6-9 変動対価
「収益認識に関する会計基準」の最後の論点として、変動対価を解説します。
変動対価
変動対価とは、顧客と約束した対価のうち、変動する可能性のある部分をいいます。
変動対価の代表的な例として、返品や値引き、リベートなどが存在します。リベート
リベートとは、売上割戻金ともいい、取引先との契約などで予め決められた販売実績(金額や数量)を超えた場合に、予め契約などで決めておいた基準に基づいて、返金や売掛金などの減額を行った場合の金額のことをいいます。
会計処理
変動対価が発生する取引の場合には、顧客への財又はサービスの移転と交換に、企業が権利を得ることとなる対価の額を見積ります。
見積もりの方法には、発生する可能性が最も高い金額(最頻値)による方法、又は期待値による方法があります。
そして、見積った変動対価を収益として認識します。
例えば、商品100を販売したが、この100の対価は変動可能性があり、見積った変動対価が95であった場合、95を売上として計上します。
返金負債
収益認識した額と売掛金との額の差異は、「返金負債」で仕訳します。
上の例では、売掛金は100に対して売上95を計上したため、差額5を「返金負債」として貸方計上します。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
売掛金 | 100 | 売上 | 95 |
返金負債 | 5 |
変動対価の確定
返金負債は、変動の可能性のある間だけ使用します。
変動対価が確定した場合には、「返金負債」を未払金など債務を表す勘定科目へ振り替えます。
上の例で、差額5を顧客に支払う義務が確定した場合には、次の通り仕訳します。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
返金負債 | 5 | 未払金 | 5 |
仕訳問題
- 1. 4/1 当社はA社に商品500個を@100円で販売した。A社との間には、2ヶ月以内に商品を1,000個以上購入した場合には、この期間の販売額の10%をリベートとして支払う取り決めがある。
- 返金は6月中に支払う予定であり、この条件が達成される可能性は高い。
- 2. 5/15 A社に商品600個を@100円で販売したことから、リベートの条件が達成された。
- 3. 6/30 A社にリベートを普通預金から支払った。
No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
1 | 売掛金 | 50,000 | 売上 | 45,000 |
返金負債 | 5,000 | |||
2 | 売掛金 | 60,000 | 売上 | 54,000 |
返金負債 | 6,000 | |||
返金負債 | 11,000 | 未払金 | 11,000 | |
3 | 未払金 | 11,000 | 普通預金 | 11,000 |
※本試験では選択肢から最も適当な勘定科目を選択すること
解説
問題1.
「この条件が達成される可能性は高い」の記載から、リベートが達成された場合の割戻金を差し引いた額を、見積額として売上計上します。
返金負債 = 500個 × @100円 × 10% = 5,000円
問題2.
返金負債 = 600個 × @100円 × 10% = 6,000円
累計で1,100個の販売となり、「リベートの条件が達成された」ため、この時点で返金負債から未払金へ振り替えます。