売買目的有価証券とは|仕訳と期末評価手続き(簿記2級)

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記事最終更新日:2023年11月20日
記事公開日:2017年8月19日

有価証券の保有目的の1つである「売買目的有価証券」は、文字通り、売買を目的として保有する有価証券であり、期末時の「決算整理仕訳」で時価評価を行う特徴があります。

本記事では、簿記2級の範囲における「売買目的有価証券」の概要と仕訳について、仕訳例を示して分かりやすく解説します。

※本記事の一部では、「補足」として、理解に役立つ簿記2級の出題範囲外の会計知識(会計学の考え方)を記載しています(上級者・実務家レベル)。

※有価証券全般に共通する基本的な仕訳(取得・端数利息・売却・配当金・利息)や保有目的による有価証券の種類(満期保有目的債券、その他有価証券など)、各有価証券の「表示科目」については、下記の記事で解説しています。

売買目的有価証券とは

売買目的有価証券」とは、時価の変動による利益を得ることを目的として保有する有価証券(株券・債券)をいいます。

つまり、短期的な売買の繰り返しによる売買益の獲得を目的として保有する有価証券をいいます。

会計処理の特徴

仕訳・勘定科目と財務諸表上の表示に分けて解説すると、次の通り。

仕訳・勘定科目

売買目的有価証券の増減は、「売買目的有価証券(資産に属する勘定科目)」で仕訳します。

また、売買目的有価証券の期末時点での「取得価額(帳簿価額)と時価との差額」は、「有価証券評価益(収益に属する勘定科目)」又は「有価証券評価損(収益に属する勘定科目)」として、損益計算書に掲載します。

財務諸表上の表示

仕訳上は「売買目的有価証券」で記帳しますが、貸借対照表上では短期間の売却が想定されることから、流動資産として「有価証券」の科目で表示します。

また、「有価証券評価損益」は当期の損益として、損益計算書に表示します。

(補足)売買目的有価証券を期末日に時価評価する理由

売買目的有価証券は、売買を繰り返して利益を得る目的で保有することから、「期末時点の時価」で貸借対照表上に掲載することが、投資家をはじめとする財務諸表の利用者にとって有用な情報になると考えられます。

売買目的有価証券の帳簿価額と時価の差額である「有価証券評価損益」を損益計算書に表示するのも、「売買目的有価証券を期末日現在に売却した場合には、どの位の売却損益が発生するのか?」という情報を財務諸表として利用者に開示することが、財務諸表の利用者にとって有用な情報になるからです。

以上の理由から、売買目的有価証券については、期末日に時価で評価します。

売買目的有価証券の仕訳

基本的な取引について、仕訳一覧を示した後に、「期末日の時価評価に関する仕訳」を解説します。

仕訳一覧

次の通り。

※仕訳の内容は、冒頭で紹介した関連記事で解説しています。

取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
取得売買目的有価証券×××現金預金など×××
取得(端数利息の支払)売買目的有価証券×××現金預金など×××
有価証券利息×××
売却 ※1現金預金など×××売買目的有価証券×××
有価証券利息 ※2×××
有価証券売却益 ※1×××
※1:売却益が発生した場合
※2:公社債の売却で端数利息がある場合
配当金の受け取り現金×××受取配当金×××
利息の受け取り現金×××有価証券利息×××

<仕訳例>
1.時価の変動による利益を得ることを目的として、A社株式を100で購入し、支払手数料5(付随費用)とともに来月支払う。
2.A社で配当決議が行われ、配当金領収証5が郵送で届いた。
3.A社株式(取得価額105)を100で売却した。来月入金予定である。

問題借方科目借方金額貸方科目貸方金額
1売買目的有価証券105未払金105
2現金5受取配当金5
3未収入金100売買目的有価証券105
有価証券売却損5

期末評価と仕訳(有価証券評価損益)

期末日(決算日)に、売買目的有価証券は時価で評価します。

取得原価と時価との差額については、「売買目的有価証券」の増減として仕訳し、相手勘定科目には「有価証券評価益」又は「有価証券評価損」を使用します。

<仕訳例>
1.時価の変動による利益を得ることを目的として保有する債券(帳簿価額100)の期末日の時価は110だった。決算整理仕訳を行う。
2.上記1で期末時価が95の場合。

問題借方科目借方金額貸方科目貸方金額
1売買目的有価証券10有価証券評価益10
2有価証券評価損5売買目的有価証券5

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