収支額基準とは|会計用語を分かりやすく解説(入門)

金銭交渉

執筆日:2024年2月18日

「収支額基準」は収益・費用の測定基準です。「認識基準」とセットで理解するためには、特徴を知らなければなりません。

本記事では「会計学の入門者」を対象に、「収支額基準」とは何かについて、いくつかの具体例を示して図を使って分かりやすく解説します。

「収支額基準」とは

収支額基準」とは、収入額に基づいて収益を計上し、支出額に基づいて費用を計上する、という「収益・費用の測定基準」をいいます。

収益及び費用の計上の際には大きく分けて「いつ計上するか」という「認識基準」と「いくらで計上するか」という「測定基準」が存在します。「収支額基準」は後者に該当します。

そして、「認識基準」には「現金主義」「発生主義」「実現主義」の3種類がありますが、「測定基準」としては「収支額基準」を適用します。

特徴

「収支額」の全額をそのまま収益・費用として計上することもあれば、「一部の収支額のみ」を計上することもあります。

また、現在の収支額だけでなく、過去や将来の収支額を収益・費用として計上することもあります。

具体例

上記の「特徴」に記したことが理解できるように、以下、本記事では、具体例として3つのケースを示して、図を使いながら「収支額基準」を解説します。

(ケース1)現在の支出-費用の場合

最も簡単なケースです。

例えば、あなたが電車に乗るために100円の切符を購入したとすると、この場合には、現在の支出額100円がそのまま「旅費交通費100」として費用計上されます。

現在支出と旅費交通費

(ケース2)過去の一部の支出-費用の場合

例えば、当期の初日(当期首)に建物を1,000万円で購入し、現在(当期の期末日)以降、50年で減価償却するとします。

すると、当期には過去の支出額1,000万円のうちの一部である20万円(1,000万円 ÷ 50年)を減価償却費として費用計上します(残り980万円は当期と同様、将来に20万円ずつ計上)。

過去支出と減価償却費

このように「過去の支出額」の、しかも「一部だけ」を現在の費用として計上する場合であっても、「支出額に基づいて費用計上」していることから、「収支額基準」に基づいた会計処理であるのです。

(ケース3)将来の収入-収益の場合

最後の例は、商品販売のケースです。当期(現在)に商品を100万円で掛け販売し、将来に100万円の現金を回収した場合を考えます。

将来収入と売上

この場合には、当期に売上100万円を収益計上しますが、この100万円は「将来の収入額100万円」に基づいて収益計上することから、このケースでも「収支額基準」を適用していることが分かります。

まとめ

以上、「収支額基準」について、具体例を示して分かりやすく解説しました。

「測定基準」と「認識基準」とを区別して理解できるようになれば、会計学の習得に1歩近づいたといえると思います。

会計基準等・参考文献

会計基準等

・企業会計原則(昭和57年4月20日 大蔵省企業会計審議会)

参考文献

・飯野利夫 財務会計論[3訂版] 同文館 1993年
・桜井久勝 財務会計講義(第12版) 中央経済社 2011年

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著者情報

須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。1人で「PDCA会計」を企画・開発・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

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著者プロフィール

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