日商簿記2級 満期保有目的債券の取引と仕訳|償却原価法

更新日:2020年12月27日
公開日:2017年8月20日

前回は売買目的有価証券の各取引(取得、売却、利息・配当金支払、決算時評価など)の仕訳について解説しました。

今回は満期保有目的債券の取引と仕訳について説明します。

満期保有目的債券とは

満期保有目的債券とは、満期まで保有する意図を持って取得した債券(国債、社債、地方債など)をいいます。

株式と異なり、知らない方も多いと思いますので、まずはこの債券について簡単に説明します。

債券とは

債券(さいけん)とは、金銭債務(借入)による資金調達を目的として発行される有価証券をいい、券面には金銭消費貸借契約と類似した内容が表示されます。

発行体が国である場合には国債、会社であれば社債など、都道府県や市町村区といった地方公共団体であれば地方債といいます。

債券のうち、社債のサンプルを下に掲載します。

この社債からは、「発行体:名古屋資源株式会社 種類:第1回無担保社債券 額面金額:100万円 利率:年5.0% 利払日:毎年12月25日 償還期限:平成18年12月25日」といったことなどが分かります。

金銭消費貸借契約(要するに借入)で締結する内容と類似した事項が券面に表示されている、ということです。

債券を取得した場合には、①利息の受け取りや償還時の購入額との差益といったインカムゲインや、②取引市場で売買することで売却益を得るといったキャピタルゲインを期待することができます。

上述のうち、「償還時の購入額との差益」ですが、額面金額は償還(発行体が債券の保有者にお金を払い戻すこと)時に払い戻す金額を表しています。例えば、額面100万円の社債を98万円で購入した場合、償還期限まで保有しているだけで、償還時には100万円を受け取ることができるため、100万円 - 98万円 = 2万円 が利益(インカムゲイン)になる、ということです。

債券の発行体が債券を発行する時に、額面金額よりも低い金額で発行することがあります。このことを「割引発行」といいます。それに対して、高い金額で発行することを「打歩(うちぶ)発行」といいます。

満期保有目的債券の取引

満期保有目的債券で学習しておく取引は、取得と利息の受け取り、および決算日の評価手続です。

※有価証券の基本的な取引と仕訳、保有目的と区分、資産の評価については下記の記事を参照。

満期保有目的債券の取得と仕訳

満期保有目的債券の取引には、満期保有目的債券勘定(資産に属する勘定科目)を使用します。

出来事ケース借方科目借方金額貸方科目貸方金額
取得一般的な仕訳満期保有目的債券×××現金預金など×××
端数利息を支払った場合満期保有目的債券×××現金預金など×××
有価証券利息×××

※端数利息を支払う場合の仕訳は下記の記事を参照。

満期保有目的債券の利息の受け取りと仕訳

利息の受け取りは有価証券利息勘定で仕訳します。

出来事借方科目借方金額貸方科目貸方金額
利息の受け取り現金×××有価証券利息×××

※ここでいう「受け取り」とは、債券の利札(クーポン)の利息支払い期限が到来した日をいいます。詳細は下記の記事を参照。

決算時の評価手続と仕訳

「決算時の評価」とは、主に資産科目について、貸借対照表に表示する金額を決めるための手続をいいます。

満期保有目的債券は原則としては取得原価で評価します。従って、特に決算日に仕訳処理は必要ありません。

償却原価法(金利の調整)と仕訳

しかし、債券を額面より高い金額または低い金額で取得した場合において、額面金額との差額が「金利の調整と認められる場合」には、その差額を償還期限まで、決算日毎に毎期一定の方法で計算された金額を、満期保有目的債券の帳簿残高に加減します。

この「毎期一定の方法」のことを償却原価法といいます。簡単に言えば、金利の調整に該当する金額を計算する方法です。具体的な計算方法は後述の仕訳例で解説します。

「金利の調整」であるため、償却原価法で計算した金額は、有価証券利息で仕訳し、満期保有目的債券勘定に加減します。

・額面より高い金額で取得
→満期日までに毎期少しずつ金利調整に該当する金額を帳簿残高から差し引く(減算する)。

・額面より低い金額で取得
→満期日までに毎期少しずつ金利調整に該当する金額を帳簿残高に加える(加算する)。

※加算するのか減算するのか分からなくなってしまった場合には、「額面金額に近づけるにはどうすればよいか?」と覚えておきましょう。

出来事ケース借方科目借方金額貸方科目貸方金額
決算日
の評価
原則仕訳なし
取得価額と額面金額の差額が
金利の調整と認められる場合
額面 <
取得原価
満期保有目的債券×××有価証券利息×××
額面 >
取得原価
有価証券利息×××満期保有目的債券×××

仕訳例

  • 以下は、A社の令和2年度(決算日は9月30日)の取引である。
  • 1.7月1日 A社は甲社の社債券1枚(額面100万円)を100円当たり94円で購入した(当座預金より支払)。
  • ※この社債は利率が8%、利払日が3月、6月、9月、12月の各末日となっており、利息計算期間は各利払日の翌日から利払日までである。償還期限(満期日)は令和4年12月31日となっている。
  • ※利息は1年を365日として計算し、1円未満の端数は四捨五入すること。
  • ※A社は、甲社の社債を満期まで保有する意図をもって購入している。
  • ※額面金額と購入額の差額は金利の調整と認められる。
  • 2.9月30日 甲社の社債の利払日が到来した。
  • 3.9月30日 A社の決算日を迎えた。
No借方科目借方金額貸方科目貸方金額
1満期保有目的債券940,000当座預金940,000
2現金20,164有価証券利息20,164
3満期保有目的債券6,000有価証券利息6,000

【解説】
No1 取得原価 = (額面1,000,000円 ÷ 100円 × 94円) × 社債1枚 = 940,000円
※6月30日が利払日であるため端数利息は発生しません。

「※A社は、甲社の社債を満期まで保有する意図をもって購入している。」とあるので、満期保有目的債券勘定で仕訳します。

「※額面金額と購入額の差額は金利の調整と認められる。」→このキーワードが出てきたら、「決算日に償却原価法で評価する」とすぐに頭に思い浮かぶように反復学習しましょう。

No2 利息の計算 額面1,000,000円 × 利率8% × 経過日数日92日(7月1日から9月30日まで) ÷ 365日 × 社債1枚 = 20,164.383...→20,164円(四捨五入)
※期限到来済みの利札は現金として扱う。

No3 決算日の償却原価法による評価額
金利調整部分の計算(償却原価法) (額面1,000,000円 × 社債券1枚 - 取得原価940,000円) × 経過月数3か月(令和2年7月~9月) ÷ 償還期限までの月数30か月(令和2年7月~令和4年12月) = 6,000円

※額面より低い金額で取得→額面に近づけるには、金利調整部分は帳簿残高に加算する。→満期保有目的債券の増加(借方に記入)。従って、有価証券利息は貸方に記入する。

※仕訳例3.償却原価法による金利調整部分の計算について

償却原価法では、日商簿記2級の範囲では、「額面と取得原価の差額は月数で各期に按分する」と覚えておきましょう。

今回の仕訳例では次の通り。

  • ・額面と取得原価の差額は6万円
  • ・取得した月(令和2年7月)から償還期限(満期日 令和4年12月)までの月数は、令和2年 6ヶ月 + 令和3年 12ヶ月 + 令和4年 12ヶ月 = 30ヶ月
  • ・取得した月から経過した月数は、令和2年7月から令和2年9月までの3ヶ月
  • ・金利調整部分 = 6万円 × 3ヶ月 / 30ヶ月 = 6千円

まとめ

今回は満期保有目的債券の取引と仕訳について解説しました。有価証券は覚えることが多いので、理解しながら覚えていきましょう。

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