減損損失の測定とは|会計基準・適用指針を解説(上級)
執筆日:2024年11月22日
※本記事は、2024年11月22日現在に公表・適用されている会計基準等に基づいています。
※対象:上級者・実務家
※本記事は会計基準等の全てを解説しているわけではありません。実務では会計基準等もご参照ください。
「減損損失の測定」は減損会計の手続きの1つです。
本記事では、「減損損失の測定」とは何かについて、会計基準及び適用指針に基づいて解説します。
減損損失の測定とは
「減損損失の測定」とは、固定資産に係る減損会計に登場する用語の1つであり、「減損損失の認識」の次に行う手続きの名称です。減損損失を認識すべきと判定された資産又は資産グループについては、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を「減損損失」として当期の損失(特別損失)とします(「固定資産の減損損失に係る会計基準」 二 3 参照)。
減損会計の手続き
- 1.資産のグルーピング
- ↓
- 2.減損の兆候
- ↓
- 3.減損損失の認識
- ↓
- 4.減損損失の測定
- ↓
- 5.会計処理・表示
「認識」及び「測定」は会計全般に登場する基本用語です。「認識」は、資産・負債・純資産・収益・費用を「いつ計上するか?」というタイミングを表すのに対して、「測定」は「いくらで計上するか」という金額の貨幣的評価を意味します。
すなわち、減損会計に当てはめて考えると、「減損損失の認識の判定の時(タイミング)」に「減損損失の測定の手続きにおいて計算した金額」をもって減損損失を費用計上する、ということになります。
回収可能価額
「回収可能価額」とは、資産又は資産グループの正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額をいいます(会計基準(注1))。
「正味売却価額」は資産又は資産グループの時価から処分費用見込額を控除して算定される金額をいい、また、「使用価値」は資産又は資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値をいいます。
※それぞれの詳細は下記の記事を参照
減損損失額の計算方法と具体例
資産又は資産グループの正味売却価額及び使用価値を算定し、金額の高い方を「回収可能価額」とします。
次に資産又は資産グループの帳簿価額から回収可能価額を差し引いた金額が「減損損失」になります。
減損損失額の計算方法
- (1)正味売却価額と使用価値の算定
- →回収可能価額の決定
- (2)減損損失額の確定
具体例
- 資産グループに減損の兆候がみられ、減損損失の認識の判定を行った結果、減損損失を計上する。
- ・資産グループの帳簿価額:100
- ・正味売却価額:20
- ・使用価値:30
- (減損損失額の計算)
- 使用価値30>正味売却価額20
- →回収可能価額=30
- 減損損失額=帳簿価額100−回収可能価額30=70
各資産への配分
算定した減損損失額は帳簿価額に基づいて比例配分する他、各構成資産の時価を考慮した配分等合理的であると認められる方法により、当該資産グループの各構成資産に配分します、(適用指針26項 参照)。
計算例
- 資産グループの減損損失額70について、帳簿価額に基づき各資産へ比例配分する。
- ・帳簿価額:A 50 B 30 C 20
- (各資産の減損損失額の計算)
- 資産A:70✕50/(50+30+20)=35
- ※同様に計算して資産B:21 資産C:14
建設仮勘定の場合
資産グループが複数の建設仮勘定から構成されている場合には、資産グループについて認識された減損損失は、資産グループの帳簿価額から控除します。一方で、減損損失の測定時には各建設仮勘定に配分せず、完成時にそれまでの総支出額等の合理的な方法に基づいて配分します(適用指針27項)。
会計基準等・参考文献
会計基準等
※2024年11月22日現在。リンク先の会計基準等は最新版でない場合があります。
・固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書(固定資産の減損に係る会計基準 及び同注解を含む)(企業会計審議会)
・固定資産の減損に係る会計基準の適用指針(移管指針第6号)
参考文献
・新日本監査法人編 完全ガイド 固定資産の減損会計実務 税務研究会出版局 2004年
固定資産は取得原価主義や費用配分の原則をはじめ、伝統的な論点が多い分野。会計理論と併せての学習が効率的です。