6-6 収益認識に関する会計基準
概要
収益認識に関する会計基準とは、収益(売上)の認識に関する、会計上のルールを定めた会計基準です。
2021年4月以降開始する会計事業年度から、上場企業に対して強制的に適用開始されました。
これまでの収益認識基準と経緯
売上という会計上、重要な財務指標であるにも関わらず、これまでの日本では、売上の会計基準としては「企業会計原則」という会計基準に、「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る。」というルールが存在するのみであり、収益認識に関する詳細で包括的な会計基準は存在しませんでした。
しかし、国際会計基準や米国の会計基準には、収益認識に関する包括的な会計基準が2014年に公開され適用されています。
そこで、日本でも国際的な会計基準との整合を図り、財務諸表の企業間の比較可能性を向上させるため、「収益認識に関する会計基準」を整備し、適用することになりました。
これまでの収益認識基準との関係
これまでの収益認識に関する会計基準は、上記の通り「実現主義」と呼ばれるものです。
具体的には、販売やサービス提供した段階で売上を計上する考え方であり、本書では「6-4 出荷基準・着荷基準・検収基準」「6-5 役務収益と役務原価、仕掛品」での解説が、実現主義に該当します。
「収益認識に関する会計基準」も実現主義の考え方を前提とした上で、様々な取引の形態の収益認識に適用できるように、ルール化されています。
従って、「収益認識に関する会計基準」が公表されたことで、収益認識の考え方がガラっと変わってしまうわけではなく、これまでの実現主義の考え方は踏襲しています。
新しい用語と勘定科目
「収益認識に関する会計基準」は、本文部分のみでも91項目存在します。他にも結論の背景や適用指針、設例を含めると、ボリュームはかなりのものがあります。
簿記2級では、全てが試験範囲というわけではありません。次の用語や勘定科目を学習します。
<ポイント:用語・勘定科目>
- ・履行義務(「一時点で充足される履行義務」と「一定の期間にわたり充足される履行義務」)
- ・契約資産と契約負債
- ・変動対価
- ・返金負債
使用されなくなる勘定科目
一方で、「収益認識に関する会計基準」の適用開始によって、売上割戻引当金や返品調整引当金といった科目は使用されなくなります。
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