会計公準とは|企業実体・継続企業・貨幣的測定

記事最終更新日:2022年7月20日
記事公開日:2022年7月10日
会計学の専門書やテキストの最初に学ぶ用語として「会計公準」がありますが、理解するのが難しい概念です。
本記事では3つの会計公準(企業実体、継続企業、貨幣的測定)を具体的に解説します。
会計公準とは
会計公準とは、時代・場所・状況に関係なく、会計を成立させるための基礎的な前提条件をいいます。
意義
古い会計の歴史の中で、会計基準や会計手続は、時代の流れに合わせて頻繁に変更されてきました(相対的真実性)。
これに対して、会計公準とは、歴史や制度に関わらず、会計に共通する根底にある概念をいいます。
<会計の構造(ブレイクダウン)>
- 会計公準→会計基準→会計手続
会計公準の内容については会計専門書によって諸説存在しますが、次の3つは共通して解説される会計公準です。
企業実体の公準
企業実体の公準とは、会計の記録及び報告は、経済主体の行った取引事象に限定されるという会計上の前提をいい、「会計単位の公準」ともいいます。
1602年の「オランダ東インド会社」を起源とする株式会社では、「所有と経営の分離」によって、株式会社が株主に対して会計を報告します。この意味で「経済主体 = 会社(法人格)」であり、会計は会社単位で報告するものである、ということになります。
しかし、現在では、より広い範囲での「企業集団」を会計単位とした連結会計が報告単位のメインになっており、企業実体とは「法人格」だけでなく「経済的実体」も含む概念と捉えることができます。
継続企業の公準
継続企業(ゴーイングコンサーン Going Cocern)の公準とは、会計の報告対象である企業は清算や解散を予定するものではなく、半永久的に継続して活動する、という会計上の前提をいい、「会計期間の公準」ともいいます。
従って、企業は報告単位を「会計期間」で区切り、経営成績及び財政状態を報告します。
しかし、「半永久的に継続して活動」とはあくまでも前提であって、実際の経済社会では業績悪化などによって会社は倒産し活動を終了します。
様々な複雑な取引が発達した現代にあってはビジネスリスクが高まったため、継続性に関する情報がさらに重要になったことから、継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる場合には、会社は財務諸表上において「継続企業の前提」に関する注記(GC注記)を行う必要があります。
貨幣的測定の公準
貨幣的測定の公準とは、企業の経済活動・経済事象の記録は、貨幣額で測定できる範囲に限定される、という会計上の前提をいいます。
全ての企業活動を会計に記録できるわけではありません。
例えば、経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)のうち、特にヒトや情報は貨幣的に測定が難しいことから資産計上できる範囲は限られると考察します。どんなに優れた経営者やノウハウ・ブランド・情報であっても、報酬額や他企業との取引によって成立した契約によって客観的に信頼できる金額で、人件費やのれんとして計上されるのであり、会計上、記録できない経営資源も存在します。
日本の会計基準として古くから存在し現在も実務においてお世話になる会計基準。「真実性の原則」「実現主義」「取得原価主義」など、会計学を学ぶならば欠かせません。試験勉強でも各会計基準を学ぶ前の「土台」としての役割を担う論点のため、専門スクールのテキストでも最初に解説されています。