連結子会社保有の親会社株式と仕訳(取得・処分)

オフィス街

記事最終更新日:2022年10月5日
記事公開日:2022年7月2日

連結会計上の自己株式には、親会社株式も該当します。

本記事では、連結子会社が保有する親会社株式の取得時・処分時の仕訳処理を解説します。

親会社株式とは

親会社株式とは、連結子会社が保有する親会社の株式をいいます。

取引内容

例えば、子会社がある会社(被取得企業)を吸収合併した際に、被取得企業が親会社株式を所有している場合には、結果として子会社が親会社株式を取得します。

会社法の規定では、親会社株式は原則取得禁止とし、認められた条件で取得した場合には相当の時期に処分しなければならない、と定めています。

自己株式の会計処理

親会社が保有する自己株式は、純資産の部の控除科目として計上します(個別会計上の処理)。

非支配株主持分

連結子会社が保有する親会社株式も連結財務諸表上は自己株式であるため、個別会計上と同じく、「純資産(株主資本)の控除科目」として表示するよう仕訳処理します。

ただし、子会社に非支配株主が存在する場合には、株主資本から控除するのは「親会社持分相当額」であり、非支配株主の持分相当額は「非支配株主持分」の減額として仕訳する必要があります。

親会社株式の連結仕訳

取得と処分に分けて解説します。

取得時の仕訳

個別会計上は、「親会社株式勘定(純資産の部に属する勘定科目)」で計上しているため、連結会計上、親会社持分相当額は「自己株式勘定(純資産の部に属する勘定科目)」に修正するように仕訳し、非支配株主の持分相当額は「非支配株主持分」から控除するように仕訳します。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
自己株式×××親会社株式×××
非支配株主持分×××

子会社が個別会計上、親会社株式を「その他有価証券」に分類し、期末に「その他有価証券評価差額金」を計上した場合には、連結会計上、当該その他有価証券評価差額金を消去して残高を取得価額に戻してから上記の処理を行います。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
その他有価証券評価差額金×××親会社株式×××
繰延税金負債×××
自己株式×××親会社株式×××
非支配株主持分×××

処分時の仕訳

親会社株式を処分(売却)した場合、個別会計上で計上した売却損益は、連結会計上では、「自己株式処分差損益勘定(純資産の部に属する勘定科目)」として、「その他資本剰余金」から増減するよう仕訳します(その他資本剰余金が負の値になる場合には、負の値は利益剰余金から控除する)。

売却損益のうち、非支配株主の持分相当額は「非支配株主に帰属する当期純損益」及び「非支配株主持分」で仕訳します。

当該売却損益は、法人税等の影響額を控除した後の金額をもって消去します。

<個別会計上>

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
未収入金×××親会社株式×××
親会社株式売却益×××
法人税等×××未払法人税等×××

<連結会計上>

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
親会社株式売却益×××法人税等×××
自己株式処分差益×××
非支配株主に帰属する当期純利益×××非支配株主持分×××

※売却益を計上した場合

<補足>
当該売却は外部売却のため実現しています。内部取引による未実現利益の消去仕訳とは異なるため、上記3行目の「非支配株主に帰属する当期純損益/非支配株主持分」の仕訳も未実現利益の消去仕訳ではなく、純資産(その他資本剰余金)の増加による修正仕訳です(連結会計基準を参照)。

法人税等の処理については、売却損益という損益処理(及び法人税等の計上)をその他資本剰余金の直接増加として修正することから、2行目では「繰延税金資産・負債」による処理は行わず、法人税等(親会社持分相当額)を直接減額します(税効果会計基準を参照)。

非連結子会社又は関連会社が親会社株式を保有する場合

連結会計上、親会社の持分相当額を自己株式として株主資本から控除し、投資勘定を同額減額させるように、修正します。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
自己株式×××投資勘定×××

親会社株式を処分した場合には、連結会計上、売却損益(親会社の持分相当額)を「持分法による投資損益」として投資勘定に反映させた後、「自己株式処分差益」を同額、増額させ、持分法による投資損益を同額減少させます。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
投資勘定×××持分法による投資損益×××
持分法による投資損益×××自己株式処分差益×××

※売却益を計上した場合

会計基準

※2022年10月5日現在。リンク先の会計基準等は最新版でない場合があります。

自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準(企業会計基準第1号)
自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第2号)
貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準(企業会計基準第5号)
貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針(企業会計基準適用指針第8号)

表示

期末に保有する自己株式は、連結貸借対照表上、純資産の部(株主資本の区分)の控除科目として一括表示します。

仕訳例

  • 子会社(80%支配)が期末に保有する親会社株式100。
借方科目借方金額貸方科目貸方金額
自己株式80親会社株式100
非支配株主持分20

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著者情報

須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。1人で「PDCA会計」を企画・開発・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

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