ヘッジ会計とは|用語と概要の解説(上級)

執筆日:2024年10月19日

※本記事は、2024年10月19日現在に公表・適用されている会計基準等に基づいています。

※対象:上級者・実務家

ヘッジ会計の概要を解説します。

ヘッジ会計とは

ヘッジ会計」とは、ヘッジ取引のうち一定の要件を充たすものについて、ヘッジ対象に係る損益とヘッジ手段に係る損益を同一の会計期間に認識し、ヘッジ会計の効果を会計に反映させるための特殊な会計処理をいいます。

ここでいう「ヘッジ取引」とは、例えば「商品の輸出取引」と「ドルの為替予約(売り予約)」のように、相場変動を相殺するか、キャッシュフローを固定して変動を回避することにより、為替相場等の変動による損失リスクを減殺することを目的として、「先物・オプション・スワップ取引等」のデリバティブ取引をヘッジ手段として用いる取引をいいます。

ヘッジ取引により軽減する損失リスクには「価格変動」「為替変動」「金利変動」といった相場変動等があります。

上の例の前者(輸出取引)を「ヘッジ対象」、後者(ドル為替予約)を「ヘッジ手段」といいます。

ヘッジの種類

「公正価値ヘッジ」と「キャッシュ・フロー・ヘッジ」があります。

公正価値ヘッジ」とは、ヘッジ対象の資産又は負債に係る相場変動を相殺する場合をいいます。上の例ではヘッジ対象の資産又は負債が「外貨建ての売掛金」、ヘッジ手段の資産又は負債が「ドル先物為替相場の時価変動による正味の債権債務」に該当し、為替相場の変動リスクを相殺するために行うことから公正価値ヘッジに該当します。

このように「先物取引」「オプション取引」及び「外貨スワップ」等は公正価値ヘッジを目的として利用される代表例といえます。

※金利スワップが公正価値ヘッジとして利用される場合もあります。

キャッシュ・フロー・ヘッジ」とは、ヘッジ対象の資産又は負債に係るキャッシュ・フローを固定してその変動を回避する場合をいい、変動金利と固定金利との交換によって借入金の金利変動によるキャッシュフローの変動を回避するために契約する「金利スワップ」が挙げられます。

必要性

ヘッジ手段であるデリバティブ取引は原則的な会計処理によれば時価評価します。

しかし、ヘッジ対象が時価評価されない場合には両者の損益が期間的に合理的に対応しないこととなるため、ヘッジ対象の相場変動等による損失リスクがヘッジ手段によって減殺されるという経済的実態を会計に適切に反映できません。

そこで、ヘッジ取引の効果を財務諸表に適切に反映することによって利害関係者に会社の財政状態及び経営成績に関する有用な情報を提供するために、ヘッジ会計が必要であるといえます。

ヘッジ会計を適用するための要件

ヘッジ会計を適用するためには、会社は利益操作等を防止する観点から「事前テスト」及び「事後テスト」の双方を満たす必要があります。

事前テスト

ヘッジ取引時において、次のいずれかによって「リスク管理方針に基づきヘッジ取引が行われたこと」が客観的に認められる必要があります。

事後テスト

「有効性テスト」ともいい、ヘッジ取引時以降において継続的に実施するテストです。ヘッジ対象とヘッジ手段の損益が高い程度で相殺される状態、又はヘッジ対象のキャッシュフローが固定され、その変動が回避される状態が引き続き認められることによって、ヘッジ手段の効果が定期的に確認されていることを定量的な数値計算によって測定します。

会計処理

ヘッジ会計は次の方法で処理します。

繰延ヘッジ

ヘッジ会計の原則的な方法です。ヘッジ手段となるデリバティブ取引の時価評価により発生する損益又は評価差額を当期に処理せず、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで次期以降に繰り延べ、純資産の部に計上する方法をいいます。

時価ヘッジ

ヘッジ対象の資産又は負債に係る相場変動等を損益に反映させることにより、ヘッジ対象とヘッジ手段の損益を同一の会計期間に認識する方法です。

※現在、日本で時価ヘッジを適用できるのは「その他有価証券」のみと解釈されています。

特例処理

「金利スワップ」において一定の条件を満たした場合において適用できる方法です。

振当処理

外貨建金銭債権債務及び外貨建有価証券について為替予約等を行った場合には、「外貨建取引等会計処理基準」に記載の条件に基づき、「振当処理」により処理することができます。

ヘッジ会計の要件が充たされなくなった

ヘッジ会計の要件が充たされていた間のヘッジ手段に係る損益又は評価差額は、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで引き続き繰り延べます。

ただし、繰り延べられたヘッジ手段に係る損益又は評価差額について、ヘッジ対象に係る含み益が減少することによりヘッジ会計の終了時点で重要な損失が生じるおそれがあるときは、当該損失部分を見積り、当期の損失として処理しなければなりません。

ヘッジ会計の終了

ヘッジ会計は、ヘッジ対象が消滅したときに終了し、繰り延べられているヘッジ手段に係る損益又は評価差額は当期の損益として処理しなければなりません。

ヘッジ対象である予定取引が実行されないことが明らかになったときにおいても同様に処理します。

会計基準等

※2024年10月19日現在。リンク先の会計基準等は最新版でない場合があります。

金融商品に関する会計基準(企業会計基準第10号)
金融商品会計に関する実務指針(移管指針第9号)

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著者情報

須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。1人で「PDCA会計」を企画・開発・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

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