取得関連費用とは|概要と会計処理(個別、連結)を解説

オフィス街

記事公開日:2022年6月17日

連結上の会計処理のうち、WEB解説が少ない用語として「取得関連費用」があります。

本記事では、取得関連費用の概要、並びに個別上及び連結上の会計処理について、付随費用との関係も併せて解説します。

取得関連費用とは|概要と個別、連結上の会計処理を解説

目次

取得関連費用とは

取得関連費用とは、ある企業又はある企業を構成する事業を取得する際に伴って発生した費用をいいます。

「取得」とは、支配を意味し、企業結合会計や、連結会計上の用語になります。

取引内容

外部のアドバイザー等に支払った特定の報酬や手数料等が取得関連費用に該当します。

付随費用

このような取得関連費用は、個別会計上では「付随費用」に含めて処理します。

例えば、子会社株式の取得に含まれる取得関連費用は、個別会計上では、取得関連費用ではなく付随費用として説明することが一般的です。

個別会計上の処理

原則、付随費用として、子会社株式、関連株式、その他有価証券といった金融資産に含めて処理します(金融商品に関する会計基準、金融商品会計に関する実務指針)。

連結会計上の処理

取得関連費用は、発生した事業年度の費用として処理します。

以下、連結会計上の取引別に留意点を記載します。

1.支配獲得(資本連結)

連結財務諸表において、取得関連費用は費用計上しますが、個別会計上では、付随費用として子会社株式の取得原価に含めて処理します。

従って、投資と資本の相殺(資本連結)では、子会社株式に含まれる付随費用(取得関連費用)を費用として計上するよう、連結修正仕訳を作成します。

2.段階取得

特に段階取得において、支配獲得前に保有していた株式(その他有価証券、関連会社株式)を支配獲得時の時価で評価することによって、「段階取得に係る差損益」が発生します。

この際、取得関連費用は連結財務諸表上において、段階取得に係る差損益に含めて処理します。

3.子会社株式の売却

個別財務諸表では、付随費用を売却簿価に含めて子会社売却損益を計算しますが、連結財務諸表では、取得関連費用を売却持分に含めません。

以上から、連結財務諸表上では、付随費用のうち売却した部分に対応する金額について、子会社売却損益の修正として取り扱い、連結修正仕訳として処理することになります。

4.連結範囲からの除外等

子会社株式の売却の結果、子会社が連結の範囲から除外され、かつ持分法適用会社にも該当しない場合、子会社株式の取得原価に含まれる付随費用(取得関連費用)のうち売却していない部分に対応する金額については、「連結除外に伴う利益剰余金減少高(又は増加高)」等、その内容を示す適切な名称をもって計上します。

次に、子会社株式から持分法適用会社になる場合、一般的に持分法の下では付随費用は個別財務諸表上の処理と同様、投資原価に含めて処理します。

しかし、連結財務諸表上の処理にて、支配獲得時に取得関連費用として費用計上していることから、連結会計基準(資本連結手続に関する実務指針)上、連結範囲の除外時においては関連会社株式の投資原価には付随費用を含めずに処理することとしています。

表示

取得関連費用の連結損益計算書上における表示区分について、会計基準上、明確な定めはありません。

しかし、「連結財務諸表等におけるキャッシュフロー計算書の作成に関する実務指針」の設例において、取得関連費用を営業活動によるキャッシュフローに含めて処理していることから、取得関連費用を「販売費及び一般管理費」として表示します。

この表示は、取得関連費用は支配獲得のために要した「投資費用」であること、及びのれん償却額を販売費および一般管理費として処理する点とも整合しています。

ただし、追加取得に係る付随費用は、支配獲得後の経費であり支配関係は継続していること、及び、これに伴い、追加取得に係る資本消去差額を、のれんではなく資本剰余金として処理することから、財務費用として営業外費用に計上する、と考えられます。

また、連結範囲の除外(子会社でも持分法適用会社でもなくなった場合)において、取得関連費用のうち、売却に対応しない部分については、連結株主資本等変動計算書上、利益剰余金の「当期変動額」の内訳として、「連結除外に伴う利益剰余金減少高(又は増加高)」等、変動事由の名称を付して金額を表示します。

会計基準・参考文献

※2022年6月17日現在。リンク先の会計基準等は最新版でない場合があります。

企業結合に関する会計基準(企業会計基準第21号)
連結財務諸表に関する会計基準(企業会計基準第22号)
連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針(会計制度委員会報告第7号)
連結財務諸表等におけるキャッシュフロー計算書の作成に関する実務指針(会計制度委員会報告第8号)(注)
株主資本等変動計算書に関する会計基準(企業会計基準第6号)
株主資本等変動計算書に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第9号)
金融商品に関する会計基準(企業会計基準第10号)
金融商品会計に関する実務指針(会計制度委員会報告第14号)

(注)リンククリックすると、本文と新旧対照表ファイルが含まれたzipファイルをダウンロードします。

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著者情報

須藤恵亮(すとうけいすけ)

フリーランス公認会計士。1人で「PDCA会計」を企画・開発・運営。

中央青山監査法人で会計監査、事業会社2社でプレイングマネジャーとして管理業務全般及びIPO準備業務に携わる。

現在は派遣・契約社員等として働きながら、副業的に「PDCA会計」の執筆やアプリ開発等コツコツ活動しています。

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