支配獲得後の増加200) 資産2,500 負債700
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
負債 | 700 | 資産 | 2,500 |
資本金 | 1,000 | ||
資本剰余金 | 300 | ||
利益剰余金 | 500 | ||
S社株式 | 160 | 利益剰余金 | 200 |
非支配株主持分 | 40 | ||
子会社株式売却損益 | 140 | S社株式 | 140 |
利益剰余金-連結除外による減少 | 20 | S社株式 | 20 |
表示
連結範囲の除外(子会社でも関連会社でもなくなった場合)において、支配獲得後に増加した利益剰余金のうち、売却に対応しない部分については、連結株主資本等変動計算書上、利益剰余金の「当期変動額」の内訳として、「連結除外に伴う利益剰余金減少高(又は増加高)」等、変動事由の名称を付して金額を表示します。
会計基準等
※2024年5月9日現在(公開草案を除く)。リンク先の会計基準等は最新版でない場合があります。
・連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針(会計制度委員会報告第7号)
・「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号)
・株主資本等変動計算書に関する会計基準(企業会計基準第6号)
・株主資本等変動計算書に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第9号)