自己株式と仕訳(処分差損益・付随費用)|取得・消却時の処理

株式市場

記事最終更新日:2022年10月5日
記事公開日:2022年7月1日

自己株式の仕訳処理は他の科目と異なる点が少なくありません。

そこで本記事では、自己株式の取引と仕訳(取得・処分・消却・付随費用の処理など)を解説します。

※会計処理の考え方や理論的な根拠、過去の処理の変遷(経緯)については下記の記事を参照

自己株式とは

自己株式とは、取得によって自己が保有する、既発行の自社の株式をいいます。

取引内容

「取得」「処分(売却)」「消却」が存在します。

取得と仕訳

自己株式勘定(純資産の部に属する勘定科目)」として仕訳します(株主資本の控除科目として処理)。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
自己株式×××未払金など×××

付随費用と仕訳

ただし、付随費用は取得原価に含めず費用(営業外費用)として処理します(処分、消却時も同様)。

※なぜ費用計上するのかは上記「自己株式とは」で紹介した記事を参照。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
支払手数料など×××未払金など×××

処分(売却)と仕訳

取得額(帳簿価額)と処分価額との差額は「自己株式処分差損益勘定(純資産の部に属する勘定科目)」として処理します(その他の資本剰余金の増減)。

※その他資本剰余金の残高が負の値になる場合には、当該負の値は利益剰余金(繰越利益剰余金)として処理します(消却も同様)。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
未収入金など×××自己株式×××
自己株式処分差損×××

※「処分価額 < 帳簿価額」の場合

募集株式の発行等の手続きによる処分と仕訳

募集株式の発行時に自己株式を処分する場合、払込期日に処分の仕訳を行いますが、払込期日前に払込みがあった場合、払込期日までの間は「自己株式申込証拠金勘定(純資産の部に属する勘定科目)」として処理します。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
当座預金など×××自己株式申込証拠金×××

消却と仕訳

消却対象の自己株式の帳簿価額を減額し、その他の資本剰余金を同額減額します。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
その他の資本剰余金×××自己株式×××

仕訳(まとめ)

次の通り。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
取得自己株式×××未払金など×××
付随費用支払手数料など×××未払金など×××
処分未収入金など×××自己株式×××
自己株式処分差損×××
消却その他の資本剰余金×××自己株式×××

会計基準

※2022年10月5日現在。リンク先の会計基準等は最新版でない場合があります。

自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準(企業会計基準第1号)
自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第2号)
財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則
貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準(企業会計基準第5号)
貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針(企業会計基準適用指針第8号)
株主資本等変動計算書に関する会計基準(企業会計基準第6号)
株主資本等変動計算書に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第9号)

子会社が保有する親会社株式の処理

連結財務諸表の作成において、子会社が保有する親会社株式も自己株式として処理します。

※詳細は下記の記事を参照。

表示

期末に保有する自己株式は、貸借対照表上、純資産の部(株主資本の区分)の控除科目として一括表示し、付随費用は損益計算書上、営業外費用として計上します。

株主資本等変動計算書において上記取引が発生した場合には、「自己株式の取得」「自己株式の消却」といった名称を付し、他の変動事由とは区分して「当期変動額」に表示します。

仕訳例

  • 自己株式10株(@10)を取得し、手数料5とともに次月支払う。
借方科目借方金額貸方科目貸方金額
自己株式100未払金105
支払手数料5

(広告)上級論点の電子書籍で学習しませんか?

PDCA会計は30冊の「上級論点の基本的な知識」を学ぶための電子書籍(商業簿記・会計学)を発売しています。

「簿記2級を学習中で今後、簿記1級の取得を考えている」
「連結会計・退職給付会計・税効果会計をはじめとする高度な知識を必要とする経理に携わりたい」
「会計基準を読めるようになりたい」
「公認会計士を目指しているが財務会計論でつまづいている」
「減損会計や研究開発費など、論点別の問題集で弱点を補強したい」
Etc...

といった人にオススメしたい書籍です。

<出版状況>

※全ての論点を出版予定

仕訳問題集
穴埋め問題

PDCA会計の上級者向け電子書籍は全て「Kindle Unlimited(読み放題)」対象。低価格でコスパに優れ、スマホで使いやすい「リフロー型」です。

<書籍の探し方>

Amazonサイト内で「PDCA会計 連結会計」といったキーワードで検索

上級者・実務家対象の記事

※会計・簿記共通

サイト内検索

著者情報

須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。1人で「PDCA会計」を企画・開発・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

詳細はこちら↓
著者プロフィール

☆電子書籍の「0円キャンペーン」
日商簿記テキスト・問題集で実施中。X(旧twitter)で告知します。
「PDCA会計」をフォロー

簿記3級テキスト(PDCA会計の電子書籍)