商業簿記入門その18~売買目的有価証券の手続と仕訳処理(2級)

更新日:2019年1月30日 公開日:2017年8月19日

売買目的有価証券の手続と仕訳処理

前回、「商業簿記入門その17~有価証券の保有目的と区分」では有価証券の保有目的と区分について解説しました。

今回は売買目的有価証券の手続と仕訳処理について説明します。

※簿記2級の論点になります。


売買目的有価証券

売買目的有価証券とは、時価の変動による利益を得ることを目的として保有する有価証券をいいます。

例えば、上場企業の有価証券は、株式市場が存在しており、日々時価が変動することから、売買目的有価証券の対象になる有価証券です。

※しかし、あくまでも保有目的により4つの区分に分類されるので、上場企業の有価証券であっても別の区分として分類する場合も、もちろんあります。

売買目的有価証券の手続

売買目的有価証券で学習しておく手続は、取得と売却、利息・配当金の受け取り、および決算時の評価手続です。

※資産の評価については「会計入門その9~固定資産の資産計上と減価償却」以降で固定資産を例として詳細を解説しています。ご興味ある方はご訪問ください。

※今回、説明がない手続の内容については「商業簿記入門その16~有価証券と仕訳処理(取得、売却、利息、配当金)」と同様の手続になります。併せてご参照ください。


売買目的有価証券の取得と仕訳処理

商業簿記入門その16~有価証券と仕訳処理(取得、売却、利息、配当金)」では、有価証券の取得は有価証券勘定を使用して仕訳すると述べました。

一方で、保有目的に応じて仕訳処理する場合には、売買目的有価証券の取得には売買目的有価証券勘定を使用します。

端数利息を支払う場合の仕訳処理

取得する有価証券が国債、社債、地方債などの債券である場合、債券の保有者は利息を受け取ることができます。

利息というものは時間の経過とともに発生しますが、利息計算の事務手続き上、どうしても四半期や月次といった単位での支払(取得者側からは受取)になってしまいます。

従って、債券の売却側からすると、時間の経過に応じて本来受け取るべき利息を一部受け取っていないというケースが発生します。

例えば、A社は甲社の社債を8月15日にB社に売却したとして、前回受け取った利息の計算期間が4月1日から6月30日だった場合、7月1日から8月15日までの分の利息を受け取っていない、ということになります。

契約により定められた利息の計算期間の途中までの利息を端数利息といいます。

このような例の場合には、債券(甲社の社債)の取得者(A社)は次回利息受取日(例えば9月30日の場合)には、7月1日から9月30日までの期間の利息を受け取ることになりますが、7月1日から8月15日までは、B社が甲社の社債を取得していたので、A社は利息を受け取りすぎている、ということになります。

そこで、A社は8月15日に甲社の社債を取得した時に、B社に対して端数利息を支払います。勘定科目は利息の受け取りと同じく有価証券利息勘定を使用します。

以上から、売買目的有価証券の取得時の仕訳処理をまとめると次の通りになります。

出来事ケース借方科目借方金額貸方科目貸方金額
取得一般的な仕訳売買目的有価証券×××現金預金など×××
端数利息を支払った場合売買目的有価証券×××現金預金など×××
有価証券利息×××

売買目的有価証券の売却と仕訳処理

売買目的有価証券が減少する取引であるため、売買目的有価証券勘定を貸方に記入します。

取得原価と売却額の差額は、「商業簿記入門その16~有価証券と仕訳処理(取得、売却、利息、配当金)」で解説した通り有価証券売却勘定益または有価証券売却損勘定を用いて仕訳処理します。

複数回に渡って取得した売買目的有価証券の単価計算(移動平均法)

複数回に渡って同一種類の有価証券を購入した場合には、移動平均法や総平均法などの方法によって、売却する有価証券の金額を計算します。

このページの最後に、出題可能性が高い移動平均法を使用した仕訳例を解説します。

出来事ケース借方科目借方金額貸方科目貸方金額
売却利益が発生現金預金など×××売買目的有価証券×××
有価証券売却益×××
損失が発生現金預金など×××売買目的有価証券×××
有価証券売却損×××

売買目的有価証券の配当金、利息の受け取りと仕訳処理

固有の特別な仕訳処理はありません。仕訳処理については、「商業簿記入門その16~有価証券と仕訳処理(取得、売却、利息、配当金)」をご参照ください。

出来事借方科目借方金額貸方科目貸方金額
配当金の受け取り現金×××受取配当金×××
利息の受け取り現金×××有価証券利息×××

決算時の評価手続と仕訳処理

決算時の評価とは、貸借対照表上の科目のうち、主に資産科目の表示額を決めるための手続をいいます。

具体的には、取得原価で計上されている有価証券を決算日の時価で評価します。

取得原価との差額は、売買目的有価証券の増減として仕訳し、相手勘定科目には有価証券評価益勘定(利益が発生した場合)または有価証券評価損勘定(損失が発生した場合)を使用します。

出来事ケース借方科目借方金額貸方科目貸方金額
決算日の評価利益が発生売買目的有価証券×××有価証券評価益×××
損失が発生有価証券評価損×××売買目的有価証券×××

仕訳例

  • 1.6月30日 A社は甲社の社債券1枚(額面200万円)を100円当たり90円で購入した(当座預金より支払)。購入時に買取手数料が5万円発生した。
  • ※保有目的は時価の変動による利益を得ることである。
  • 2.8月15日 A社はNo1と同じ種類である甲社の社債券(額面200万円)2枚を100円当たり94円で購入した(月末に支払)。購入時に買取手数料が9万円発生した。
  • ※この社債は利率が5%、利払日が3月、6月、9月、12月の各末日となっており、利息計算期間は各利払日の翌日から利払日までである。
  • ※端数利息は1年を365日として計算し、1円未満の端数は切り捨てること。
  • 3.8月18日 A社は甲社の社債1枚(額面200万円)を100円当たり97.5円で売却した(売却代金に端数利息を含む)。売却代金は来月末に受け取る。
  • ※購入単価は移動平均法を用いて計算すること。
  • 4.9月30日 甲社の社債の利払日が到来した。
  • 5.9月30日 A社は決算日を迎えた。決算日の甲社の社債の時価は100円当たり93円である。
No借方科目借方金額貸方科目貸方金額
1売買目的有価証券1,850,000当座預金1,850,000
2売買目的有価証券3,850,000未払金3,875,205
有価証券利息25,205
3未収入金1,950,000売買目的有価証券1,900,000
有価証券売却益50,000
4現金50,410有価証券利息50,410
5有価証券評価損80,000売買目的有価証券80,000

【解説】
No1 取得原価 = (額面2,000,000円 ÷ 100円 × 90円) × 社債1枚 + 買取手数料50,000円 = 1,850,000円
※6月30日が利払日であるため端数利息は発生しません。

No2 取得原価 = (額面2,000,000円 ÷ 100円 × 94円) × 社債2枚 + 買取手数料90,000円 = 3,850,000円
端数利息 = 額面200万円 × 利率5% × 経過日数46日(7月1日から8月15日まで) ÷ 365日 × 社債2枚 = 25,205.479...→25,205円(切り捨て)

※社債の利息は、額面金額に利率を掛けて計算します。
経過日数46日は7月1日~31日で31日、8月1日~15日までで15日。合計で46日になります。

No3 売却代金 額面2,000,000円 ÷ 100円 × 97.5円 × 社債1枚 = 1,950,000円
売却益 1,950,000円 - 1,900,000(後述) = 50,000円

No4 利息の計算 額面2,000,000円 × 利率5% × 経過日数日92日(7月1日から9月30日まで) ÷ 365日 × 社債2枚 = 50,410.958...→50,410円(切り捨て)
※期限到来済みの利札は現金として扱う。「商業簿記入門その9~現金(為替証書、配当金領収証、公社債利札の仕訳処理)」を参照。

No5 決算日の時価による評価額 額面2,000,000 ÷ 100円 × 93円 × 社債2枚 = 3,720,000円 < 取得原価 1,900,000円 × 社債2枚 = 3,800,000円(評価損の発生)
評価損 = 3,800,000円 - 3,720,000円 = 80,000円

※No3 移動平均法による単価計算について

移動平均法による単価計算とは、「No3.の時点で、これまでに取得した甲社の社債の平均単価を求める」ということです。

1株当たりの購入単価 = (No1の取得原価 1,850,000円 + N2の取得原価 3,840,000円)÷(No1の取得枚数 1枚 + No2の取得枚数 2枚)= 1,900,000円

まとめ

今回は売買目的有価証券の手続と仕訳処理を解説しました。仕訳例はあえて少し難し目の問題にしました。社債を例にしましたが、社債や利息の設定、単価計算方法など、問題文をよく読まないと回答にはたどり着けません。また、利札の処理(現金の範囲)など、これまでの回を全て理解しておく必要があります。

株式の仕訳例は掲載しませんでしたので、別途ご学習ください。

有価証券は出題可能性が高いので、アウトプットを多くこなして問題に慣れましょう(過去問も解いておきましょう)。


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