損益計算書の見方についてわかりやすく解説(入門)

成長を表すグラフ

記事最終更新日:2024年2月26日
記事公開日:2012年5月14日

前回、「会計入門その20~貸借対照表の分析」では、貸借対照表の分析について説明しました。

今回から損益計算書について解説します。

今回は損益計算書とは何かについて、見方を解説するとともに収益、費用、利益との関係や、認識、現金主義、発生主義といった用語を解説します。

損益計算書とは

損益計算書(そんえきけいさんしょ)とは簡単にいうと次の通りです。

「会社が、ある期間中にどれだけ儲かったかが分かる資料」

貸借対照表の「繰越利益剰余金」は、事業を始めてから今までの累計でどれだけ儲かったかは分かりますが、ある決算期にどれだけ儲けたのかは分かりません。

そこで、ある期間中にどれだけ儲けたかが分かるように損益計算書を作成します。

※「ある期間」のことを会計用語で「フロー」といいます。

損益計算書は決算毎、すなわち1年毎に作成するのはもちろんですが、月次や半期、四半期にも作成することがあります。

損益計算書の見方

架空の会社の損益計算書を下に掲載しました。

損益計算書

「自平成31年1月1日 至令和元9年12月31日」と表示されていることから、この損益計算書は「平成31年1月1日から令和元年12月31日まで」の1年間の、ある会社の経営成績を表しているということになります(「自」は「~から」、「至」は「~まで」です)。

この損益計算書で説明すると、「売上高、営業外収益(その内訳である受取利息及び配当金などを含む)、特別利益(その内訳である固定資産売却益などを含む)」といった科目が収益に該当します。

同様に「売上原価、販売費及び一般管理費、営業外費用(その内訳である支払利息などを含む)、特別損失(その内訳である固定資産売却損や減損損失などを含む)、法人税、住民税及び事業税」が費用に該当します。

そして、「売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益」が利益に該当します。

経営成績とは

「儲かったかどうか」ということを、「経営成績(けいえいせいせき)」といいます。

儲かった場合とは、損益計算書の「〇〇利益」と表示されている箇所、すなわち、「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」がプラスである場合をいいます。

黒字(くろじ)ともいいます。

例えばこの会社では、「平成31年1月1日から令和元年12月31日までの経営成績は、当期純利益が15,864千円の黒字だった。」といったように説明できます。

儲からなかった場合、言い換えると「損をした(損失(そんしつ)とも)」場合とは、「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」がマイナスである場合をいいます。赤字(あかじ)ともいいます。

例えば、当期純利益が1千万円の赤字である場合には、上記の損益計算書では単位が千円単位であるため、「当期純利益 -10,000」と表示します。

他にも赤字の場合の表示には「当期純利益 △10,000」「当期純利益 △10,000」「当期純損失 10,000」など、いくつかの表示方法があります。

損益計算書には、貸借対照表と同様に区分や科目があります。

売上高は聞いたことがあると思いますが、見慣れない区分や科目もあると思いますので、次回から説明します。

損益計算書の3要素

上記の損益計算書には大きく分けて3つの要素があります。それは、「収益」「費用」「利益」です。

すなわち、「収益、費用、利益(損失)は損益計算書の構成要素である。」ということです。

それぞれの説明は次の通りです。

  • 収益(しゅうえき):会社にお金が入ってくる要因
  • 費用(ひよう):会社からお金が出ていく要因
  • 利益(りえき):収益から費用を差し引いて求められる会社の儲け。損をした場合は、損失(そんしつ)

次に、収益・費用・利益の区分や表示科目は次の通りです。

  • 収益:売上高、営業外収益、特別利益
  • 費用:売上原価、販売費及び一般管理費、営業外費用、特別損失
  • 利益:売上総利益、営業利益、経常利益、特別利益、税引き前当期純利益、当期純利益

区分や科目はこれから覚えていくとして、収益、費用、利益(損失)の3要素についてもう少し説明します。

収益、費用、利益の関係

収益、費用、利益(損失)の関係は次の通りです。

収益-費用=利益(損失)

この式から、次のことが分かります。

収益から費用を差し引いた結果、利益(マイナスであれば損失)が求められる。

例えば、損益計算書を上から見ていくと、売上高(収益)から売上原価(費用)を差し引いた結果、売上総利益(利益)が求められます。

(1)売上高(収益) - 売上原価(費用) = 売上総利益(利益)

次に、売上総利益(利益)から販売費及び一般管理費(費用)を差し引いた結果、営業利益(利益)が求められます。

(2)売上総利益(利益) - 販売費及び一般管理費 = 営業利益(利益)

売上総利益は(1)の式から、売上高(収益)から売上原価(費用)を差し引いた結果です。従って、(2)の式は次の通りとなります。

(3)売上高(収益) - 売上原価(費用) - 販売費及び一般管理費 = 営業利益(利益)

やはり、収益から費用を差し引いた結果、利益が求められています。

以上の要領で、最後の当期純利益まで考えることができますので、「収益から費用を差し引いた結果、利益が求められる」ということができます。

【補足】段階利益
簿記の資格学習の範囲を超えた内容になっています。ご興味ある方はお読みください。

上記の損益計算書では、全ての収益と全ての費用を合計した結果、最終の当期純利益を表示しているわけではなく、その間に、「売上総利益→営業利益→経常利益→税引前当期純利益→当期純利益」といったように、段階的に利益を計算して表示させているのが分かります。

これらの利益区分を総称して段階利益といいます。

これらの段階利益には、もちろんそれぞれ意味があります。実務では段階利益別に前期(昨年)の損益計算書と比較したり、将来計画の策定、さらには株式を購入する場合の企業間比較を行う、といった使い方があります。

各利益については、売上総利益と粗利率・原価率以降で詳細に解説しています。

損益計算書等式

さて、損益計算書の式「収益-費用=利益(損失)」の左右を入れ替えます。

利益 = 収益 - 費用

次に、中学の数学で学んだ方程式のように、上記式の右辺にある費用を左辺に移行します。具体的には、

費用 + 利益 = 収益 - 費用 + 費用

といったように、左辺と右辺にそれぞれ、費用を足します。

結果、次の通りとなります。

費用 + 利益 = 収益

この等式は、「費用を増加させるには、仕訳の左側(借方)に計上し、収益を増加させるには、仕訳の右側に計上する。」ということを意味します。

別の言い方をすれば、「費用を減少させるには、仕訳の右側(貸方)に費用を記載し、収益の減少であれば、左側(借方)に収益を記載する。」ということです。

ちなみに利益ですが、費用や収益の勘定科目は存在しますが、利益は勘定科目は存在しません。収益から費用を差し引いて計算します。

簿記を学習する際にこの式をイメージできていれば仕訳を覚えるのが楽になります。

この等式を損益計算書等式(そんえきけいさんしょとうしき)といいます。

損益計算書と家計簿の違い

損益計算書の式「収益-費用=利益(損失)」は、家計簿の「収入-支出=収支」と似ていることが分かると思います。

ここでは両者の違いを説明します。

まず、家計簿はお金が入ってきた時の日付で収入を計上しますが、損益計算書は、お金が入っていなくても収益を計上することもあれば、逆にお金が入ってきているのに収益を計上しない、ということがあります。

支出と費用についても、同様に両者は違います。

つまり「収益は会社にお金が入ってくる要因」と説明しましたが、お金が入ってくるタイミングは、過去の場合もあれば現在、未来の場合もある、ということです。

費用も同様です。従って収益と費用の差し引きで求められる利益も同様です。

例えば、これまでに解説した科目のうち、売掛金はモノやサービスを販売したにも関わらずお金は入っていません。

しかし、1ヵ月後、2ヵ月後など、近い将来にお金をもらう約束(契約)はしており、将来入金される可能性は高いことから、資産の説明に該当します。

従って、モノやサービスを販売した時点でお金をもらっていなくても売掛金と同時に収益(ここでは売上高)を計上します。

「どの時点で収益や費用、収入や支出を計上するのか」という考え方を、会計用語で「認識(にんしき)」といいます。

家計簿の収入や支出のように、お金が入ってきた時やお金が出ていった時にその日付で計上する認識の考え方を「現金主義(げんきんしゅぎ)」といい、このような会計を「現金主義会計(げんきんしゅぎかいけい)」といいます。

お金が入ってきた時や出ていった時ではなく、「モノやサービスの価値が生成された時や消費した時に収益や費用を計上する認識の考え方を「発生主義(はっせいしゅぎ)(収益の場合は、実現主義(じつげんしゅぎ)を含む)」といい、このような会計を「発生主義会計(はっせいしゅぎかいけい)」といいます。

事業を始めた頃には、家計簿と同じように現金主義で収益や費用を計上している会社もたくさん存在します。

しかし、段々と会社が大きくなるに従って、適正な損益計算書の作成が会社の内外で求められるようになり、会計の認識を現金主義会計から発生主義会計に移行していくようになります。

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著者情報

須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。1人で「PDCA会計」を企画・開発・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

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