一時差異とは|概要や税効果会計との関係を解説
記事公開日:2022年6月7日
税効果会計の用語の一つに「一時差異」があります。この言葉を理解していることが税効果会計の習得につながります。
本記事では、一時差異とは何かについて、定義、目的といった概要と会計処理について解説します。
一時差異とは|概要(定義、目的、内容)や税効果会計との関係を解説
目次
一時差異とは
一時差異とは、貸借対照表及び連結貸借対照表に計上されている資産及び負債の金額と、課税所得計算上の資産及び負債の金額との差額をいいます。
「税効果会計」を適用する場合、一時差異に係る法人税等の額は、適切な会計期間に配分して計上しなければなりません。
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目的
法人税等を控除する前の当期純利益と法人税等を合理的に対応させる、という「税効果会計」の適用範囲を特定するために、一時差異を識別します。
取引内容と税効果会計上の分類
財務諸表上の一時差異は、次の場合に発生します。
収益又は費用の帰属年度が相違する場合
有形固定資産の減価償却費や金銭債権の貸倒引当金について、税法上の限度額を超えて会計上の費用として計上した場合などが該当します。
資産の評価替えにより生じた評価差額が直接資本の部に計上され、かつ、課税所得の計算に含まれていない場合
その他有価証券評価差額金などが該当します。
また、一時差異は、「将来減算一時差異」と「将来加算一時差異」とに分類できます。
将来減算一時差異
当該一時差異が解消する時に、その期の課税所得を減額する効果を持つものをいいます。
将来加算一時差異
当該一時差異が解消する時に、その期の課税所得を増額する効果を持つものをいいます。
永久差異
一時差異とは異なり、会計上の資産・負債の金額と課税所得計算上の資産・負債の金額との差額が永久に解消されない性質を持つものが存在します。
このような差異を「永久差異」といい、交際費の損金算入限度超過額や、受取配当等の益金不算入額が代表的な取引です。
繰越欠損金
将来の課税所得と相殺可能な繰越欠損金等は、税効果会計上、将来減産一時差異と同様の性質を有すると考えられることから、税効果会計の適用においては、一時差異と同様に取り扱います。
資産負債法
日本の税効果会計基準は、一時差異の定義から分かる通り、会計上の資産・負債と税務上の資産・負債との差異に着目しています。
このような税効果の考え方を「資産負債法」といい、会計上の税引前当期純利益と税務上の課税所得との差異に着目する「繰延法」とは対比して、会計理論上、説明されます。
連結財務諸表上固有の一時差異
個別の財務諸表上で識別する一時差異だけでなく、連結会計において消去する内部取引の未実現利益など、課税所得計算には関係しないが、連結決算手続の結果として生じる一時差異が存在します。
会計処理
一時差異、及び繰越欠損金等が税効果会計の対象になります。永久差異には、税効果会計を適用しません。
一時差異を取引の性質から、将来減算一時差異と将来加算一時差異とに分類します。
将来の会計期間において、回収又は支払が見込まれない税金の額を除き、将来減算一時差異は繰延税金資産として、将来加算一時差異は繰延税金負債として計上します。
繰延税金資産の計上には、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(企業会計基準適用指針第26号)」に従って、将来の回収の見込みについて毎期見直しを行い、回収可能性を判断しなければなりません。
税効果会計基準は「資産負債法」の考えを採用しているため、貸借対照表上、繰延税金資産の将来回収額、又は繰延税金負債の将来支払額を表すことを重視し、繰延税金資産又は繰延税金負債は、回収又は支払が行われると見込まれる期の税率に基づいて計上します。すなわち、税率が変更した場合には、変更後の税率に基づいて法定実効税率を算定して税効果会計を適用します。
会計基準
※2022年6月7日現在。リンク先の会計基準等は最新版でない場合があります。
・税効果会計に係る会計基準(企業会計審議会)
・「税効果会計に係る会計基準」の一部改正(企業会計基準第28号)
・税効果会計に係る会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第28号)
・繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(企業会計基準適用指針第26号)
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