11-6 例題(本社工場会計の仕訳問題)

それでは、仕訳問題を掲載します。

それでは、順番に解説します。

解説1-工場と本社の役割の確認

工場と本社とで別々に記帳するため、はじめに、それぞれの役割を確認します。

「材料と製品の倉庫は工場にある。一方、材料購入や賃金の支払いは、本社がまとめて行っている。」と問題にあるので、それぞれの役割は次の通り。

解説2-工場で使用する勘定科目の確認

問題文から、次の勘定科目を工場で使用していると分かります。「材料 賃金 製造間接費 仕掛品 製品 本社 原価差異」

次に、本問(1)から(5)の取引の仕訳を解説しますが、ほとんどの仕訳は他の論点で解説済みです。

本社工場会計特有の論点以外は、ポイントを解説します。

解説3-(1)材料購入の仕訳

本社工場会計を採用していなければ、「(借方)材料 20,000 (貸方)買掛金 20,000」と仕訳します( 詳細は第2章の「2-3.材料費」を参照)。

しかし今回は工場側の仕訳であり、問題文から、本社が材料購入の支払いを行います。

従って、貸方は「買掛金」ではなく「本社」を記入します。

ちなみに、本社の仕訳は次の通り。

解説4-(2)賃金の消費(労務費の計上)

「月末になったため、当月賃金の消費額を計上する。」とあるので、賃金の支払いではなく、労務費計上の仕訳を示す問題だと理解します。

※賃金の「消費」→労務費の「製造投入」→労務費を「仕掛品」に計上→「賃金(又は賃金・給料)」から「仕掛品」への振り替え

従って、仕訳の型は次の通り( 詳細は第2章の「2-4.労務費」を参照)。

与えられた労務費を「直接労務費」と「間接労務費」に分類すると、直接工の直接作業時間2,100時間(予定賃率1,800円/時間)が「直接労務費」です。

直接工の間接作業時間と手待時間分の賃金、および間接工の賃金は全て「間接労務費」になります。

次に「金額の計算」ですが、直接工賃金は「予定賃率×作業時間」、間接工賃金は「要支払額」で計算します。

以上から、仕訳は次の通り。

解説5-(3)棚卸減耗費の発生

棚卸減耗費は材料ではなく、経費(間接経費)に分類されます。使用できる勘定科目から仕訳は次の通り( 詳細は第2章の「2-5.経費」を参照)。

解説6-(4)製造間接費と原価差異の計上

(4)の問題には、(2)の情報が必要になるため、(2)も再掲しています。

問題文より製造間接費は予定配賦し、予定配賦額と実際発生額の差額を原価差異(製造間接費配賦差異)として計上します。仕訳の型は次の通り( 詳細は「第3章 製造間接費」を参照)

予定配賦額を計算するために、(2)の情報(実際作業時間)を使用します。仕訳は次の通り。

<補足>工業簿記の仕訳問題

本試験では、工業簿記の仕訳問題が3問出題されます。

出題形式の特徴として、「3問が一連の取引として出題される場合があること」です(一連でない場合もあります)。

(4)を解くのに(2)の情報を必要とする本問のように、他の問題の情報も併せないと解けない場合があります。

解説7-(5)製品(完成品原価)の計上

問題文より、工場に製品の倉庫があるため、工場だけの取引です。従って、本社勘定は使用しません。

仮に、工場に製品倉庫がなく本社にあった場合には、本社勘定で記入します。仕訳の型は次の通り( 詳細は「第8章 製品勘定」を参照)

本問の仕訳は次の通り。

本章は、以上で終了です。次は「損益計算書」と「製造原価報告書」について解説します。

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仕訳問題(ランダム出題)