会計入門 実現主義とは|出荷、引渡、検収(売上計上基準、収益認識)を分かりやすく解説

更新日:2020年3月31日
作成日:2012年5月15日

前回、「会計入門その21~損益計算書とは」では、損益計算書について説明しました。

今回は実現主義とは何かについて、、売上計上基準(出荷、引渡、検収基準)や根拠となる理由、例外的な基準(発生主義の工事進行基準と現金主義の割賦基準)にも言及しながら具体的に分かりやすく解説します。

実現主義とは

実現主義(じつげんしゅぎ)とはモノやサービスを販売(お客への引き渡し)して、その対価を受け取った時に売上を計上する収益認識方法をいいます。

(引用)企業会計原則 第二 損益計算書原則 一 損益計算書の本質
(A 発生主義の原則)
 「すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。ただし、未実現収益は、原則として、当期の損益計算に計上してはならない。」

上記引用のうち、「ただし」以降の部分が実現主義の説明に該当します。

「対価」とはお金、つまり現金だけではなく売掛金や受取手形も含みます(売掛金や受取手形などを「現金同等物(げんきんどうとうぶつ)」といいます)。

例えば、八百屋さんや飲食業、コンビニといった業種の場合、野菜やカレーライスやラーメン、お菓子や雑誌といったモノをお客さんが購入(食事)して、レジで現金を払います。

通常、これらの行為は同時に行われるので、この時に売上高を計上します。

衣服メーカー(ズボンを製造して、デパートや衣服屋さんに販売するケース)の場合であれば、ズボンを販売した時に現金は受け取りませんが代わりに現金同等物を受け取るのが通常ですので、やはり販売時点で売上を計上します。

収益の認識基準とは

収益の認識基準(にんしききじゅん)とは、「収益をどの時点で計上するのか」といった点に関する基準(ルール)のことをいいます。

「いつ、どのタイミングで計上するのか」を会計用語で認識(にんしき)といいます。

また、「いくらで計上するのか」を会計用語で測定(そくてい)といいます。

実現主義であれば、認識は「モノやサービスを販売・提供した時点」であり、測定は「販売の対価である現金や現金同等物の額」です。

発生主義と現金主義とは

実現主義以外に売上を計上する認識方法としては、発生主義や現金主義があります。

発生主義(はっせいしゅぎ)とは、価値の生成段階でその価値の貨幣評価額を計上する方法をいいます。

そして、現金主義(げんきんしゅぎ)とは、現金を受け取った時にその額を計上する方法をいいます。

実現主義で売上計上する根拠とは

上述の引用の通り、日本の根本的な会計基準である企業会計原則(きぎょうかいけいげんそく)上にて売上の認識測定を実現主義としている理由とは何かについて、発生主義や現金主義との違いに注目して比較すると次の通り、説明できます。

例えば発生主義で売上計上したとすると、ズボンの製造段階から徐々に価値が高まり、完成時点で製品価値が販売価格とイコールになるため、この段階で販売価格の売上を計上します。

しかし、ズボンをデパートや衣服屋さんに引き渡していない状態であることから、確実に販売価格だけの代金が受け取れる保証はなく、この売上は資金的な裏付けを確保しているとはいえません。

次に現金主義で考えると、ズボンを販売し、その後、現金の受け取った時点で売上を計上します。

しかし、信用経済が発達した現在のビジネス慣行においては、現金ではなく販売したズボンの等価交換たる現金同等物の受取時点で売上計上しても資金的な裏付けは確保されていると考えられるため、実態に即した売上計上方法といえます(ただし、完全に確実とは言えないため、貸倒引当金を計上します)。

これに対して販売時点であれば、上述の2条件だけでなく、注文書や引渡書控え、請求書といった売上計上のための客観的な書類も揃う(揃えられる)ため、会計帳簿に記入された売上高の検証可能性も充足します。

以上から、企業会計原則は「資金的な裏付け」「信用経済の発達」「検証可能性」といった点を根拠として、実現主義を採用していると考えられます。

売上計上基準とは

売上計上基準(うりあげけいじょうきじゅん)とは、より具体的に認識方法を表した売上計上の基準をいいます。

「販売時点」といっても、販売するモノやサービスの種類は沢山存在するため、売上計上するためにはビジネスの実態に合わせて具体的に考えないと適切な会計処理に繋がりません。

この点、実現主義に基づく代表的な売上計上基準として、出荷基準、引渡基準、検収基準がありますので、以下、それぞれ解説します。

出荷基準

出荷基準(しゅっかきじゅん)とは、衣服メーカーの工場からズボンを出庫してトラックで運搬される時、すなわち出荷する時に売上を計上する方法です。

出荷時点ではお客さんの手許には届いていないので、厳密に考えればお客さんに引き渡してはいません。

しかし、次に説明する引渡基準だと売上の計上作業が大変であることや、オーダーメイド品(特注品)ではなく一般大衆向けの大量消費製品であれば、厳しい検品もなく、ほとんど返品なく引渡できます。

トラックで運搬されてからお客さんの手許に届くのにそんなに時間はかかりません(国内であれば数日)ので「ほとんどお客さんに引き渡した状態」といえます。

このような場合には、「出荷した月の請求書として請求しても構いませんよ。こちらもその月で起算して契約書に基づいた期日にお金を支払いますから」という、デパートや衣服屋さんとの約束(基本取引契約書や注文書に記載される文言、口頭の約束事など)があれば、出荷した日付で売上高を計上します。

出荷基準は日本では慣行として認められている最も一般的な売上の計上基準です。

引渡基準

引渡基準(ひきわたしきじゅん)とは、衣服メーカーからズボンがトラックで出荷され、お客さんの手許に届き、引渡された時に売上を計上する方法です。

納品基準(のうひんきじゅん)と言われることもあります。

引渡書の控えをデパートや衣服屋さんから入手して、その引渡日で売上を計上します。

従って、売上を計上するためには「引渡書の控えの入手」という衣服メーカーとデパートや衣服屋さんの「共同作業」が必要です。

出荷基準では衣服屋さんだけの作業(出荷日付が分かる資料や請求書の発行)で売上計上できることから、引渡基準の方が売上計上の作業が大変になります。

引渡基準は、販売側である衣服メーカーと仕入側であるデパートや衣服屋さんとの「確認作業」が行われたうえで売上計上されると同時に売掛金や受取手形の計上が行われます(デパートや衣服屋さんでは買掛金や支払手形の計上)。

従って、後日、売掛金を回収する段階や決算時に売掛金計上額を検証・確認する段階では、比較的スムーズに手続きが進むといえます(同じ日付で衣服メーカーの売掛金・受取手形とデパートや衣服屋さんの買掛金・支払手形が計上されることになるため)。

出荷基準では、ズボンがデパートや衣服屋さんに引渡されるまで数日ズレる場合があり、検品作業により返品される場合もあるため、衣服メーカーの売掛金・受取手形の金額とデパートや衣服屋さんの買掛金・支払手形の金額は完全には一致しません。

従って、売掛金の回収段階や決算時の売掛金計上額の検証・確認作業は比較的煩雑となります。

検収基準

次にソフトウェア開発企業やコンテンツ事業などで適用される検収基準について解説します。

※ゲーム開発会社を考えると想像しやすいと思います。

検収基準(けんしゅうきじゅん)とは、客先がモノ・サービスを受け取ったのち検収の結果、問題がなかった場合にその時点で売上計上する方法です。ソフトウェアの受注販売など一般大衆向けの大量消費される製品ではなく、1つ1つオーダーメイドの受注品である場合に採用される売上の会計基準です。

ソフトウェア開発企業がソフトウェアの完成後、お客さんに引渡すると、その後、お客さんの側で検証作業が行われます。

最新ゲームのプログラムを引渡する場合には、オーダーメイド、すなわち、世界でたった一つのモノです。その後、ゲームソフトとしてプログラムを大量に複製してインターネット通販やゲーム屋さんなどを通じて最終の一般消費者へ販売します。

従って、注文をしたお客側でも注文した通りのモノが出来上がったのかどうか、自分たちで検証する必要があります。

ソフトウェアの場合、オーダーメイドであることが通常であり、ソフトウェアを注文したお客側で検証する作業を特に「検収(けんしゅう)」といいます。

検収の期間は引渡されるソフトウェアによって異なります。

ソフトウェアが特殊であり、プログラムの量が多ければ、検収の期間は長くなります。

通常はソフトウェア開発会社とお客さんとの間で基本取引契約書や注文書上に、検収期間に関する取り決めを記載しておきます。

そして検収が終了し、お客が検収印や検収日付を押印・記載した検収書をソフトウェア開発企業が受け取った時、その検収書に記載された日付で売上を計上します。

実現主義の例外

売上の計上はビジネスの実態に応じて実現主義以外の認識基準を適用する例外的なケースも存在します。

なぜならば、発生主義や現金主義に基づく売上計上基準が上述の「実現主義で売上計上する根拠とは」で説明した「資金的な裏付け」「信用経済の発達」「検証可能性」という条件を、実現主義に基づく売上計上基準(出荷、引渡、検収)よりも適切に満たして会計に反映できる場合には、例外を認めた方が実態を反映する会計処理に繋がるからです。

今回は代表的な例外基準である、工事進行基準と割賦基準について解説します。

工事進行基準(発生主義)

工事進行基準(こうじしんこうきじゅん)とは、発生主義に基づく売上計上基準であり、工事・開発の進捗度合いに応じて売上を計上する方法をいいます。

長期間を要する大規模な建設工事や長期間のソフトウェア請負開発などが代表的な例です。

上述に説明した通り、発生主義の欠点は「資金的な裏付け」でした。しかし、これらの取引は工事やソフトウェア開発前に予め請負契約を締結しており、契約上で完成後の代金を受け取れることや売上となる請負金額も確定しています。

以上から、資金的な裏付けは確保しているといえることから、例えば工事進行基準を適用して当期に工事の30%まで完了したのであれば請負金額の30%を当期の売上として計上することが、ビジネスの実態をより正確に会計に反映できると考えられます(実現主義を適用すると当期売上はゼロになってしまいます)。

割賦基準(現金主義)

割賦基準(かっぷきじゅん)とは現金主義に基づく売上計上基準であり、ズボンの代金を分割して支払う場合に分割代金を受け取る度に売上を計上する方法をいいます。

分割払いの場合には代金の回収期間が長期に渡るため、通常の販売と比較して貸し倒れのリスクは高くなります。

実現主義を適用した場合には、「信用経済が発達した現代」であっても、代金の全額を回収できる目途が立たないケースも存在することから、割賦基準により分割払いの都度、売上を計上する方法が認められます。

【補足】売上収益の認識基準が複数存在する理由とは?

今回説明したのは、出荷基準、引渡基準、検収基準、工事進行基準、割賦基準ですが、その他にも様々な売上収益の認識基準が存在します。

このような売上収益の認識基準が複数存在するのは、扱う商品によって適切と考えられる基準が異なるからです。

例えば、コンビニや衣服店に並んでいる商品を例にすると、これらの商品は大量生産されたものです。

従って、検収基準のような商品の検査は必要ないでしょう。

また、毎日のように、製造メーカーの工場からコンビニや各衣服店の店舗に商品が届きます。手続きはルール化されており、定常運用されていることから、引き渡しまで待たなくとも、数量不足や商品破損などの理由で返品になるケースは、全体の取引から考えればほとんどないと考えられます。

以上の理由から一般的には出荷基準を採用します。

次に、高級スーツなどのオーダーメイド品やゲームの元となるプログラムソフトウェアを例として考えてみます。

これらの商品の場合は、大量生産される商品ではありません(ゲーム自体は大量生産されますが、その元となるプログラムは大量生産ではなく、1つだけと考えてください。ソフトウェア制作会社がゲーム企画・販売会社より注文を受けてゲームプログラムを制作して、ゲーム企画・販売会社に引渡します)。

従って、商品がお客の元に届き、お客が商品を検査して確認するまでは、売上計上することは適切とはいえません。

以上から、これらの商品は検収基準を採用することが適切ですが、オーダーメードの程度によっては引渡基準の採用も考えられます。

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