貨幣性資産・費用性資産とは|会計用語の解説

会計書類と監査

記事公開日:2023年8月12日

「貨幣性資産」「費用性資産」は、資産の分類方法の1つであり、損益計算と資産との関係を説明する際に登場する会計用語です。

本記事では、貨幣性資産と費用製資産について、定義や意義を中心に解説します。

貨幣性資産・費用性資産とは

貨幣性資産」とは、「現金」及び「貨幣と同様の性質を有する資産」をいいます。

費用性資産」とは、将来、費用化する資産をいいます

仕訳の型である「取引の8要素」を考えると、一部の例外を除き、資産は、「支出」又は「収益の発生」に伴って発生し、借方に記入します。

また、資産は、「収入」又は「費用の発生」に伴って減少し、貸方に記入します。

以上の仕訳型から導き出される資産の性質を整理すると、資産は次の通り分類できます。

分類発生要因消滅要因性質科目例
貨幣性資産現金自体
支出収入事業投資又は金融投資貸付金・有価証券
収益収入事業投資(回収)売掛金・受取手形
費用性資産支出費用事業投資商品・製品・有形固定資産・ソフトウエア・のれん・前払費用

以上から、「貨幣性資産」は、投下資本を回収した状態、又は次の投資への待機状態を表し、「費用性資産」は、事業へ投下中の状態を表していると捉えることができます。

意義

「貨幣性資産」と「費用性資産」に分類することで、損益計算と資産との関係を説明するのに役立ちます(後述の「貸借対照表との関係」「損益計算書との関係」を参照)。

損益計算書は、会社の経営成績を示すことから、貨幣性資産と費用性資産とに分類し、損益計算書との関係を明らかにすることで、損益計算書を通じて会社の活動を把握できる点においても有効です。

会計基準上の取り扱い

「企業会計原則」という会計基準や、「財務諸表等規則」という財務諸表の表示規則において、資産は「流動資産」と「固定資産」とに区分して表示する旨が規定されています(流動固定分類)。

※流動固定分類は「正常営業循環基準」と「一年基準」に基づきます。詳細は下記の記事を参照。

「貨幣性資産」「費用性資産」は会計ルールとして採用された資産の分類ではなく、会計理論を通じて財務諸表の構造を理解するために重要な資産の分類方法といえます。

貸借対照表との関係

貸借対照表の構成要素のうち、資産は「運用形態」を表し、負債や純資産は「調達源泉」を表す、ということがあります。

※下記の記事で解説。

資産の運用形態は、大きく「事業投資」と「金融投資」とに分類できます。

例えば、有形固定資産に代表される「費用性資産」は、事業で使用する目的で取得することから、「事業投資」に分類できます(次の「損益計算書との関係」を参照)。

「貨幣性資産」は科目に応じて、「事業投資を回収した状態(売掛金・受取手形)」又は「次の投資のための待機状態(現金預金)」又は「余剰資金の運用(有価証券)」などに分類できます。

損益計算書との関係

上記の通り、事業に投下された「費用性資産」は、事業投資として取得されます。

取得した費用性資産は、その後、商品・製品・サービスの販売・提供による「収益という成果」を稼得するために使用され、収益計上に対応して売上原価や減価償却費として費用計上されます(「費用収益対応の原則」)。

このように、会計記録された収益と費用は、会社の経営成績として損益計算書に表示され、投資家や債権者といった利害関係者に開示されます。

収益化の際には、同時に現金・売掛金・受取手形といった貨幣性資産を回収し、次の事業投資の資金として運用することでビジネスは拡大します。

会計基準・参考文献

会計基準

・企業会計原則(昭和57年4月20日 大蔵省企業会計審議会)
・財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則

参考文献

・スタンダードテキスト財務会計論I(基本論点編)(第9版) 中央経済社 2015年
・桜井久勝 財務会計講義(第12版) 中央経済社 2011年

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著者情報

須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。1人で「PDCA会計」を企画・開発・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

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