9-5 期中売却取引と仕訳

引き続き売却取引の応用論点を解説します。

有形固定資産の期中売却

前回までに解説した有形固定資産の売却取引は、期首の売却を前提として解説しました。

しかし期末や期首以外の日(期中)に有形固定資産を売却することもあります。

期中売却の仕訳

有形固定資産を期中に売却した場合には、期末や期首の売却と同様、有形固定資産が減少するため貸方に「建物」「備品」「車両運搬具」「土地」など、その有形固定資産を表す勘定科目を記入するとともに、借方には、「〇〇減価償却累計額」、及び現金預金や未収入金など収入を表す勘定科目を記入します。

ただし、1点、追加する勘定科目があります。

それは、「期首から売却日までの間の減価償却費」です。結論から書くと、期首から売却日までの減価償却費を計算して借方に記入する必要があります。

すなわち期中売却の仕訳は次の通り。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
売却帳簿価額 < 売却額〇〇減価償却累計額×××建物、備品など×××
減価償却費×××固定資産売却益×××
現金預金、未収入金など×××
帳簿価額 > 売却額〇〇減価償却累計額×××建物、備品など×××
減価償却費×××
現金預金、未収入金など×××
固定資産売却損×××

取引の8要素の一覧表

期中売却仕訳のポイント

この減価償却費の借方記入の理由は次の通り。

基本的に減価償却費は決算日に計上します。

従って期中に売却した場合には、当期首から売却日までの減価償却費(減価償却累計額)は未計上のままです。このままでは、「帳簿価額 = 有形固定資産の未使用部分」にはなりません。期首から売却日までの減価償却費の分だけ帳簿価額が大きく計上されています。

9-2 減価償却費と固定資産台帳」で、帳簿価額の計算方法を次の通り紹介しました。

今回の解説で、この帳簿価額の計算の意味が分かると思います。

以上から期中売却取引の場合には、当期首から売却日までの減価償却費を計算して売却取引の仕訳に反映させます。

仕訳問題

No借方科目借方金額貸方科目貸方金額
1建物減価償却累計額3,400,000建物10,000,000
減価償却費50,000
未収入金6,000,000
固定資産売却損550,000
2備品減価償却累計額154,375備品400,000
減価償却費23,750固定資産売却益78,125
現金300,000

解説

前回解説「9-4 売却取引と減価償却累計額の計算」と比較しやすいように同じ問題設定にしています。ただし、売却日は期首でなく期中であり、さらに減価償却累計額は計算済みです。

<No1>
当期首から売却日までの減価償却費を計算します。

当期首から売却日までの減価償却費
 =(建物取得原価10,000,000円 - 残存価額0円)÷ 耐用年数50年 × 経過月3ヶ月(×18年4月1日から×18年6月30日)÷ 12ヶ月 = 50,000円

<No2>
No1.と同じく減価償却費を計算します。

当期首から売却日までの減価償却費
 =(備品取得原価400,000円 - 残存価額20,000円(※1))÷ 耐用年数8年 × 経過月6ヶ月(×18年4月1日から×18年9月30日)÷ 12ヶ月 = 23,750円(※2)

※1:備品残存価額 = 備品取得価額400,000円 × 5% = 20,000円
※2:(別解)当期首から売却日までの減価償却費
 = 備品取得価額400,000円 × (100% - 5%)÷ 耐用年数8年 × 経過月6ヶ月(×18年4月1日から×18年9月30日)÷ 12ヶ月 = 23,750円

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著者情報

須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。1人で「PDCA会計」を企画・開発・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

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