受取配当金とは|仕訳と経理実務を解説(簿記2級・上級)
記事最終更新日:2024年1月1日
記事公開日:2021年10月8日
「受取配当金」は、簿記2級で基本的な仕訳を学習しますが、経理実務や会計監査で初めて学べる仕訳も存在します(筆者も大手企業の会計監査を経験して初めて知りました)。
本記事では、「受取配当金」の仕訳について、簿記2級の出題範囲だけでなく、経理実務上のポイントにも言及して解説します。
※本記事のうち、「補足」の部分で「上級者・実務家」対象の論点を解説しています。簿記2級の範囲外ですが、理解に役立つ会計知識(会計学の考え方を含む)を記載しています。
受取配当金とは|仕訳と経理実務を解説(簿記2級・上級)
目次
仕訳例
<仕訳例>
1.A社(保有株式数100株)の定時株主総会で1株当たり1を配当する案が決議された。
2.上記の1.の配当金領収証(源泉所得税20)が郵送で届いた。
No | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
1 | 未収入金 | 100 | 受取配当金 | 100 |
2 | 現金 | 80 | 未収入金 | 100 |
仮払法人税等 | 20 | | |
受取配当金とは
「受取配当金」とは、株式の所有に伴い権利を得た配当金の受け取り収入をいいます。
配当は年に一度の定時総会で、決算報告等とともに決議される場合が一般的なケースです。
「売買目的有価証券」や「その他有価証券」などとして株式を所有している場合に、株主総会で配当案が決議される場合があります。
源泉所得税
会社は配当金額から「源泉所得税」を控除した残額を受け取ります。
「源泉所得税」は、株式を発行した会社が預かり、株主に代わって国に納税します。この点、従業員給料から控除される源泉所得税と同様です。
所得税額控除
「受取配当金」から控除した源泉所得税は、法人税額から控除できます。これを「所得税額控除」といい、「仮払法人税等」で処理します。
つまり、会社は所得税を納税しませんので、代わりに法人税の申告書にて法人税法に従って所定の手続きを行えば、「受取配当金」から控除された「源泉所得税」の分だけ、法人税等の納付が少なくなります。
配当金領収証
配当決議後、株式を発行した会社は、株主宛に配当金額を記載した「配当金領収証」を郵送します。
「配当金領収証」は「通貨代用証券」として現金の範囲に含まれるため、「配当金領収証」を受け取った場合には、会計上、「現金」として処理します。
(補足)管理上の留意点
「配当金領収証」は、管理上も現金と同じく金庫に保管し、施錠管理します。
会計監査においても「現金実査」の対象になります。
(補足)配当の受け取り方法
従来は、「配当金領収証」による配当の受け取りのみでしたが、現在は、「株式数比例配分方式」「登録配当金受領口座方式」「個別銘柄指定方式」といった方法によって、「配当金領収証」という書面の受け渡しなく受け取ることができます。
例えば、「株式数比例配分方式」によれば、保有する全ての株式の配当金を証券会社の口座で受け取ることができます。
受取配当金の仕訳
「受取配当金(収益に属する勘定科目)」で仕訳します。
控除された「源泉所得税」は「仮払法人税等」で仕訳し、残額を現金として処理します。
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
配当金領収証の受け取り | 現金 | ××× | 受取配当金 | ××× |
仮払法人税等 | ××× | | |
(補足)経理実務上の会計処理(株主総会決議と未収入金の計上)
「配当金」は、株主総会の決議で配当が決定された時点で、株主の権利として「配当を受け取る権利」という株主の権利が発生することから、この時点で未収入金を計上します。
会計伝票には、「証憑書類」として株主総会決議の決定通知の写しを添付することが「正規の簿記の原則」の「検証性」を具備した帳簿として適当です。
取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
配当決議 | 未収入金 | ××× | 受取配当金 | ××× |
配当金の受け取り ※ | 現金 | ××× | 未収入金 | ××× |
仮払法人税等 | ××× | | |
※「配当金領収証」の他、「株式数比例配分方式」などの方法による受け取り |
参考文献
・株式配当金受取方法(大和証券 WEB情報)
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