6-5 役務収益と役務原価、仕掛品

役務とは

役務(えきむ)とは、物販(商品の販売)と対になる会計用語で、「サービス」を意味する言葉です。

よく使われる言葉として、「役務を提供する」がありますが、「サービスを提供する」を意味します。

サービス業

「サービス業」という言葉がありますが、サービス業の会社はお客にモノを販売するのではなく、目に見えないサービスを提供することでお金を得る事業を営んでいます。

例えば鉄道会社は、鉄道という乗り物を使って、お客が目的地まで移動することを手伝うサービスを提供しています。その他、遊園地や映画館、物件の賃貸などが、役務提供する事業としてイメージしやすいでしょう。

役務の特徴

モノであれば、1kgあたり〇〇円、1個あたり〇〇円というように、提供したモノの金額を把握できます。

しかし役務は目に見えないサービスであり、その量や大きさを図ることができません。

それでは、どのように役務を把握するかといいますと、「役務を提供した期間」で、役務を把握する方法が最も一般的な方法として挙げられます。

鉄道会社であれば、お客が電車に乗っている間が役務提供の期間になります。大家さんであれば物件を貸している期間が役務提供の期間です。

役務収益と役務原価

役務収益とは、サービス業で計上される売上のことをいいます。

役務原価とは、サービス業で計上される売上原価のことをいいます。

一般的には、サービス業務の役務収益も広く含めて「売上」という言葉が使われることも多いですが、役務収益という言葉が使われる場合には、サービス業に限定した収益を指し示していると考えておいて差し支えありません。

仕掛品とは

仕掛品とは、サービスを提供していない状態の原価をいいます。

※ここでは、工業簿記で学習する仕掛品とは異なり、役務収益・役務原価との関係で説明した場合の仕掛品を説明しています。

役務原価は、役務提供前の状態では仕掛品として資産計上します。

役務収益・役務原価の認識

役務収益と役務原価の認識とは、「どの時点で役務収益や役務原価を計上するか」ということを意味します。

物販、すなわち、商品の販売( = 売上)に関する認識基準は、先に解説した通り、出荷基準、着荷基準、検収基準などでした。

これに対して、役務収益・役務原価の認識基準とは、上記の役務の特徴である「役務(サービス)を提供した期間」に応じた計上をいいます。

具体例

例えば、大家さんとしてマンションを賃貸するとします。

事業を始める前にマンション1億円を購入しましたが、1億円を一度に役務原価とはしません。役務収益と役務原価は、マンションの住居人が住居として使用した期間に応じて発生すると考えることができます。

従って、毎月の賃貸収入(役務収益)に対応させて毎月、マンションの減価償却費を役務原価として計上します。

役務収益と役務原価、仕掛品の仕訳

役務に関する取引は、「役務収益(収益に属する勘定科目)」「役務原価(費用に属する勘定科目)」「仕掛品(資産に属する勘定科目)」で仕訳します。

原価が発生した場合には、役務提供するまでは一旦、「仕掛品」の借方に記入して、「仕掛品」に原価を集計します。

役務を提供した場合には、「役務収益」を貸方に記入し、借方は現金預金、売掛金などの勘定科目を記入し、同時に「仕掛品」から「役務原価」へ振り替えます。

まとめると次の通り。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
役務の提供現金預金、売掛金など×××役務収益×××
原価の計上仕掛品×××現金預金、買掛金など×××
原価の振り替え
※役務の提供時
役務原価×××仕掛品×××

仕訳問題

A社はサービス業を営んでおり、広告したい会社に対してA社が所有するWEB上の広告スペースを提供している。次の取引について仕訳しなさい。

No借方科目借方金額貸方科目貸方金額
1仕掛品1,000,000買掛金1,000,000
2売掛金1,500,000役務収益1,500,000
役務原価1,000,000仕掛品1,000,000

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